セブン銀行の新サービス「ATM受取」。サービスの提供に当たり、同社はクラウドを利用してシステムを構築した。2年かかるといわれた開発期間は、クラウドの導入でどのくらい短縮されたのか。
セブン銀行とその子会社のセブン・ペイメントサービスは、新しい金融サービス「ATM受取」のシステム構築に当たり、オンプレミスを前提とした従来のシステム構築方針を見直し、アプリケーション開発ツールやシステムインフラにクラウドを採用した。両社は用途に応じたクラウドの活用で、金融サービスに求められる信頼性を維持しつつ、システム構築のスピードを高めたという。どのように実現したのか、その事例を紹介する。
ATM受取は、簡単な手続きで企業から個人への送金を実現するサービスだ。個人に送金したい企業は同サービスのWebポータルにアクセスし、送金先のメールアドレスと電話番号を入力することで、送金申し込みが完了する。「企業が送金先の口座情報を管理しなくてもよいことが特徴」だと、サービスの提供を担当するセブン・ペイメントサービス代表取締役社長の和田哲士氏は説明する。ATM受取は現在、主に報酬の支払いやEコマースの返金に利用されているという。送金先の個人はコンビニエンスストア「セブン-イレブン」の店頭ATM(現金自動預け払い機)とレジを利用して、金銭を受け取ることができる。
セブン銀行とセブン・ペイメントサービスがATM受取のシステム構築にクラウドを採用したのは、システムを短期間で構築するためだ。今後サービスの規模を拡大する場合、容易にシステムを拡張できるようにすることも狙った。
要件に合わせてアプリケーションを独自開発し、オンプレミスで運用するのが、従来のセブン銀行のシステム構築方針だった。この背景には「信頼性重視」の考え方の下、実績のあるシステム構築手段を採用したいという意図があった。アプリケーションの品質確保のためには、十分なテストが不可欠だ。そのため必然的にテスト回数が多くなり、開発期間が長期にわたってしまうことが課題だった。独自開発とオンプレミスを前提とした従来の手法でATM受取のシステム構築期間を見積もったところ、2年かかることが判明した。
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