事務所や病院の環境を改善するIoT
IoTで職場環境をスマート化 小さな実験から始める5ステップ
従業員が求めていることを1日中自動で予測して、それに応える職場環境を想像してみてほしい。仕事の生産性と効率はどれほど上がるだろうか。
モノのインターネット(IoT)に関する話題の中心は、コンシューマーアプリケーションか産業用アプリケーションのどちらかであることが少なくない。前者の例には、ウェアラブルデバイス、自動運転車、ホームオートメーションなどがある。また、後者の例には、品質管理、またはサプライチェーンの効率や持続性を高める産業用アプリケーションなどがある。しかし、インテリジェンスとオートメーションの機会は、オフィスにも同じくらい豊富に存在している。職場の柔軟性と流動性が高まると、IoTテクノロジーによって、人々は企業全体の効率を高めてコストの節約を促進する貴重なデータを得ながら、利用可能なリソースを最大限に活用できるようになる。
仕事の生産性を高めるために、IoTが自動化できることはある。具体的には、人とスペースの関わり、同じ部屋にある複数台のデバイスとスペースまたは人の関わり、Microsoftの「Microsoft Exchange Server」などのバックエンドサービスや「Skype for Business」などのテレビ会議システムとスペースの関わりを自動化することが可能だ。例えば、オフィスワーカーは、使用可能なデスクやプライバシーが確保されたブースから緊急のディスカッションに使う会議室に至るまで、各自のニーズに合ったスペースを簡単に見つけることができる。また、会議室では、照明、画面、テレビ会議システムの全てが起動され、最初の出席者が到着する前から準備万端に整った状態で用意され、すぐに会議を始められる。
企業は、全てのスペースについて利用状況分析を活用できるため、部屋、備品、その他のリソースの使用頻度を把握でき、最適な設備投資と環境設定を導くことが可能になる。実際に利用者がいるかどうかによって、照明を暗くしたり、デバイスをスリープ状態にしたり、空調設備を調整したりできるため、無駄と運用コストが削減される。
このような幅広い活用方法は、ほんの始まりにすぎない。他の例を見てみよう。
- 病院では、ビーコンや追跡装置を使ってモバイル端末の場所を常に特定でき、貴重な時間を節約してロスをなくすことができる
- 医療用ワークステーションは、医師が検査室に入った瞬間に必要な臨床用アプリケーションと患者のデータを自動的に読み込む
- インジケーターライトは、ユーザー自身の「Twitter」のつぶやき(ツイート)にあるポジティブ、平常、ネガティブの感情にリアルタイムで反応し、緊急のツイートまたは慎重な扱いを要するツイートを自動的にソーシャルメディアチームの「Slack」チャンネルに再投稿する
- 教室では、照明やAV機器が、教室を使用する各講師のニーズと好みに合わせて調整される
このようなスマートスペースに潜在的な価値があるのは間違いない。しかし、職場環境によってIoT固有の課題が生じる。オフィスは、一般的な家庭に見られる小規模LANや限られたデバイス、または製造工場や倉庫のように中央で制御されている環境とは異なる。オフィスには、極めて大規模なLANやWAN、セキュリティが確保された多様なファイアウォール、IT部門やビジネス部門がセットアップした各種デバイス、従業員が含まれる。それから、IoTの通信プロトコルの規格には、策定段階のものが少なくない。
計り知れない可能性と職場でのIoTに付随する複雑さを考えた場合、進むべき最良の道はどのようなものなのだろうか。以下に、スマートスペースの可能性の実現に向けて取り組むべき5つのステップから成るアプローチを紹介しよう。
ステップ1:対応が必要なものを特定する
まず、現在の職場環境を調査してほしい。従業員やチームは、1日の中でどのような物理的なリソースを使っているのか。例えば、デバイス、照明、電話、プリンタ、備品、部屋、デスクなどを使用しているだろう。オフィスにいる人を観察して、電源のオン/オフを切り替えたり、設定したりするなどの操作しているものをメモしよう。
ステップ2:実現したいことを把握する
会社でスマートスペースオートメーションの導入による効果が期待できるユースケースを特定してほしい。上述の例を使ってインスピレーションを引き出すことができる。バックグラウンドに移動して、シームレスかつ直感的なワークエクスペリエンスを高められるタスクとプロセスは何だろうか。ささいな不満から変革をもたらす可能性のある最適化まで、解決したい問題は何なのか。ブレインストーミングには制限を設けず、チャンスを見つけ出すことに集中することが重要だ。
ステップ3:プラットフォームとプロトコルについて考える
IoTのオートメーションと通信の規格は、策定中であるか、存在していないのが実情だ。自社のテクノロジー要件を特定するために、まずプロジェクトに適したプロトコルを検討されたい。多くの選択肢があり、それぞれに独自の強みや適性がある。一般的に最も有用なプロトコルは、HTTPやHTTPS、WebSocket(RESTfulアプローチを使用)、MQTT、MQTT-SN、CoAP、XMPPだ。詳細については下記(リンク先は英文記事)を確認してほしい。
その後、採用を決めたプロトコルに基づいて、IoTオートメーションと通信プラットフォームの選択に進むことになる。ここで、適切なプラットフォームを選択する必要がある。プラットフォームは、現在使用を予定しているプロトコルだけでなく、今後有用性が証明されるかもしれない任意のプロトコルも追加でサポートできなければならない。
ステップ4:価値の高い概念実証を導入する
1つの部屋、または1つの処理など、小規模に始めてほしい。例えば、ワンタッチで照明、テレビ会議、AV機器を起動する“簡単ボタン”を会議室に取り付けるといった具合だ。経験と洞察を得るにつれて、オートメーションを追加することはできるが、現段階での目標は、オフィスにIoTを導入した場合にどのようになるかを認識することだ。明確で定量化できる価値のある概念実証プロジェクトを選ぶと、次の段階に生きてくる。
ステップ5:分析と振り返り
最後のステップは、ビジネス価値の観点からの分析だ。プロジェクトのコストと取り組みは正当なものになったか。時間の節約、生産性の向上、収益の見込みという観点での影響はどうだろうか。ある病院ではスマートスペースの概念実証において1人の患者の診察ごとに2分節約できることが分かった。その結果、各医師が1カ月に診ることができる患者の数は20~40人増え、病院の収益は年間で最大100万ドル上昇する結果となった。これは、経営陣の関心を引き、その後スマートスペース化を進めていくための援助を勝ち得る数値だろう。
スマートスペースは比較的新しい概念ではあるものの、あらゆる業種の企業では多種多様ですばらしいユースケースが見られ、刺激的なプロジェクトが既に確認されている。あなたのオフィスではスマートスペースがどのようなものになるだろうか。そして、あなたの会社にどのような変化をもたらすのだろうか。ぜひ、試してみてほしい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Microsoft 365のセキュリティ運用」に関するアンケート
-
4
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
5
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
6
「Salesforceのテスト自動化ツール」に関するアンケート
-
7
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
8
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
9
AIで人を減らした企業がもう心変わり 「AIブーメラン現象」の実態
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー