プライバシーとのバランスも必要だが……
小売業界にIoTがあれば、何が分かるようになる?
物理的な店舗におけるモノのインターネット(IoT)の活用に注目が集まっており、ネットワークにつながる商品も増えつつある。小売業界のIoT活用はどのような方向性に進むのだろうか。
探そうと思えば解決したい問題はいくらでもある。だが、モノのインターネット(IoT)の用途となると、製造や物流、倉庫管理といった分野ではかなりの数の活用法が既に出尽くしている。アセット追跡や予知保全、製造工程の改善から新しいビジネスモデルまで、これらの分野ではIoTの導入が既に成果を上げている。これに対し、消費者サイドや小売業のIoT活用はどうなっていくのだろうか。
小売業はIoTの進化に出遅れた感があるが、いつまでも傍観している手はない。長期的に見れば、IoT技術は小売企業とサプライチェーンに大きな利益をもたらすはずだ。小売業の店内と商品にどのようなIoT活用法があるか検討してみよう。
店内
物理的な店舗でもIoTの活用に注目が集まりつつあり、アパレル企業のTory BurchやBurberryも導入を試し始めている。
ヒートマップ
実店舗にとって特に重要なのは立地だが、店内においても配置は大きく影響する。商品やディスプレイの陳列場所や空間の配置は売り上げに重要な影響を及ぼす。そこで客やスタッフの動線を知ることが必要だ。その情報をセンサーやRFIDで収集できないだろうか。スタッフと客のモバイル端末と店内のコネクテッドグリッドを使うのはどうだろうか。
ショッピングカートのような試着室
客が購入に至らなかった理由は何か。実店舗でもオンラインショップでも、この問題には長年取り組んでいる。ただ、ショッピングカートから情報を収集して分析する点ではオンラインショップの方が進んでいる。実店舗でも同様の知見が得られたら役立つのではないだろうか。コネクテッド商品とコネクテッド試着室を使えば、必要な情報が得られるだろう。
顧客体験
最近のデータによると、米国の消費者においては商品そのものより体験に費やす支出が増えているという。実店舗でもIoTの活用によってよりよい体験を提供することが可能だろう。デジタル接続を使って客と店内インフラをつなげば、店内をシームレスに案内したり、スマート陳列棚の展示を客ごとにカスタマイズしたりすることも可能だろう。IoTとコネクテッド機器でゲーム化を加えることもできそうだ。
商品
商品にもIoTの導入が広がり始めている。ネットワークにつながる商品が増えれば、小売業に新しい商機が生まれる。
商品の可視化
店舗や倉庫の在庫管理が向上すれば販売機会は拡大する。商品をネットワークにつなげると、商品が現在どこにあり、どのような状況で、これからどこへ行くのか、正確に把握できる。人の手で箱を開けたり探したりしなくてもいいので、在庫管理の作業も簡単になる。在庫を正確に把握できれば、どの商品がどこでよく売れているか、どの商品を値下げすべきか、品切れ中の商品を近くの店舗から取り寄せられるかなど、より的確に判断できるようになる。柔軟に返品を受け付けているTargetのような小売企業では、IoTによって商品を個体識別できるようにすると便利だろう。紙のレシートや客の申告に頼らず、商品自体にタグ付けされた情報で購入日時や場所、支払い状況を確認できれば、客にとっても店にとっても返品処理が効率的になる。
使用状況に関する情報の収集
多大な投資によるPOSシステムの普及によって購買時の情報の収集が進み、いつ何が売れたか、よく分かるようになった。しかし、購入後の商品がどのように使われているのかはまだあまり把握できていない。IoTを導入すれば、それも変えることが可能だ。例えば、衣料品メーカーが新しいアウトドア衣料を発売したとする。宣伝した通り、客は実際に寒い屋外でそれを利用したのだろうか。それとも、ひと冬の間、自宅に置きっぱなしになったのか。卵を買った客はオムレツを作ったのか、それとも隣家に投げつけたのか。IoTを導入すれば、購入後の商品の状況をより詳しく把握できるようになるだろう。そうして得た情報を分析することで、商品購入時の情報だけでは考え付かない新しいサービスが誕生するかもしれない。
IoTは小売業に新しい光明を投じる可能性を持っているが、実際に導入するには顧客に配慮した微妙なバランスが必要になってくる。小売業では顧客のプライバシーと情報を保護することを最優先にしなければならない。有望な活用法はいろいろあるが、実現するにはプライバシーの問題を解決する必要がある。どんな技術にも当てはまることだが、消費者に近くなるほど、プライバシーと利便性のバランスが難しくなる。それはIoTも例外ではない。
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