「AIセキュリティツール」の基礎知識【後編】
「AIセキュリティツール」はいつ、どのように使えば有効? 活用例を紹介
AI技術は、セキュリティツールにどのような可能性をもたらすのか。AIセキュリティツールの具体的な利点を紹介しよう。
前編「『AI』(人工知能)はなぜセキュリティツールに必要なのか?」では、AI(人工知能)技術を組み込んだセキュリティツール(以下、AIセキュリティツール)の利用が企業の間で広がっていることと、その背景を整理。ベンダーによる対策前の脆弱(ぜいじゃく)性を悪用した「ゼロデイ攻撃」に対して、AIセキュリティツールがどのように有効かを示した。後編では、AIセキュリティツールが企業にもたらす他の利点を紹介する。
併せて読みたいお薦め記事
セキュリティ分野のAI技術活用
セキュリティ製品・サービスの選び方
力ずくではなく適応的な対処
AI技術を組み込んだセキュリティツールは、攻撃の特定と軽減という点において、人や従来のマルウェア対策システムよりも優れている。加えて、脅威に対する新たな防御および軽減手法も提供する。単純にサーバをシャットダウンしたりトラフィックを遮断したりするのではなく、より適応的な対策を講じて攻撃を阻止する。
攻撃への対策としてシステムをシャットダウンする単純な対処法は、実は攻撃者の思うつぼである可能性がある。重要なインフラに損害を与えることを目的とする「DDoS(分散型サービス拒否)攻撃」を仕掛ける攻撃者は、標的のシステムに過度の負荷を与えて使えなくするか、セキュリティ担当者が対処に追われることを勝利とする。
AI技術を組み込んだセキュリティツールは、このような力ずくの処置ではなく、適応型の対策を実行する。
攻撃を阻止する方法を学習し、二次的な損害を最小限に抑える。システムがトラフィックの混乱を狙った攻撃を受けたら、AI技術を組み込んだセキュリティツールが攻撃者のトラフィックと正規のトラフィックを判別し、トラフィックを2つに分割する。そうすることで、サービスを継続させながら攻撃者を寄せ付けないようにする。セキュリティツールがデータやインフラへの侵害を検出すると、バックアップデータやバックアップシステムを利用し、全ての変更を元に戻す。セキュリティ対処を筋書き通りにするのではなく、人間の動作を模倣して、攻撃者が簡単には予測できない方法で対処することも可能だ。
システム監査とパッチ管理の向上
AI技術を組み込んだセキュリティツールは、システムやデバイス、データの脆弱性を定期的に調査し、インフラにパッチを適用する。それにより、攻撃者が以前と同じ手口でシステムに侵入しようとしても阻止できる。セキュリティ担当のアナリストは、保護しなければならないアーキテクチャとデバイスの多さに圧倒されている。明日起こり得るトラブルを防ぐために、昨日起こったトラブルに対処するパッチを常に注視しなければならない。人間の担当者がこうした業務を継続的にこなすのはほぼ不可能だ。
定期的にパッチを適用したり、公開されたときにパッチを自動で適用したりするツールは存在する。ただしそうした自動化ツールは汎用(はんよう)的な手法を用いており、ツール自体が問題になる場合がある。パッチの中には機能面での問題を引き起こすものもあり、以前のバージョンへのロールバックが必要になることもある。特定のデバイスやシステム構成でのみ機能するパッチもある。AI技術を組み込んだセキュリティツールは、むらなく適切にパッチを適用し、機能面に問題をもたらすことなくセキュリティホールに対処する。加えてシステムやパッチを絶えず監視して、適切なシステムに適切なパッチを適切なタイミングで適用する。
変化する脅威への適応
AI技術を組み込んだセキュリティツールは、絶えず変化する脅威に適応できる。新たなデバイスやクラウドアプリケーションなどのシステムが登場すると、新たな脅威も登場する。企業は攻撃を受けるまで、それらの新しい脅威に気付かないこともある。AI技術を組み込んだセキュリティツールは、そうした新しい脅威を内包するシステムを調査し、新たに出現する可能性がある潜在的な脅威を確認する。ソフトウェアやハードウェアのベンダーは、自社製品のセキュリティを確保するためにペネトレーションテスト(擬似的な侵入テスト)を定期的に実施している。AI技術を組み込んだセキュリティツールは、このペネトレーションテストの機械学習バージョンといえる。
ソフトウェアの品質保証に関わる作業は、AI技術によって自動化が進んでいる。同様に、ペネトレーションテスト機能についても自動化が進む。AIエンジンを搭載した新たなツールが登場し、継続的なペネトレーションテストや、進化し続ける脅威に対抗するための機能を提供している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「AIセキュリティツール」の基礎知識
AI技術を組み込んだセキュリティツールは、なぜ必要なのか。企業にどのようなメリットをもたらすのか。簡潔に紹介しよう。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー