「Cloud Services Platform」とは
Googleのハイブリッドクラウド戦略が加速 マネージドKubernetesとIstioを活用
Googleはハイブリッドクラウドプラットフォーム「Cloud Services Platform」の提供を試みている。ヒントは、コンテナ統合管理ツール「Kubernetes」が果す大きな役割にある。
2018年、Googleは主な競争相手のAmazon Web Services(AWS)やMicrosoftの「Microsoft Azure」と同様、企業ユーザーを対象にハイブリッドクラウドの導入作業の簡略化を後押ししている。
Googleがこの戦略を形にし、2018年7月に発表したのが「Cloud Services Platform」(CSP)だ。このハイブリッドクラウドサービスは、Googleの「マネージドKubernetesサービス」と、同社も共同開発に参加するオープンソースサービスメッシュ「Istio」を企業のデータセンターに提供する。
米ニューヨーク市で2018年9月中旬に開催された「Google Cloud Summit」では、Google Cloud部門のCTO(最高技術責任者)を務めるブラインアン・スティーブンス氏がCSPの技術コンポーネントと市場進出モデルの詳細を明らかに、マルチクラウド化が進む世界でGoogleがCSPに期待する役割について説明した。
――Googleがハイブリッドクラウドを重視するようになった理由を教えてください。
ブライアン・スティーブンス氏(以下スティーブンス氏) それはKubernetesの成熟によるところが大きい。
パブリッククラウドでKubernetesベースのプラットフォームに移行するだけでなく、それをオンプレミスで実行する方法を見いだそうとする動きが盛り上がっている。当社がその取り組みをもっと支援できれば、Kubernetesの価値もそれだけ高まる。
――CSPが企業のハイブリッドクラウドを実現させる方法を詳しく教えてください。
[写真]
ブライアン・スティーブンス氏
スティーブンス氏 Googleの「Google Cloud Platform」(GCP)で最も早く増えているのは「Google Kubernetes Engine」(GKE)の導入だ。導入先の大半が単純な仮想マシン(VM)なのは変わらない。だがその中でも、マネージドKubernetes環境への移行が最も成長の早い分野になっている。
当社の既存顧客も、自社の開発者にクラウドでの最新アプリケーションの構築方法や導入方法を教えてはいるが、全ての取り組みを100%クラウドに移行しているわけではない。Kubernetesをベースにしていても、当社の取り組みはRed Hat、Microsoftの「Azure Stack」の取り組みとは方法が異なる。
競合他社では一部の基盤が共通している。だが、当社はオンプレミスに完全なマネージド環境を提供しようとしている。それにより実際にオンプレミスで、Googleパブリッククラウドを運用しているように見える。こうしたプラットフォーム上にアプリケーションを構築すれば、そのアプリケーションはオンプレミスとクラウドのどちらでも実行できる。
――CSPは最新のハイブリッドクラウドアプリケーションに合わせて作られているのですか。それとも、レガシーアプリケーションをこのプラットフォーム向けにリファクタリングすることを顧客に期待しているのですか。
スティーブンス氏 新しいアプリケーションを作成する開発者はコンテナベースのアーキテクチャを目指すのが一般的だ。開発者には、VMベースのアプリケーションをコンテナベースのアプリケーションに変換できるツールを提供する。これは開発者にとって大いに役立つ。全てが非常に軽量なため、アプリケーションをテストする効率的な方法にもなる。コンテナベースの環境でアプリケーションを構築すると、使用するインフラが大幅に少なくなる。
ただし通常、これは開発環境を変えることを意味する。どの開発者も、オープンソースツールを使って開発環境を構築し、CI(継続的インテグレーション)/CD(継続的デリバリー)やテストなどの取り組みを行うことが増えてきている。CSPでは、そうしたことを非常に一貫性のあるものにできる。
――CSPを実行するためのハードウェア要件を教えてください。
スティーブンス氏 業界標準のハードウェアだけだ。現時点では当社は最も手っ取り早い方法で行っている。これは投資利益率(ROI)に依存するので企業次第になるが、その内部でVMwareのVMを実行している。そのため、VMwareが使用されている環境ならどこでもCSPを実行できる。最終的には、さまざまなOEM(相手先ブランドによる生産)ソリューションの組み合わせを直接扱い、OEMパートナーと直接連携するモデルを目指すことになるだろう。
――Nutanixとのパートナーシップはどのような役割を果たしますか。
スティーブンス氏 Nutanixには厳選されたソフトウェアスタックがあり、独自のカスタムハイパーバイザーを用意している。これらは非常に優れており、ハードウェアと統合でき、今ではクラウドとも直接統合できるようにもなっている。GoogleがNutanixと取り組んできたのはこれを逆転させることだ。つまりユーザーが気に入っているオンプレミスのNutanixスタックに、GCPで運用する環境を統合して、より一貫性のあるものにするにはどうればいいのかということだ。
――CSPの市場進出モデルとはどのようなものになりますか。特にオンプレミスコンポーネントについて教えてください。
スティーブンス氏 これまで、ハードウェアOEMはどの企業もコンバージドを扱ってきた。それはハードウェアに仮想化機能を用意することになる。だがKubernetesを扱うことで、ハードウェア内部のソリューションスタックにコンテナベースのアーキテクチャが使えるようになる。
そのため、ソリューションパートナーやOEMと連携する機会が多くなる。現時点は、きちんとした形を作るためにエンジニアリングにおいて少数の顧客と密接に連携している。その形ができたら、複数のパートナー企業製システム間での拡張について話し合うことになるだろう。
――2018年9月中旬に発行されたあるレポートが主張するように、Googleは企業のデータセンター向けに独自のオンプレミスハードウェアを構築することを予定していますか。
スティーブンス氏 それについてのコメントはない。当社は、オンプレミス関連では間違いなく何も発表していない。そのため、未定ということだ。
――GCPユーザーのうち、AWSやAzureなどの他のパブリッククラウドも使用しているユーザーの数はどれくらいいますか。またそのようなユーザー向けのマルチクラウドモデルに対応するために、どのような対策を立てていますか。
スティーブンス氏 マルチクラウドユーザーは50%を超えている。ここでいうマルチクラウドは、プロバイダー大手3社のサービスを使っていることを指す。
当社は、オープンソースファーストの戦略をとっている。現状として、競合に関する課題を乗り越えて標準化を後押しするのは非常に難しい。意欲的なパートナー全てに参加を求め、APIや管理など、ある程度障壁になること、余計な差別化は全て標準化したい。だがそれは実に困難だ。
個人的には、標準化を促す最善の手段がオープンソースだと考えている。極めて価値の高いオープンソースプロジェクトを作り上げれば、業界では競合企業さえもそのオープンソースを採用せざるを得なくなる。企業の戦略に、そのオープンソースプロジェクトが含まれていなかったとしてもだ。
そのため、Kubernetesを使用することで、「コンテナはVMやVMware環境だけでなく、クラウドでも最善の手段になる」と伝えてきた。当社独自のアーキテクチャからそのことが社内的に分かっていたためだ。そして、Kubernetesが十分に堅固なセキュリティになったことで、他の大手パブリッククラウド2社でもこれを導入したのは見ての通りだ。
――2018年はサーバレス、AI、コンテナがクラウドに関する話題を独占していますが、次の話題は何でしょう。
スティーブンス氏 人々は仮想化を素晴らしいものだと考え、その次はコンテナだった。そして、次はKubernetesだ。コンテナに関しては比較的理解されやすかった。開発者は小さなコードモジュールを作成し、インフラを心配せずにそれらのモジュールを導入するだけだ。Kubernetesを利用すると重量級のVMの代わりにコンテナを使用できるため、インフラを効率化できる。
だが、回復性と拡張性を高め、実際に高いセキュリティを導入することを可能にしたのはIstioサービスメッシュだ。全てのネットワーク機能やセキュリティ機能をアプリケーションの直前に配置することで、物事をサービスとして考えられるようになる。というのも、ユーザーはアプリケーションを管理したいとはそれほど思っておらず、世界をサービスの集まりと見なしたいと考えているからだ。
Istioサービスメッシュにより、企業がネットワークセキュリティを確保する能力が変わる。そして、オンプレミスからクラウドへと広がり、リスクなしで新しいサービスが導入される分散ネットワークが構築されるようになる。一部のユーザーをIstioサービスメッシュに移行して、それがうまくいかなかった場合にロールバックしたり、さらに多くのトラフィックを移行したりすることが可能だ。Istioサービスメッシュが提供するこうした全ての制御により、実際に運用し、素早く対応して、安全な方法でそうした取り組みができるようになる。ただし、その道のりには何年も掛かるだろう。
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