オンプレミス寄りか、クラウド寄りか
「ハイブリッドクラウド」を実現する製品とは? 選定の勘所は?(1/2 ページ)
オンプレミスとパブリッククラウドが併存するハイブリッドクラウドを構築する動きが広がっている。管理ツールを中心に、関連製品の選定ポイントや今後の注目動向などについて、ITRの甲元宏明氏の話を基にまとめる。
最近、頻繁に耳にするようになったハイブリッドクラウド。その定義はさまざまだが、本稿では「プライベートクラウドを含むオンプレミスと、パブリッククラウドの間で何らかの連携をしていること」として話を進める。この定義は、クラウドの動向に詳しいアイ・ティー・アール(ITR)のプリンシパル・アナリスト、甲元宏明氏の定義を参考にした。単にオンプレミスに加えてパブリッククラウドを利用しているだけでは、厳密な意味でのハイブリッドクラウドとは呼ばない。ただし国内では、オンプレミスとパブリッククラウド間の連携ができている企業は、まだ少ないようだ。
オンプレミスとパブリッククラウドの混在環境が生じる理由は幾つか考えられる。例を挙げると、
- 将来的に完全にパブリッククラウドへ移行する過程にある
- オンプレミスの補助的な役割としてパブリッククラウドを利用している
- オンプレミスとパブリッククラウドの明確なすみ分けがある
- 明確な方針はないが、結果として環境が混在している
などだ。パブリッククラウドを必要とする目的が異なれば、ハイブリッドクラウドの運用管理に必要なツールも異なる点に注意が必要になる。そこで本稿では、甲元氏の話を基に、ハイブリッドクラウドを構築、運用するための製品選定の基準や、今後の注目すべき製品動向についてまとめる。
「現在は過渡期にある。ビジネスのメリットを考えれば、最終的には全てをクラウドに移行することが理想的だ」と甲元氏は語る。現時点では、クラウドのコストが想定以上に高くついてしまったり、コンプライアンス要件からオンプレミスを残す必要があったりするケースは珍しくない。そのためクラウドへの完全移行を実現したくても、現時点ではどうしてもオンプレミスが残ってしまうケースがある。反対にクラウドを部分的に利用することで、そのメリットを取り入れつつ、当面はオンプレミスを中心としたインフラを維持する方針の企業もあるだろう。
ハイブリッドクラウド運用のための製品選びは、クラウド中心なのかオンプレミス中心なのかに左右される。要するにクラウドの優先度が重要になる。ハイブリッドクラウドの運用管理製品は多様で、ここでは2つに分類する。1つ目はパブリッククラウドベンダーが提供する製品。2つ目はオンプレミスの管理を中心とする製品だ。
クラウドベンダーがオンプレミスをサポート
Microsoft、Oracle、Amazon Web Services(AWS)といったパブリッククラウドベンダーが、オンプレミスシステムの構築、運用を支援する製品を販売している。甲元氏によれば、これらのベンダーが販売する製品/サービスは、オンプレミスのシステムをいったんクラウドにそのまま移し、その後クラウドネイティブな仕組みに作り替える「リフト&シフト」を前提にした場合に適しているという。
例えばMicrosoftは「Azure Stack」、Oracleは「Oracle Cloud at Customer」として、顧客が自社のデータセンター内にパブリッククラウドの環境を導入できる、オンプレミス向け製品を提供している。AWSは2018年後半に、パブリッククラウドと同じハードウェアやソフトウェアを1つのラックに収めてオンプレミスに設置できる「AWS Outposts」を発表した。こうしたオンプレミス向け製品の利点は、オンプレミスのシステムをそのままパブリッククラウドに移行する「リフト」をしやすくする点だ。
パブリッククラウドを前提にしてスモールスタートを可能にする点も、こうしたクラウドベンダーのオンプレミス向け製品の利点だといえる。ユーザー企業はいったんオンプレミスで新たなシステムを作ってみて、軌道に乗り次第、そのままパブリッククラウドへ移行できるためだ。失敗すれば、パブリッククラウドへの移行前にそのシステムを畳んでしまえばいい。
クラウドベンダーが出しているこうしたオンプレミス向けの製品が備える機能は、パブリッククラウドで提供している機能の一部でしかない。「リフトを前提にするには適しているが、現在のパブリッククラウドと同様の使い方をするのは難しい」と、甲元氏は注意を促す。
RightScaleをはじめとしたクラウド運用管理ベンダーが提供する、ハイブリッドクラウドやマルチクラウドの運用に特化したツールもある。クラウドベンダーのハイブリッドクラウド支援製品や、以下で紹介するオンプレミス中心の製品/サービスと比べると、ハイブリッドクラウド運用のための機能が充実しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー