海外拠点のリスク管理・対策に有効
監査業務を効率化する「AI」「プロセスマイニング」「GRCツール」とは?
海外展開する日本企業に不足しているのが、テクノロジーを活用したリスク・コンプライアンス管理だ。グローバルガバナンスを構築するために、AI技術やデータ分析などのテクノロジーをどう役立てればよいだろうか。
企業が海外進出する上で、現地拠点のリスク管理などのグローバルガバナンスは不可欠だ。しかし各拠点のリスク管理を従来のように人手で実施することは困難になってきている。地理的要因だけでなく、ITがビジネスに浸透するにつれ、管理すべき対象が多様化しているためだ。そうした問題の特定や解消に、データ分析を始めとするテクノロジーが役立つ。グローバルガバナンス強化のために活用すべきテクノロジーについて、PwCあらた有限監査法人の辻田弘志氏、熊田清志氏による説明を基に解説する。
日本企業が抱える課題
グローバルガバナンスの構築において課題となるのは地理的・文化的要因だけではない。「海外拠点で生成されるデータや設備・システムは不十分であることも少なくない。人員自体が不足している場合もある」と辻田氏は述べる。現地人員に作業させるとしても、作業内容や作業結果を全て把握・管理することは難しい。
「日本企業は欧米の先進企業と比べてリスク管理・対策のIT化が遅れている」と辻田氏は説明する。人や仕組み、監査機関などの組織による管理が中心の場合、監査や対策に不完全な部分が生じたり、担当者の負担が増したりといった問題が起こる。その結果、取得すべきデータの品質低下や、リスク分析不足による不祥事につながる。加えて人手によるリスク管理では、モニタリングや内部監査が部分的・形式的になりやすいという。「短期間かつ特定の作業環境でのみデータを収集し、それを基に判断するような、その場しのぎの監査では、リスク対策は万全とは言えない」(同氏)
解決策となる技術と応用例
人手による不完全なリスク分析・管理を脱し、抜け漏れのない分析調査を実現するために有効な手段として、熊田氏がまず紹介するのはAI(人工知能)技術だ。AIエンジンに学習データを与えモデルを作成する。これを利用して、大量の文書に対して、高いリスクを持つ文書の発見や、情報間での整合性確認が自動でできるようになる。業務システムのイベントログを基に、業務プロセスの可視化や分析を可能にする「プロセスマイニング」ツールも有効だという(図1)。通常とは異なるプロセスの発見だけでなく、無駄なプロセスを突き止めることによるプロセスの改善も期待できる。
不完全なリスク管理に加え、部分的・形式的なモニタリングの解決策にもなるテクノロジーとして、熊田氏は「GRC」(Governance Risk Compliance)ツールを挙げる(図2)。これは多様なリスクとそれにまつわるデータを一元管理できるシステムだ。GRCツールは定期的にデータを取得し、人に代わってリスク評価やモニタリングなどの業務を実行できる。その結果、業務の負荷を削減し、正確性を高められる。さらに継続的なモニタリングが可能となり、監査のための特別な作業が不要になる。「リスク評価やモニタリングの結果を定期レポートとしてシステムに作成させる。それを定期的なコンプライアンス評価として扱う、といった運用が考えられる」と、熊田氏は例を提示する。「企業に関わるリスクと、それに関するデータは多様化している。そうしたデータを、表計算ソフトウェアなどを使って人が管理していると、いずれデータの増加に追い付かなくなる。この観点においてもGRCツールは有用だ」(同氏)
熊田氏は「テクノロジーはあくまでも手段」であると強調する。「広い視野を持ち、全体としての目的が何かを正しく設定すべきだ。誰がどのデータ、あるいはどのツールを使うべきかを考えなければいけない」とも語る。この考え方はグローバルガバナンス強化だけでなく、どの業務分野においても必須だろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー