データ分析の威力が分かる10事例
客の列が長いと簡単メニューばかりに? ファストフード店が実践する分析術
レジに設置したビデオカメラでドライブスルーに並ぶ客の列の長さを認識し、列が長い場合は、用意が簡単なメニューを自動で表示する。ファストフード店が実施しているデータ分析の活用術をはじめ、注目の事例を紹介する。
米調査会社Gartnerのアナリスト、ダグ・レイニー氏は、ビッグデータのケーススタディ55例を55分のプレゼンテーションにまとめた。これを見れば、ビッグデータが具体的にどのように活用されているのかが分かる。「Gartner Symposium」においてレイニー氏は「これはシェークスピア全集のようなものだ。面白さという点では及ばないが、情報としての価値は高いと思う」と冗談めかして言った。
このプレゼンテーションは、ビッグデータの“3つのV”の定義に関する上級者向け解説だといえる。ビッグデータを特徴付ける3つのVとは、「Variety(多様性)」「Velocity(速度)」「Volume(量)」である。この定義はレイニー氏が2001年に提唱したものだ。ちなみに同氏は、「インフォノミクス」という用語の生みの親でもある。
同氏が55もの例を紹介したのは、聴衆を圧倒するためではなく、有益な情報を伝えるのが狙いだという。レイニー氏は聴衆に向かって「多数の例に驚いている人もいるだろうが、自社の業績改善につながるようなビッグデータの活用例に注目していただきたい」と述べた。
「この場にはさまざまな業界の人がいるだろうが、他の業界の例であっても自分の業界に応用できる素晴らしいアイデアがあるはずだ」(同氏)
このケーススタディのうち10例を以下に紹介する。
1. Macy'sのリアルタイム価格設定
米小売大手のMacy'sは米SAS Instituteの技術を利用し、需要と在庫に基づいてほぼリアルタイムで7300万品目もの商品の価格設定を調整している。
2. Tipp24の宝くじ購入用プラットフォームと予測技術
ドイツのTipp24では、米KXENのソフトウェアを利用して、ヨーロッパの宝くじの購入にかかわる数十億件のトランザクションと数百項目の顧客属性を分析するとともに、顧客に合わせてマーケティングメッセージを即座にパーソナライズする予測モデルを開発している。KXENのソフトウェアにより、予測モデルの構築にかかる時間を90%削減できたという。独SAPは現在、KXENの買収手続きを進めている。
3. Wal-Mart Storesの検索技術
巨大小売企業の米Wal-Mart StoresがWalmart.comで運用している最新の検索エンジンにはセマンティックデータが含まれている。自社開発のプラットフォーム「Polaris」は、テキスト分析、機械学習、類義語マイニングなどの技術を使って重要性の高い検索結果を生成する。Wal-Mart Storesによると、セマンティック検索技術を組み込むことにより、オンライン顧客が購入を完了する割合が10~15%ほど改善されたという。「Wal-Martでは、これは数十億ドルの売り上げ向上を意味する」とレイニー氏は語る。
4. ファストフード会社でのビデオ活用
ある会社(レイニー氏は社名を明らかにしていない)は、ドライブスルーレーンに設置したビデオカメラの学習機能を利用してデジタルメニューボードに何を表示するかを決めている。順番待ちの車の列が長くなれば、用意するのに時間がかからない商品のメニューが表示され、列が短くなれば、用意するのに時間がかかる利益率の高い商品のメニューが表示される。
5. Morton's The Steakhouseのブランド認知作戦
米シカゴに本社を置くステーキハウスチェーンであるMorton's The Steakhouseがソーシャルメディアを通じて演じた離れ業は、インターネット上で大きな話題となった。ある顧客が冗談で「ニューアーク空港に夕食を持ってきてほしい」と同社にツイートした。その顧客は、1日の長い仕事を終えて同空港にチェックインする予定だった。このツイートを見たMorton'sは、彼が常連客(そして頻繁に書き込みをするTwitterユーザー)であることを知り、彼がよく注文する料理のデータを検索し、彼がどのフライトに搭乗するのかを確認した上で、タキシードを着た配達スタッフを空港に行かせ、その顧客に夕食を提供したのだ。
もちろんこれは話題づくりを狙ったパフォーマンスで、その狙いは成功したが、それは重要な問題ではない。「企業が自問すべきことは、『自分たちの会社には、果たしてこうしたことをする能力があるのか?』ということだ」とレイニー氏は語る。
6. PredPolによるアルゴリズム流用
米ロサンゼルス市警察とサンタクルーズ市警察、教育関係者チーム、そしてPredPolという米企業は、地震予測用のアルゴリズムを修正し、犯罪データを読み込めるようにした。このソフトウェアは、500平方フィート(約50平方メートル)の精度で犯罪発生の可能性を予測することができる。ロサンゼルスでこのソフトウェアが使われた地域では、窃盗事件が33%、暴力事件が21%減少したという。
7. Tescoの電力効率改善
スーパーマーケットチェーンの英Tescoは、自社の各営業拠点から送られる7000万件の冷蔵庫関連のデータを収集し、専用のデータウェアハウスに格納している。これらのデータの分析結果を冷蔵庫のパフォーマンスの把握や点検実施の必要性の判断、予防メンテナンスの実施などに役立てることにより、エネルギーコストの削減を実現している。
8. American Expressのビジネスインテリジェンス
米American Express(AmEx)は、後知恵のリポーティングや指標だけではビジネスを大きく成長させることができないことに気付いた。「従来のBI(ビジネスインテリジェンス)による後知恵のリポーティングや傾向を示す指標は、ビジネスを発展させるものではない」とレイニー氏は指摘する。このためAmExは、顧客のロイヤルティーを正しく予測できる指標を模索し、取引履歴と115項目の売買予測指標を分析する高度な予測モデルを開発した。同社は現在、今後4カ月以内に解約されるオーストラリアのアカウントの24%を特定できるとしている。
9. Express Scripts Holdingの製品開発
薬剤医療費請求の処理業務を行う米Express Scripts Holdingは、投薬治療を最も必要としている人々が薬を飲み忘れる可能性が最も高いという事実に気付いた。このため同社は新製品を開発した。薬を飲む時間が来たらそのことを患者に通知するために、「ピーッ」という音が鳴る薬品キャップと自動的に患者に電話をするシステムだ。
10. Infinity Property & Casualtyのダークデータ
レイニー氏はダークデータを「特定の目的のために収集された後でアーカイブされた未利用の情報資産」と定義する。しかし状況次第では、そのデータは他の目的で活用することができる。自動車保険会社の米Infinity Property & Casualtyは、何年間にもわたって蓄積された査定員の報告書を分析し、不正請求事例と関連付けることができることに気付いた。同社はこのプロジェクトを通じてアルゴリズムを作成し、データを利用して1200万ドルを保険金返還請求により回収した。
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