AWS、Microsoft、Googleのハイブリッドクラウド戦略【後編】
AWS、Microsoft、Googleの「ハイブリッドクラウド」戦略は何が違うのか?
ハイブリッドクラウド市場は今後、どのように動くのか。AWS、Microsoft、Googleの主要クラウドベンダー3社の戦略は。調査会社の話を基に整理する。
前編「AWS、Microsoft、Googleの『ハイブリッドクラウド』製品をざっくり理解する」では、クラウドサービスの大手ベンダーAmazon Web Service(AWS)、Microsoft、Googleが手掛けるハイブリッドクラウド関連の製品/サービスを取り上げた。後編ではハイブリッドクラウド分野における今後の潮流と、それに対する各社の方針を説明する。
ハイブリッドクラウド分野の2つの流れ
調査会社IDCでアナリストを務めるディーパック・モーハン氏は、大手クラウドベンダー3社は同じような思想を共有していると考えている。ただしハイブリッドクラウドのインフラ構成については、2つの明確に異なるモデルがあることも強調する。一つは「次世代」のハイブリッドクラウドモデルで、クラウドでの利用を前提として設計されたクラウドネイティブのワークロード(システム)もオンプレミスに配置する構成。もう一つはクラウドネイティブのワークロードはパブリッククラウドに残す「従来型」ハイブリッドクラウドモデルだ。
一方でユーザー企業は、一部のレガシーなワークロードをパブリッククラウドに移行し、一部はオンプレミスに残す仕組みを求める。この点から見ると、AWS、Google、Microsoftの3社はそれぞれアプローチが異なる。
「AWSはVMwareとのパートナーシップを通じて、従来型ハイブリッド分野で強力なストーリーを作り上げている。オンプレミスツールとサービスを使用して、パブリッククラウドに手を広げる顧客を後押しする」とモーハン氏は述べる。AWSにも、エッジコンピューティングや企業のデータセンターに次世代のクラウドネイティブサービスを組み込むことを目指すサービス群がある。前編で紹介した「AWS Snowball Edge」や「AWS Outposts」などがその例だ。
Microsoftのハードウェアアプライアンス「Azure Stack」も、パブリッククラウドとオンプレミスの間で一貫性のあるサービス一式を提供する。一方でVMware製品をベースにしたオンプレミス環境を構築している企業は少なくない。そうした状況下で、複雑なアプリケーション、ツール、プロセスをAzure Stack環境に移行するのは、ユーザー企業にとって難しい可能性がある。そのためAzure Stackは、主に新しいワークロードを対象に設計されていると見受けられる。
Googleは「ハイブリッドクラウドテクノロジーに対して全く異なるアプローチを取っている」とモーハン氏は話す。同社のストーリーは主に、コンテナ型仮想環境の統合管理ツール「Kubernetes」に基づく。ユーザー企業はオンプレミスと複数のパブリッククラウドを横断した形でKubernetesを実行し、クラウドネイティブのアプリケーションを利用できる。Googleは同社のマネージドKubernetes「Google Kubernetes Engine」のオンプレミス版「GKE On-Prem」を発表したことにより、この戦略を明確に示した。従って同社は、次世代ハイブリッドクラウド導入の有力なベンダーの一つといえる。
今後は複数のクラウドサービスの採用が進む
2019年のハイブリッドクラウド市場には、どのようなことが期待されるだろうか。調査会社451 Researchでアナリストを務めるジーン・アテルセク氏は「ハイブリッドクラウドモデルの複雑さを軽減し得る標準の登場に注意すべきだ」と言う。加えて近い将来、コンテナやサーバレスアーキテクチャの採用が進み、インフラの自社保有が必須ではなくなるという。それにより「企業はアプリケーションのロジック部分にもっと力を注ぐようになる」とアテルセク氏は補足する。
調査会社451 Researchが実施した「企業の意見調査」によると、半数を超える企業が近い将来、複数のパブリッククラウドサービスの採用を計画しているという。その結果、特定の管理ツールを強化する企業が増えることになるだろう。これは多様なIT環境を運用する「本拠地」を作ることを目標とした管理ツールだ。そのようなツールの具体例として、アテルセク氏はIBMの「IBM Multicloud Manager」、Hewlett Packard Enterpriseの「HPE OneSphere」、VMwareの「vRealize Suite」などを挙げる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
AWS、Azure、GCPのハイブリッドクラウド戦略
AWS、Microsoft、Googleのクラウドベンダー各社は、2018年に引き続き2019年もハイブリッドクラウドへの取り組みを強化すると考えられる。ただしベンダー各社の戦略には重要な違いが幾つかある。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー