「脱クラウド」はなぜ起きる?【後編】
クラウドからオンプレミスへの回帰を誘発する“コスト”以外の問題とは?
パブリッククラウドからオンプレミスにシステムを戻そうとする企業は少なくない。主な要因はコストだが、コストが全てではない。どのような問題があるのだろうか。
パブリッククラウドからオンプレミスにシステムを戻すことを検討したり、実際に実行したりしている企業がある。どのような理由や背景があるのだろうか。前編に引き続いてパブリッククラウドからオンプレミスにシステム移行する理由を解説する。前後編で紹介する5つの主な理由は以下の通りだ。
- コスト(前編で紹介)
- システムのパフォーマンス(前編で紹介)
- セキュリティとコンプライアンス
- 可用性(会員限定)
- ビジネスニーズ(会員限定)
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クラウドベンダーがオンプレミスを重視する理由
3.セキュリティとコンプライアンス
IDおよびアクセス管理(IAM)、データ暗号化、システム監視、ログ記録といったセキュリティ対策が、パブリッククラウドのリソース保護に役立つ。こうした対策で十分なセキュリティを確保し、侵害を検出して対処するためには綿密なシステム構成と細部への注意が必要になる。
パブリッククラウドのユーザーは、クラウドベンダーが提供するセキュリティサービスと各サービスの使用方法を詳しく把握しておく必要がある。設定のミスや見落としが、数え切れないほどのパブリッククラウドのリソースやサービスに影響を与える可能性があるからだ。
複数のアプリケーションをパブリッククラウドで運用してセキュリティ対策を施そうとすると、管理が複雑になり、運用管理やセキュリティ対策におけるエラーが発生しやすくなる。その結果、オンプレミスのセキュリティ対策製品の方がより理解しやすく管理しやすいと考えた企業が、パブリッククラウドからオンプレミスにシステムを戻すことを検討する場合がある。
企業はデータ保護規制が強まることによる問題にも直面している。そうした規制は、企業によるデータの保存方法や保存場所、アプリケーションやデータへのアクセス方法、システムの回復性(レジリエンシー)などを規定している。パブリッククラウドベンダーは、企業が一般データ保護規則(GDPR)やPayment Card Industry Data Security Standard(PCI DSS)といった主要な規定に準拠することを支援するサービスを提供している。しかし、そうしたサービスを利用すれば完全に規制のガイドラインを順守できることを保証するものではない。
データ保護規制が変更になり、パブリッククラウドを継続的に利用すること難しくなる可能性がある。機密データを扱うアプリケーションの運用をオンプレミスのデータセンターに移行する企業もある。システムやその運用環境として利用するインフラを手元に置いて管理できるようにするためだ。
4.可用性
クラウドベンダーはリソースの可用性を確保するため、インフラやテクノロジーに多額の資金を投じている。それにもかかわらず、ヒューマンエラーやシステム障害、ハッキング、ネットワークに関連する問題などが、クラウドサービス停止のリスクを生む。
システム停止の可能性はパブリッククラウドに限った問題ではないが、パブリッククラウドのサービスが停止することで影響を受けるシステムは数知れない。そのようなクラウドサービスの停止に対し、失ったサービス時間に応じた返金やネットワーク帯域幅の追加といったクラウドベンダーによる補償が提供されることがある。その内容はSLA(サービス品質保証契約)によって異なる。しかしクラウドサービスの停止で生じるのは単純なサービス停止時間に伴う利益の喪失ばかりではない。ユーザーは自社が提供するサービスについてのSLAに違反することになり、顧客の信頼を失う恐れがある。コンプライアンスの問題が発生する場合もあるだろう。
このような事態を経験すると、システムの運用管理に対するメンテナンス性や回復性を優先して強化したいと考える企業が出てくるのは不思議ではない。たいていの場合は、自社で運用管理するオンプレミスのデータセンターに大部分の重要なシステムを戻す選択をする。オンプレミスのデータセンターであれば自社に所属する専門の従業員を配置し、ハードウェアやソフトウェアの問題に起因するエラーに耐え得るインフラを構築することが可能だ。
5.ビジネスニーズ
企業はあるシステムに対して「もはやパブリッククラウドでの運用には適さない」と結論付ける場合がある。そのシステムの用途に変更があったり、以前ほど多くのコンピューティングリソースやスケーラビリティ(拡張性)を必要としなくなったりしたときが主な具体例だ。
ある市場からの事業撤退を決断した企業が同様の判断を下すこともある。事業撤退の結果として関連するシステムやデータが不要になるからだ。パブリッククラウドからオンプレミスに戻すことは、そうしたアプリケーションを廃棄するための第一歩となる。
財務報告の枠組みや投資計画の変更場合も、企業がパブリッククラウドからオンプレミスにシステムを戻す要因になり得る。ここではどのようにコストが発生するかがポイントだ。パブリッククラウドは概して多額の設備投資が必要ない代わりに運用コストをより多く支払わなければならない。従って企業が運用コストの方が高額になることを問題視した場合、オンプレミスへの回帰が選択肢に入る。
企業の合併や買収によってパブリッククラウドの利用に関する方針が変更になる場合もある。例えばパブリッククラウドを利用していない企業がパブリッククラウドを利用している企業を買収する状況を考えてみよう。買収される企業は通常、買収元の企業の要件に従って保有している資産を統合させる。この場合は、システムをパブリッククラウドからオンプレミスに移行することがより良い選択肢になるだろう。
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