買収で市場縮小の可能性
機能てんこ盛りの「EMM製品」は便利? それとも不要?(1/2 ページ)
ここ数年、EMMベンダーの統合再編が相次いだ結果、EMMツールは単なるデバイス管理を超えた進化を見せ、多彩な機能を実装するようになった。業界では今後、企業の再編がさらに進みそうだ。
ベンダーの買収と合併が相次いだことで「エンタープライズモビリティ管理」(EMM)市場の情勢は変わりつつある。企業がEMMツールに期待する機能も同様に、時代の流れとともに変化してきた。
EMMの役割は、企業が従来の「モバイルデバイス管理」(MDM)に求めていたものとは大きく異なる。初期にMDMツールを導入した企業が最も重視していた機能は、資産管理とデバイスの電源をオフにするスイッチだった。モバイルデバイスの急激な普及と、それに伴う私用端末の業務利用(BYOD)の横行への対策として、企業はMDMツールを組織内に迅速に展開した。
一時期はIT担当者向けにMDMツールの選択肢が多数存在していたが、EMM市場が成熟するにつれ、単純なMDMツールの市場は少しずつ衰退していった。EMMはMDMから派生したものだ。競争が激しく、時には特定企業が席巻するIT製品の市場で、MDMベンダーをはじめとする各ベンダーが、付加価値で他社との差異化を図る方法を模索した結果、EMMが生まれた。
BlackBerry、Citrix Systems、IBM、VMwareなどのEMMベンダーがIT担当者に対して、自社製品のアピールを繰り返す状況が続くだろう。ただしEMMツールのセールストークのポイントは、管理機能のみを前面に押し出すのではなく、機能性の向上や従業員の生産性向上の訴求へと変化する。現在の大規模組織では、収益向上のために機能性や統合度の高さへのニーズが高まっているからだ。
この目的を達成する上で、目立つ傾向が幾つかみられるので、以下に紹介する。
EMMツールとそれを発売するベンダーの合併吸収が継続
VMwareがAirWatchを買収し、IBMが「MaaS360」を所有していたFiberlink Communicationsを買収するなど、ここ数年間で、BlackBerryやMobileIronを除く大部分のEMM専業ベンダーが買収された。McAfeeやSymantecなどの有名セキュリティベンダーも専業ベンダーの買収に踏み切ったものの、EMMに対してあまり力を入れなかったり、市場での勢いに乏しかったりして主要プレイヤーになれなかった。
他方、Sybaseを買収したSAPのように、ビッグデータやアナリティクスなどに向けて、収益性の高いエンタープライズスイート製品へ改めて注力したケースもある。ITインフラ分野の最大手企業Microsoftは、既存のクライアントPC/サーバ管理ツールに、基本的なEMM機能を実装した。さらにはGoogleなどクラウド分野の主要ベンダーまで、自社製品の一環としてモバイルデバイス向けの基本的な管理機能を提供するようになっている。
EMMツールを購入するのではなく、既に導入済みのインフラ製品にEMM機能が組み込まれることを期待するユーザー企業が少なくない。こうした状況では、EMM専業ベンダーが市場で独立企業としての立場を保つのは、ますます困難になる。一部のニッチプレイヤーが残る可能性はあるものの、今後も全体としてEMM市場の縮小傾向が続くだろう。
セキュリティへの注力
MDMツールも、EMMツールも、常にセキュリティを重視してきた。現在は社内データの流出からの保護に重点を置く。もはやデバイス自体の保護だけでは不十分だからだ。現在の主な焦点は、デバイスにデータを転送するかどうかの制御と、アプリケーションレベルでのネットワーク接続やアプリケーション内操作の制御へ移っている。
アプリケーションのラッピング、ファイルの同期や共有の際の保護、Webブラウザやメールの受信トレイ保護などの機能は、今やEMMツールの標準機能となった。もちろんGoogleの「Android」やAppleの「iOS」といったモバイルOSも、こうしたニーズに応えて機能を強化してきた。ごく限定された場面で、EMMツールへのニーズをなくす仕掛けを実装することもあった。例えば名称としては現存しないが、Androidの企業向けプログラム「Android for Work」がこれに該当する。
それでもセキュリティは、企業がEMMツールを購入する際に決め手となる理由のトップという位置付けは不動のままだろう。
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