医療IT、2020年のトレンド予測【前編】
2020年に「遠隔医療」と「健康の社会的決定要因の分析ツール」に注目が集まる理由
Forrester ResearchとFrost & Sullivanの調査は、2020年の医療ITのトレンドは「遠隔医療」と「健康の社会的決定要因を分析するツール」が支持を広げると予測する。その理由は何か。
2020年、米国の医療業界では医療費の低額化が最大の関心事になるだろう。医療機関の最高情報責任者(CIO)にとって医療費の低額化とは、患者が利用しやすく、個人に最適化された安価な医療サービスを実現する遠隔医療ツールや分析ツールへの投資を増やすことを意味する。
医療機関のCIO向けに、2020年の医療ITトレンドに関する2つの調査会社の予測について解説しよう。調査会社Forrester Researchが着目するのは、医療改革と遠隔医療の増加だ。調査会社Frost & Sullivanは、「健康の社会的決定要因」(※注)を分析するツールが2020年に大きな役割を果たす可能性と、医療業界で人工知能(AI)に対する反発について予測する。前編となる本稿は、遠隔医療やデータ分析ツールなどの技術トレンドに注目する。
※注 健康の社会的決定要因(SDH:Social Determinants of Health)とは、健康状態を決定づける社会的な要素。例えば個人の所得、家族や友人などの社会的ネットワーク、自治体や職場などのコミュニティーとのつながりといった、経済状態や生活環境の良しあしを指す。
遠隔医療による診察の増加
Forrester Researchは遠隔医療が大きく進歩すると考えている。2020年は数百万件の遠隔医療サービスが新たに実施されるだろうと予想する。同社でアナリストを務め、調査レポート「Predictions 2020: Healthcare」(2020年の医療予測)の執筆者の一人であるジェフ・ベッカー氏は、遠隔医療を「享受する権利を主張しようと人々が殺到している医療サービスのうち、最も急成長する領域」と表現する。「遠隔医療の成長を後押しする要因は、現実の医療機関に訪問して診察を受ける患者数をコントロールしたいというニーズだ」と同氏は述べる。
自宅や職場など、患者にとって都合の良い場所で初診を実施し、患者が治療の必要性を適切な段階で判断できるよう支援する。そうすることで、ベッカー氏が言う「緊急治療室(ER)の過剰利用」を減らすことができる。
Forrester Researchによると、外来患者の医療費支払い申請に関する過去のデータから、外来患者の約43%が遠隔医療による診察で対処できる可能性があることが分かった。医療サービスの提供にかかるコストを減らす選択肢として遠隔医療を検討すべきだと同社は指摘する。
健康の社会的決定要因
もう一つの予測は「医療保険会社や医療機関が患者のアウトカム(治療成果)を改善することに、健康の社会的決定要因に関するデータが大きな役割を果たす」というものだ。Frost & Sullivanは、健康の社会的決定要因に関するデータを活用するために、医療機関のCIOがデータ分析ツールに注目する必要性を主張する。
「米国の医療機関と医療保険会社の約40%が、2020年末までに経済や住居の状況といった健康の社会的決定要因に関するデータを使用して、リスク評価やビジネス上の意思決定をするようになる」とFrost & Sullivanのアナリストは予測する。こうしたデータは患者の支援にも使用されるだろう。 Frost & Sullivanでアナリストを務めるカマルジット・ベエラ氏は、2020年の医療トレンド予測に関するウェビナーで「『患者のアウトカムに影響する要素の大半は、直接の治療行為以外のことだ』という理解が広まることが、データ活用の追い風になる」と話した。「患者の約57%は、金銭的不安、孤立、住宅への不安、交通の不便、食料不足に対する中~高程度のリスクを抱えている。健康の社会的決定要因に基づいて、適切なケアを必要とする患者と積極的に関わることで、患者のアウトカムを改善できるだろう」(同氏)
2025年までに、健康の社会的決定要因に関するデータが医療の質を高めるうえで不可欠になるとFrost & Sullivanは考える。医療費を最適化するためにもこのデータは重要となる。データ分析を用いて患者のアウトカムを追跡し、大規模な人数の健康を管理する「集団健康管理」(PHM:Population Health Management)のためのIT製品も注目を集めるだろう。
後編は、人工知能や法改正などのトレンドを解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
医療IT、2020年のトレンド予測
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー