医師の「働き方改革」にも役立つ?
オンライン診療は日本でどのくらい導入が進み、現場でどう使われているのか
「オンライン診療システム」の選択肢が充実しつつある。市場の状況と診療報酬改定の影響、クリニックの導入事例について説明する。
さまざまなベンダーが「オンライン診療システム」の市場に参入し、新サービスを提供している。調査会社シード・プランニングによると、2016年から2018年までに、国内では新しいオンライン診療システムおよびサービスが複数登場しているという。
厚生労働省が2018年に発行したガイドライン「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療とは以下の行為を指す。
遠隔医療のうち、医師-患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為
オンライン診療システムは一般に、PCやスマートフォンで動作するビデオ通話機能を搭載している。電子カルテとの連携機能や、共有した資料にマーカーを引いたり文字を書き込んだりできる画面共有機能を備えていることもある。
本稿ではオンライン診療システムの市場動向について、シード・プランニングの久保延明氏の話を基に説明する。
久保氏はオンライン診療システムについて「2017年はユーザー施設が増加傾向にあった」と説明する。その背景には2つの出来事がある。1つ目は、厚生労働省が同年7月に、禁煙治療において来院での診療を必要とせず、全ての診療行為を遠隔で完結させる完全遠隔診療を黙認する通知を発表したこと。2つ目は2018年度の診療報酬改定によって、オンライン診療が加算項目になることへの期待が集まったことによって、ベンチャーキャピタルや銀行がオンライン診療システムベンダーに積極的に出資したことだ。
オンライン診療システムの導入状況
全国の地方厚生局が受理する保険医療機関の届け出に記載されている、オンライン診療システムの導入情報を合算すると、2018年9月1日時点で保険診療にオンライン診療システムを利用している病院とクリニックは約1000件だ。
一方でオプティム「オンライン診療ポケットドクター」やメドレーの「CLINICSオンライン診療」、MICINの「クロン」といった主要オンライン診療システムのWebサイトは、自由診療での利用を含めた契約施設の総数を公表している。これらを合計した概算値で推測すると、自由診療にオンライン診療システムを利用している医療機関の数は3000件前後になる。久保氏によると、オンライン診療システムを導入している施設は、自由診療の枠組みでなされる禁煙外来や健康相談、男性型脱毛症(AGA)などを診療項目に挙げるケースが目立つようだ。
主要なオンライン診療システムのビジネスモデル
オンライン診療システムのビジネスモデルは、ベンダーが診療用のシステムを医療施設に提供して、利用料を請求する形式が一般的だ。処方箋の配送など、オプションサービスを提供するベンダーも存在する。初期費用や月額固定費用が無料のシステムもある(表)。
| システム名 (ベンダー) |
主な機能 | 課金体系 |
|---|---|---|
| オンライン診療ポケットドクター (オプティム) |
診療予約、ビデオ通話による診察、決済システム、処方箋・処方薬の配送サービス、健康情報管理、オンライン診療のコンサルテーション | 医療機関(注):月額3万円(税別) |
| CLINICSオンライン診療(メドレー) | 診療予約、オンライン問診表、ビデオ通話による診察、決済システム、ファイル共有、医療機関/患者向けサポートデスク | 医療機関(注):初期導入費用+月額5万円~(税別、医療機関の規模によって変動 |
| クロン (MICIN) |
診療予約、問診票管理、ビデオ通話による診察、決済システム、処方箋・処方薬の配送サービス | 患者:サービス利用料(診療ごと)+配送料 医療機関:患者への請求が発生した月に事務手数料4%(クレジットカードの決済手数料含む) |
注:医療機関の方針によっては患者が利用料を支払うことがある。
医師の「働き方改革」のために利用する例も
オンライン診療システムを利用している医療機関は、必要に迫られて導入するのではなく、施設のブランディングや将来の患者ニーズの変化を見据えて導入していることが少なくないという。例えばビジネス街のクリニックの場合、オンライン診療システムを利用することで患者の勤務時間帯だけでなく、退勤後の時間帯や休日でも遠隔で医療サービスを提供し、患者をつなぎ留めたい狙いがある。
医師の「働き方改革」にもオンライン診療システムが役立つ可能性がある。あるクリニックは、メッセージングサービス「LINE」を使って独自のオンライン診療システムを構築した。留学や育児休暇などの理由で医療機関に出勤できない医師がそのシステムを利用して、遠隔地から患者の健康相談に応じるサービスを提供している。
導入のハードルはいまだに高い
オンライン診療システムの導入には課題もある。保険診療をメインとする医療機関の場合、診療報酬の要件を満たしていないと導入のメリットが薄くなる点や、予約の方法など院内のオペレーションを変えなければならない点が導入の障壁となる傾向がある。
厚生労働省は2018年度の診療報酬改定で、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」をはじめとするオンライン診療関連の加算項目を新設した。ただし患者が保険診療としてオンライン診療を受けるための要件は、ベンダーや医療従事者が期待していた要件よりも厳しいものだった。例えばオンライン診察料が算定可能な患者の条件は、以下のいずれかを算定している初診以外の患者かつ、初診にかかってから6カ月以上経過した患者に限られる。連続する3カ月は算定できないという条件もある。
- 特定疾患療養管理料
- 小児科療養指導料
- てんかん指導料
- 難病外来指導管理料
- 糖尿病透析予防指導管理料
- 地域包括診療料
- 認知症地域包括診療料
- 生活習慣病管理料
そのため保険診療が中心のクリニックでは、オンライン診療システム導入を断念したり、もともとオンライン診療システムを導入していたクリニックが、より基本利用料の安いオンライン診療システムに移行したりする動きも見られたという。一方で、自由診療が中心のクリニックには診療報酬改定の影響が比較的小さいことから、オンライン診療システムの普及は引き続き拡大傾向にあるようだ。
こうした課題は確かにあるが、久保氏は「オンライン診療システムは患者にとっての利便性が大きいため、医療機関にとって無視できない存在」だと強調する。
近年ではネクストイノベーションのオンライン受療支援サービス「スマルナ」のように、提携医療機関の担当医師によるオンライン診察とアプリケーションの両方を提供する、自由診療の新しい業態も登場している。オンライン診療の事例はこれからも増えていくと考えられ、規制当局の動向も変化し続けている。医療現場の働き方を変える可能性もあり、今後の法制度の改正や、新しいオンライン診療製品・サービスの登場に注目する必要がある。
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