事例で探る「SAP HANA」の実力【後編】
企業は「SAP HANA」を何に利用しているのか? 3大用途を紹介
「SAP HANA」にはワークフローの改善、意思決定支援、データ統合という3つの長所がある。企業におけるSAP HANAの用途にはどのようなものがあるだろうか。
前編「医療ITベンダーの技術基盤を『SAP HANA』はどう支えているか」では、医療ソフトウェアベンダーのHarrisLogicが、ビジネスを支えるテクノロジーにSAPのインメモリデータベース「SAP HANA」をどう組み込んでいるかを説明した。後編では、SAP HANAの具体的な用途を紹介する。
SAP HANAの3つの用途
SAP HANAを用いた代表的な用途は以下の3つだ。
- 小規模かつ部分的なデータウェアハウス(DWH)であるデータマートを使わないリアルタイム分析
- 仮想的なデータ接続を利用したリアルタイム分析
- 高度な分析との連携
用途1.データマートを使わないリアルタイム分析
SAPのグローバルバイスプレジデントを務めるフィリップ・オン氏によれば、「リアルタイムでデータ分析できる」というSAP HANAの機能がビジネスプロセスを効率良く運用することに役立つという。SAP HANAは、データを分析するために保管用のデータベース管理システム(DBMS)からデータマートへデータを移動する必要がない。
「データをデータベースに置いたまま、データをリアルタイムで分析できる。顧客のメリットは計り知れない」とオン氏は語り、これが最も多い用途だと説明する。
データマートやDWHを管理するためにSAP HANAを利用する企業もある。「こうした企業のエンドユーザーはデータをSAP HANA環境に読み込んで、リアルタイムで分析と報告をしている」とオン氏は話す。企業内外のあらゆる場所でデータが爆発的に増加している。そのため、全てのデータをDWHやデータマートに集めて分析するのはもはや不可能だ。
用途2.仮想的なデータ接続を利用したリアルタイム分析
2つ目の用途は、社内外に存在する自社データを仮想的に接続して、リアルタイムにデータを閲覧することだ。
分散処理ソフトウェア「Apache Hadoop」ベースのシステムやクラウドに、数TBのデータを保管しているユーザー企業もある。SAP HANAを利用すれば「そうしたデータへのアクセスを仮想化でき、物理的にデータを移動しなくてもデータにアクセスできるようになる」とオン氏は言う。データ保護の法制度によってデータの移動が禁止されている企業もあり、「そうした場合にもSAP HANAは有効だ」と補足する。
用途3.高度な分析との連携
3つ目の用途は、インメモリデータベースの能力を高度な分析と組み合わせて利用し、最新のアプリケーションを構築することだ。具体的には機械学習やグラフ分析(人や物同士の関係を分析する手法)、予測分析などを活用する。
基幹業務で存在感を増すSAP HANA
分析会社Nucleus Researchでアナリストを務めるセス・リッピンコット氏によると、大手グローバル企業の多くがデジタル変革プロジェクトのバックボーンとしてSAP HANAを利用しているという。ただし「こうした企業は恐らく、Hadoopなどの分散処理システムでSAP HANAのパフォーマンスを補完しているだろう」というのが同氏の見方だ。
「こうした企業はCRM(顧客関係管理)や人事管理など、重要なエンタープライズシステムのバックボーンとしてSAP HANAを利用している」とリッピンコット氏は話す。
製造業界には、SAP HANAを財務や経理のような基盤的要素の中心的な記録システムとして利用し、速度面と性能面で大きなメリットを得ている企業もある。その中には、そうした基幹業務を資材所要量計画(MRP)など別のミッションクリティカルな業務システムと同じデータベースで運用している企業もある。
リッピンコット氏によると、こうした企業は、SAP HANAの導入前ではMRPシステムの実行に数時間かかっていたという。その間、他の全てのシステムを停止することになり、他の作業は何もできない。「SAP HANAを利用することで、MRPシステムの実行にかかる時間が大幅に短くなり、その間も通常通り他の業務を続けられるようになった」と同氏は言う。
ITコンサルティング企業Deal ArchitectでCEOを務めるビニー・ミルチャンダニ氏は、「企業はSAP HANAを主にデータレイク(非構造化データを含む多様なデータを蓄積するリポジトリ)として使用している。SAP HANAはHadoopの代わりではない」と話す。「巨大なデータセットではなく、一般的なサイズのデータセットを処理する速度が重要だ」(同氏)
ミルチャンダニ氏はこう付け加える。「SAPの統合業務(ERP)パッケージ『SAP S/4HANA』のデータベースとしてSAP HANAを使う企業が目立ち始めている。これは一般的な用途となるだろう」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
事例で探る「SAP HANA」の実力
「SAP HANA」にはワークフローの改善、意思決定支援、データ統合という3つの長所がある。SAP HANAを活用するためのヒントとして、医療ソフトウェアベンダーの利用事例や、企業でのさまざまなユースケースを紹介する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
9
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー