パブリッククラウドのセキュリティを強化する
AWSのデータ漏えいに学ぶ クラウドの契約前に必ず確認すべき4つの事項
米金融大手Capital One Financialが直面したAWSからのデータ漏えい事件は、パブリッククラウドのセキュリティについての懸念を浮き彫りにした。データを確実に保護するために、確認すべき事項を説明する。
2019年夏、金融機関Capital One Financialがクラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)に保管していた、クレジットカード申請者1億600万人分のデータが漏えいした。攻撃者は、ファイアウォールの構成ミスを悪用してデータを盗み出したと報道されている。盗まれたデータには、氏名、住所、社会保障番号が含まれていた。
今回のAWSへの攻撃は、サーバサイドリクエストフォージェリ(SSRF)の一種だと考えられる。SSRFはサーバに偽装したリクエストを送り、通常は実行を許可すべきではないコマンドを実行させる。SSRFは特に、パブリッククラウドを利用する企業の懸念材料になる。ユーザー企業には、クラウドベンダーがこうした手口を防ぐために必要な手段を講じているかどうかが分かりづらいためだ。
今回の事件の犯人はAWSの関係者だったとみられる。企業の内部関係者によって脅威がもたらされることは少なくない。企業向けセキュリティシステムには、内部関係者によるデータの持ち出しに対して、システムを守るために設計されたデータ損失防止(DLP:Data Loss Prevention)機能が含まれていることがある。
AWSのようなパブリッククラウドについて言えば、インフラ部分のセキュリティ対策を過信してはいけない。ユーザー企業側の管理者が時間を取って、運用するパブリッククラウドのセキュリティポリシーを理解することが不可欠になる。本稿は、パブリッククラウドとそのセキュリティ対策について、調査しておきたい主な領域を幾つか紹介する。
1.データの保管先
1つ目の調査事項は、データの保管先だ。2018年に施行された欧州のGDPR(一般データ保護規則)は、この項目を重要事項として扱っている。そのためか、データの保管先に関する情報は通常、簡単に入手できる。データの保管先となる国がどこかによって、ユーザー企業の権利とクラウドベンダーの責任の範囲は変わる。
2.データの暗号化
データの保管先が分かったら、そのデータを保護する仕組みを確認する。データを暗号化するとしたら、暗号鍵の所有者も確認する。例えばある有名なクラウドバックアップベンダーは、暗号鍵のデフォルトの管理方法として、ユーザーのIDとパスワードに基づくシステムを利用している。この対策自体は問題ないが、誰がその情報にアクセスできるかが問題になる。
大半のクラウドベンダーは、ユーザー企業が暗号鍵の所在を選べるようにしている。この方法だと確かに安全性は高くなるが、クラウドベンダーが鍵を所持していない場合、鍵をなくしたらデータにアクセスできなくなる。
3.データアクセス
Capital One Financialの事件では、攻撃者が自らの行為を明かすまで、Capital One Financial側はデータにアクセスされていることさえ気付かなかったとみられる。物理的な盗難とは異なり、データの盗難は発生してもすぐには分からない。しかしその影響は決して無視できない。
投資銀行Morgan Stanleyのあるアナリストによると、Capital One Financialはこの事件を解決するために約1億~5億ドルの費用を負担することになるという。大手パブリッククラウドを利用する企業は、そのクラウドベンダーの社内で、データにアクセスできる担当者についての詳しい情報を要求することが大切だ。アクセス権は特定の担当者に限られているのかどうか、それとも関連企業もデータやアカウント情報にアクセスできるのかどうかを確かめる。
4.データの廃棄と終了
クラウドに移行するメリットの一つは、ハードウェアのアップグレードをベンダーに任せられることにある。アップグレードされた後、暗号化されていない可能性の高いデータが詰まった、古いディスクはどうなるのだろうか。他の古いディスクと一緒に保管されるのだろうか、それともデータの削除を請け負うテクノロジー企業に渡されるのだろうか。
ディスクがどう処理されるにせよ、ITインフラを移行する前に、データが安全性の高い方法で消去されることを確認した方がよい。クラウドベンダーにポリシーを尋ね、データの消去についてのポリシーを確認する。
クラウドストレージのサブスクリプションを継続せず、利用を止めたときのデータの取り扱いや、削除の方法も確認しなければならない。歴史的に見て、OSの削除機能は確実性に欠ける。加えてデータを全て消去するには多くの時間がかかる。そのためクラウドサービスを解約する際に、クラウドベンダーが確実にデータを削除することを確認する。
AWSで発生したデータ漏えいによって、クラウドベンダーが用意するパブリッククラウドのセキュリティ対策だけでは、データ漏えいは防げないことが明らかになった。パブリッククラウドを使って社外で保管するデータも、オンプレミスに保管するデータと同様、正式なポリシーと手順によって保護しなければならない。クラウドベンダーは厳しい質問を受けるのを嫌がる可能性がある。しかし自社のデータを保護するためには、そうした行為が必要だ。
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