Android、Windows用は周回遅れ?
iPhone初期設定を“ゼロタッチ”に、担当者がほれ込むApple純正プロビジョニングツール
IT部門担当者の業務は多岐にわたり、デバイスの初期設定もその1つだ。AppleやGoogleではその作業を支援するプロビジョニングの仕組みを提供しているが、他に比べてAppleは非常に魅力的だという。
AppleのゼロタッチプロビジョニングであるDevice Enrollment Program(DEP)をAppleユーザーは、当たり前で価値のあるものと受け入れている。MicrosoftとGoogleもまた、それぞれWindowsとAndroid用の独自のゼロタッチプロビジョニングを提供している。ここでいうプロビジョニングはユーザーに必要な情報を提供する仕組み。ゼロタッチは自動で、の意味。デバイスの初期設定などで利用する。
ゼロタッチプロビジョニングは、新規購入したデバイスの手動設定とエンタープライズモビリティ管理(EMM)ソフトウェアへの手動登録を不要にし、IT部門担当者の作業負荷軽減に貢献している。2017年初めにGoogleとMicrosoftはそれぞれAndroidとWindows用プロビジョニングのサービスを発表したが、既にAppleユーザーが利用しているDEPと比べて幾つかの制約がある。
設定に2週間はあり得ない
「DEPを使用すると、現場に張り付いてデバイスを監視、注意して扱う必要はありません」と米南イリノイ大学(SIU)でコンピュータラボ利用者にMacデバイスを提供する、Mac管理者のコリン・ヴァン・ミーター氏は述べる。「もはやプロファイルを作成するのに2週間を費やす必要はないのです」
Appleデバイス管理ソフトウェア「Jamf」を提供するJamf Softwareの年次ユーザーカンファレンス「Jamf Nation」の会場において、ミーター氏と他の参加者は、Apple DEPの長所と短所、そしてAndroidとWindows用の新しいオプションとDEPを比較し意見を交わした。
GoogleとWindowsはプロビジョニング市場にゆっくり進出している
ゼロタッチプロビジョニングサービスを使用すれば、IT部門担当者とユーザーは、デバイスを手動設定し、EMMに手動登録する手間をかけなくて済む。ユーザーは単にデバイスにサインインするだけで、デバイスを使用できる。
Appleは2014年以降、DEPを通じてゼロタッチプロビジョニングを提供している。管理者はオンラインサービスを使用して、初期設定やアプリケーションを事前設定し、デバイスを自動的に登録したいEMM製品を選択する。Apple DEPは、全てのmacOSデバイス、iOSデバイス、Jamfを含むEMM製品をサポートしている。
「DEPは非常に素晴らしいプログラムです。一度設定すれば、それ以降はデバイス管理の必要はありません」とペインマネジメント医療サービスを提供する米企業Comprehensive Pain SpecialistsのCIO(最高情報責任者)であるボビー・ティショー氏は述べる。
Appleに対抗するようにGoogleは、2017年9月にAndroid用ゼロタッチプロビジョニングを発表した。 AppleのDEP同様、IT部門担当者は購入時にポータルを通じてデバイスを設定することができる。しかし、同社によると現在このプログラムは、「Google Pixel」「Huawei Mate 10」「Sony Xperia XZ1」の3デバイスでのみ利用可能であり、他社製デバイス用のプログラムに関しては、後日提供する予定だ。さらに、EMM提供企業のBlackBerry、IBM、MobileIron、SOTI、VMwareはAndroid用のプログラムを提供しているが、原稿執筆時点でMicrosoftと仮想化ソフトウェアなどを扱う米企業CitrixはAndroid用プログラム提供をしていない。
MicrosoftもGoogle同様、2017年9月にWindows用ゼロタッチプロビジョニングとしてWindows AutoPilotプログラムを発表した。AutoPilotは全てのEMM製品をサポートしているという。IT部門担当者は「ビジネス向けWindowsストア」を介してWindowsデバイスを事前設定することができる。ただし、幾つかの条件がある。まず全てクラウド環境での設定が必要だ。設定にはAzure Portal(アプリ管理ソフトウェア)を使う。その他の条件として、デバイスがWindows 10のクリエイターアップデートを適応済みで、Azure Active Directory Premium(ID管理ソフトウェア。Premiumはそのライセンス区分の1つ)のライセンス契約が必要だ。
SIUのアプリケーションサポート技術者、マラカス・スコット氏は「Android用のプログラムはまだ初期段階にあるようです。非常に限られたデバイスにのみ対応しており、現在対応しているのはスマートフォンだけです」と語る。
SIUにどのデバイスを採用するか、についてはDEPの有効性がApple選定の大きな要因だった、と同氏は述べる。
「当時、物理的にデバイスに直接触れることなく制御可能なプログラムは他にはありませんでした。そんなプログラムを最初に提供したのがAppleでした。DEPを最初に見たとき、私は『これは画期的なサービスだ』と思い、一体Android版はいつになったら追い付くのかと思いました」
ただ、Apple以外の競合企業がゼロタッチプロビジョニングを提供するというアイデアは良い流れだ、とスコット氏は付け加えた。
「競合他社がここまで来るまで時間がかかりましたが、これからの新製品を評価するには良い機会かもしれません」と彼は語る。「Android用の製品の準備が本当に整ったら、評価してみようと思います」
IT部門が活用するプロビジョニングと隠れた問題とは
Comprehensive Pain Specialistsでは、さまざまな場所で診療サービスを提供しているため、Apple DEPでデバイスを遠隔設定できることは非常に有用だ。
ティショー氏は「以前はデバイスにインストールした全てのソフトウェアを削除し、全てを再インストールするために、あちこちに発送し、多くの時間とお金を費やしていました」と語る。
またSIUにおけるDEPの主な利点の1つは、IT部門担当者がAppleのアクティベーションロックを回避できる点だ。通常、ある特定のデバイスにアクセスできるApple IDは1つのみである。しかしDEPの下では、ユーザーは独自のApple IDを使用してデバイスを使用可能状態にし、後にIT部門に返却する。IT部門担当者は別のApple IDを持つ新しいユーザー用にデバイスの全てのソフトウェアを削除し、全てを再インストールすることが可能である。
このアプローチにより、大学側は1学期限定でiOSデバイスを教師と学生に提供することができる。またDEPでは、学生がデバイスを返却しなかった場合に、デバイスにリモートロックをかけることができたり、デバイスを返却する必要があることを知らせる通知を送信したりできる。
Appleはエコシステムをひそかに管理しているため、多くのユーザーの知らない間に変更を加える場合がある。それは大学側がDEPを利用する場合にしばしば問題になる、とミーター氏とスコット氏は述べる。
従業員用にMacデバイスとiOSデバイスの設定にDEPを使用しているSAP社の例では、DEP導入当初は別の問題に直面した。iOS 11まで、同組織がサードパーティーから購入したデバイスでDEPを利用できなかったのだ。しかし、現在はAppleから購入していないデバイスも登録することができる。SAPの社内IT部門エンタープライズモビリティサービス部門の責任者であるマーティン・ラング氏によると、IT部門は管理機能とセキュリティ機能を強化した監視モードでDEPデバイスを配置できるという利点もある。
プロビジョニングはIT部門にとって有効な手段であり、Apple以外にも徐々に浸透しているように見える。だが、現時点ではDEPを捨ててまで他のデバイスに移行しようとするIT部門担当者はそれほどいないようだ。
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