「エッジコンピューティング」事例集【後編】
ゲーム配信の遅延に悩んだ企業が「エッジコンピューティング」を採用した理由
ネットワーク事業者のNetwork Nextが目指したのは、インターネットを介したゲームの遅延をなくし、全プレイヤーがリアルタイムで同じ体験をできるようにすることだった。どのように実現したのか。
ゲーム開発者とネットワークの専門家が2017年に創立したネットワーク事業者、Network Nextには一つの目標がある。それはインターネットを介して提供するオンラインゲームの接続環境をより良くすることだ。これを実現するには、ネットワークの遅延との闘いが鍵になる。わずか5ミリ秒の遅れがゲームの勝敗を左右する可能性があるからだ。
インターネットの接続環境はゲームにとって最適な環境とは言えない。インターネットは、静的コンテンツやストリーミングコンテンツ向けに作られている。オンラインで複数のプレイヤーが同時に参加する「マルチプレイヤーゲーム」のようなリアルタイム性が求められるアプリケーション向けには作られていない。Network NextのCEO(最高経営責任者)を務めるグレン・フィードラー氏はその点を強調する。
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エッジコンピューティングでマルチプレイヤー体験を実現
その問題に対してNetwork Nextの出した答えが、データが発生する場所の近くでデータ処理をする「エッジコンピューティング」だった。同社が頼ったのは、Limelight Networksのエッジコンピューティングサービスだった。ゲーム用にインターネットの高速レーンを作成し、できる限り優れたマルチプレイヤー体験を提供することを目指した。
「コンピューティングの一部をプレイヤーの近くで実行するエッジコンピューティングは非常に興味深い。当社のサービスはその実現に適している」とフィードラー氏は語る。Limelight Networksはさまざまなネットワークを検討し、ゲームのプレイヤーがゲームに参加するための最善の経路を探した。Limelight Networksのエッジコンピューティングサービスを使って、それが実現した。
Network Nextの狙いは、従来のエッジコンピューティングの狙いとは少し異なる。「当社は、ゲームトラフィックの通過点としてLimelight Networksのネットワークを利用している」(フィードラー氏)。具体的には、Limelight Networksの最寄りの接続拠点(PoP:Points of Presence)、つまりエッジノードを経由する仕組みを採用している。
ゲームの配信元であるデータセンターをLimelight NetworksのPoPに直接接続し、全米全土からのゲームのトラフィックをこのPoPに誘導する。インターネットよりも高速なネットワークを利用することでネットワークの遅延が減り、ユーザーのゲーム体験が改善する。同社のバックボーンネットワーク(他事業者のネットワークと接続する基幹網)が900社以上のISP(インターネットサービスプロバイダー)のネットワークと接続していることが、こうしたネットワークの接続を実現する。
Network NextがLimelight Networksを選んだ理由は2つある。1つ目は、Limelight Networksが米国だけでなく、Network Nextが関心を持つ複数の市場にまたがって拠点を持っている点。2つ目は、Limelight Networksにラストワンマイル(最終的にユーザーのデバイスに接続するネットワーク)を提供する事業者との接続性がある点だ。「ユーザーが利用する回線がComcastであれ、BTであれ、Deutsche Telekomであれ、そのユーザーの自宅から最短距離のPoPをつなぐある種の『超高速道路』が存在する」。Limelight Networksでエッジコンピューティング分野のディレクターを務めるネイル・グレイズブルック氏は、こう強調する。
グレイズブルック氏によると、Network NextはLimelight Networksのエッジコンピューティングサービスを約10カ所に導入している。Network Nextは、プライベートクラウドかパブリッククラウドでゲーム配信用のサーバを運用しているゲーム事業者を対象に、このサービスを提供している。
「Network Nextは、マルチプレイヤーゲーム用の低遅延ストリーミングを実現する答えを見つけ出した」とグレイズブルック氏は語る。「自分がゲーマーで、Network Nextのサービスを採用したゲームを使用しているとする。最も近いNetwork Nextのノードに接続したつもりが、実はLimelight Networksのネットワーク内で実行されていたということになるだろう」(同氏)
例えば米ダラス地域のゲーマーは、ダラスのPoPに接続する。PoPはゲームの発信元サーバへのさまざまな経路を分析し、最善の経路を選択する。Limelight Networksのバックボーンネットワークを経由したり、ネットワーク事業者のネットワークを通過したり、インターネットを通過したりすることもある。「瞬時に詳細な分析を実行し、ネットワーク内の位置関係を調査することで、トラフィックを高速で通過させられる経路を決定する」(グレイズブルック氏)。この仕組みによって、全プレイヤーがゲームプレイ中に似た体験や全く同じ体験をできるマルチプレイヤーゲームが実現する。
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「エッジコンピューティング」事例集
データ分析の重要性が高まるに連れ、「エッジコンピューティング」が注目されるようになった。本連載は、企業の事例を基に、エッジコンピューティングが企業に何をもたらすのかを紹介する。
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