大量のITリソースを用いる場合、クラウド利用はコストメリットに欠ける。だがオンプレミスだけに依存するとビジネス機会を損なう――そう判断したマツダは、リスクマネジメントできる範囲でクラウド利用を検討した。
今やそれ自体がコンピュータの塊のようになった自動車。その開発にはCAD(コンピュータ支援設計)など多くの技術が活用されている。計算量やデータ量が製造業の中でも桁違いに多いこと、商品開発にスピードが求められるようになったことから、コンピューティングリソースの柔軟な確保が課題に上がっている。そこでマツダは、従来スーパーコンピュータを大量投入してオンプレミスで行っていた演算の一部に「Amazon Web Services」(AWS)を導入し、その効果と課題について検証した。コストではオンプレミスに軍配が上がるとしながらも、今後クラウド活用を検討していくその理由からは、オンプレミスとクラウドの使い分けに関するヒントが見えた。
マツダはAWSの年次カンファレンス「AWS Summit Tokyo 2017」において、「CAEクラウドによる大規模サンプリングを活用した次世代の車両開発のための最適設計手法の検討」というセッションを実施。同社の取り組みについて発表した。CAEとはComputer Aided Engineeringの略称で、コンピュータを使って製品の設計や製造を支援することだ。セッションではユーザーと管理者の双方が登壇し、それぞれの立場からクラウド活用の可能性について語った。先に登場したのは、ユーザーサイドであるマツダの技術研究所、先進ヒューマン・ビークル研究部門の小平剛央氏だ。
小平氏は最適化を用いた車両軽量化を研究している。大規模な並列計算によるシミュレーションを駆使して、軽量で高性能な車両を開発するのが仕事だ。「シミュレーションや統計がメインなのですが、個人的にはCAEは嫌いな方です」と話す。
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