「アメリカンリビエラ」の安全に貢献
SalesforceがドローンとAIで挑むサメ襲撃対策プロジェクト「SharkEye」とは?
カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の海洋生物学者は、ドローンと「Salesforce Einstein Vision」を使って、ホホジロザメを監視するプロジェクト「SharkEye」に取り組んでいる。
Salesforce(salesforce.com)のCEO、マーク・ベニオフ氏は、University of California, Santa Barbara(UCSB:カリフォルニア大学サンタバーバラ校)に「Benioff Ocean Initiative」を設立した。これは「アメリカンリビエラ」と呼ばれる、地中海性気候とスペイン風の街並みが特徴的なサンタバーバラの海岸を、もっと安全な場所にするための取り組みを進める組織だ。
2019年6月には、Salesforceの人工知能(AI)サービス「Salesforce Einstein」のチームと、Benioff Ocean Initiativeなどが共同で取り組むプロジェクト「SharkEye」がスタートした。このプロジェクトは、UCSBの海洋生物学者がサメの移動パターンをリアルタイムかつ正確にモニタリングし、海水浴に訪れる人々の安全を守ることを目的としている。
Benioff Ocean Initiativeのディレクターで、UCSB教授のダグラス・マコーリー氏によると、SharkEyeの価値は効率性と正確さだ。「このプロジェクトは、海で起きていることを理解するのに役立っている」とマコーリー氏は説明する。
Einstein Visionとドローンの目でサメを発見
SharkEyeの主な取り組みは、AI技術をベースにしたSalesforceの画像認識ソフトウェア「Einstein Vision」とドローンを使って、海中のホホジロザメを発見することだ。ドローンが毎朝、サンタバーバラの海岸から10マイル(約16キロ)の海上を岸と平行に飛行し、動画を撮影する。Salesforceのクラウドに動画を送信し、プロジェクト用にカスタマイズしたEinstein Visionが動画を分析する。Salesforceの従業員がAIエンジンをプログラミングし、このソフトウェアがサメの種類を識別したり、海中を漂うサメのような大きさの物体を「サメではない」と判断したりできるようにしている。
動画の分析後、サンタバーバラの海岸に関わる人(救助員、サーフィンスクールのオーナー、海洋生物学者など)は、サメがいつ、どこで、何匹見つかったかといった最新情報を入手する。これによって救助員は安全に海水浴ができるかどうかを把握したり、サーフィンスクールのオーナーが当日のクラスを開講できるかどうかを判断したりできる。
この技術の活用により、サンタバーバラの海岸は2019年に数回閉鎖された。閉鎖の理由は「10~12フィート(約3~3.7メートル)のホホジロザメが見つかったからだ」と、Salesforceのリサーチ担当シニアディレクターを務めるマイケル・ジョーンズ氏は語る。
カリフォルニアではこの4年間、ホホジロザメの目撃件数が増えている。これまでは水中音響ビーコンや、コミュニティーのボランティア監視員がサメを追跡していた。SharkEyeは、監視の精度向上に貢献している。このプロジェクトのおかげでUCSBの海洋生物学者は、この海域におけるサメの生態に関する基礎データを整備できる。これも従来は不可能だったことだ。
「このプロジェクトは、コミュニティーによる監視活動にとって大きな価値がある」とマコーリー氏は語る。コミュニティーは何十年にもわたって、自主的に海を監視してきた。「われわれはこの活動に多大な力を注いできた。基礎データが整い始めたのは、非常に価値あることだ」(同氏)
SharkEyeはまだパイロット段階だ。ジョーンズ氏は2020年には、他の海域でもホホジロザメを見つけられるようにAIエンジンをテストし、調整することで、サンタバーバラ以外にもこの取り組みを展開したいと考えているという。「われわれは常に、科学技術によって効果的に対処できそうな海洋問題を探している」とマコーリー氏は語る。
画像認識のさまざまな使い方
Constellation Researchの主席アナリスト兼バイスプレジデントを務めるニコル・フランス氏は「画像の整理や分類は、企業が画像認識技術を活発に利用している分野だ」と語る。例えば企業は画像認識技術を使って、社内の画像資産を管理したり、インターネットまたはソーシャルメディアの画像を特定・分類したりすることが可能だ。特定のブランドに関するソーシャルメディアやコミュニティー活動をモニタリングすることもできる。ブランド画像の著作権侵害の検知が可能になるとの期待もある。
画像認識技術にはまだ幾つかの課題があり、大規模な利用はまだ初期段階だ。その中には、AIシステムの効果的なトレーニングや、魅力的な使い方の発見などが含まれる。SharkEyeはSalesforceにとって、Einstein Visionの機能をテスト、改良するとともに「顧客にアピールする優れた方法だ」とフランス氏は指摘する。人間をサメの襲撃から守るといった、とりわけインパクトの強い例を示すことは「画像認識技術の利用に関する創造的なアイデアを生み出すきっかけになり得る」と同氏は指摘する。
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