クラウドを活用したアプリケーション開発をこれから始める企業が注意すべき点とは。先行してクラウドを活用する4社の事例に見る、効果と課題を紹介する。
ビジネスにクラウドを活用するのはいまや珍しくない。かといって企業情報システムの構築手段のメインストリームになったかといえば、そうとも言えない。ガートナーの調べ(2017年5月)によれば大企業ほどクラウド活用に積極的なようだが、それでも積極的に活用しているのは20%程度とのこと。本稿では2017年11月に開催された「Gartner Symposium/ITxpo 2017」から、ガートナー ジャパンのリサーチ部門でリサーチディレクターを務める片山治利氏のセッションをレポートする。クラウドでのアプリケーション開発をこれから始める企業が注意すべき点を学んでいこう。
片山氏が本セッションで語った内容は、以下の3つだ。
「クラウドアプリケーション開発の話ではありますが、DevOpsやテスト自動化などの技術的な話は出てきません」。片山氏はセッションの冒頭でこう宣言した。実際に先行してクラウドアプリケーション開発に取り組んでいる企業の担当者と話をして「開発以前の姿勢や体制づくりの方が重要だと分かったから」だという。
まず紹介するのは、日本におけるクラウドアプリケーション開発の実施状況に関する調査結果だ。2017年5月実施のガートナー調査から、関連部分を抜粋したものだ。従業員1000人未満、1000人以上2000人未満、2000人以上と分類すると、2000人以上の規模の企業がクラウドでのアプリケーション開発に高い関心を寄せているという結果が出た。
規模の大きい企業がクラウドに関心を寄せるのは「コスト削減効果を大きく期待できるからでしょう」と片山氏は分析する。それでも既にクラウドでのアプリケーション開発を実施中と答えた2000人以上の企業は20%に満たない数だ。
クラウドに関心を寄せる企業は、クラウドアプリケーション開発に何を期待しているのか。ガートナーの調査結果によると、上位5つは下記の通り。調査はクラウドアプリケーション開発を既に実施中、一部実施中、今後実施予定と答えた企業のみを対象とした。
興味深いのは、次に示す2つのアンケート結果との関係である。実際にクラウドアプリケーション開発を実施して期待通りの効果を感じたかどうか、期待した効果を感じられなかったかどうか、という正反対の質問に対する回答をまとめたものだ。なんと上位の回答は、両者ともほぼ同じ事柄だった。そしてそれは、上で示した「クラウドアプリケーション開発に期待するもの」ともほぼ同じだった。片山氏はこれを「期待が大きかった分、うまくいって期待通りの効果を得られた企業と、そうでなかった企業に大きく分かれたのではないか」と分析する。
アプリケーションのクラウド化を進める順番についてのアンケート結果を見てみよう。調査では質問をアプリケーションの種類で分類し、
のそれぞれについて、先にクラウド化するのはどちらかを尋ねた。基幹系か周辺系か、フロントエンドかバックエンドかという2つの基準については、回答が見事に分散。一方で強い傾向を示したのは残り2つの基準だ。
社内向けか社外向けかという質問に対しては、社内向けから順にクラウド移行を進めると答えた企業が多かった。「やはり新しい技術は、まず社内向けアプリケーションでノウハウを得たいということでしょう」(片山氏)
IT部門管轄かエンドユーザー管轄かという設問では圧倒的に前者が選ばれていた。アンケート対象自体がIT部門に属する人だったため、この回答を数字通りに受け取ることはできないと片山氏は助言する。クラウドに移行するアプリケーションをどのような基準で選ぶかは「企業によるでしょう」と同氏は指摘。その上で「クラウド移行に求めるメリットを考え、なんらかの基準を設けることが必要です」と述べる。
ここでは設問に含まれていないが、新規アプリケーションか既存アプリケーションかという観点が、大きなポイントになっていることが先行企業へのインタビューから浮かび上がったことも、片山氏は付け加える。
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