企業ITにとって欠かせない存在になったクラウド。運用管理の効率化などさまざまな利点があるが、使い方を間違えると「オンプレミスの方が良かった」という結果になる。そこで生まれる選択肢が「脱クラウド」だ。
2006年にGoogleの当時のCEO(最高経営責任者)だったエリック・シュミット氏が「クラウド」という言葉を使用してから、13年以上が経過した2020年。現在、クラウドは国内の企業ITにおいて欠かせない存在になった。とはいえクラウドに対する姿勢や活用度合いは企業ごとに異なる。クラウドを最優先で検討する「クラウドファースト」を掲げて、可能な限りITシステムをクラウドで稼働させることを目指す企業もあれば、クラウドに対していまだ慎重な姿勢を崩さず、自社でインフラを保有するオンプレミスでのシステム運用を継続している企業もある。
ITシステムの最新化に当たってはクラウドがその切り札になると考えられがちだが、クラウドへの移行が常に正しいわけではない。「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」(Azure)のようなパブリッククラウドでいち早くITシステムを構築し、稼働させた企業の中には、パブリッククラウドで何らかの課題を抱え、システムをオンプレミスへ回帰させた例がある。Dropboxは自社のオンラインファイル同期サービスのインフラをAWSからオンプレミスに回帰。国内でもNTTぷららが自社の映像配信サービス「ひかりTV」のインフラをAzureからオンプレミスに切り替えた。
本連載は、パブリッククラウドからオンプレミスに回帰するこうした動きを「脱クラウド」(英語では「Cloud Repatriation」)と呼び、その動きを探る。併せて今後のインフラ選定を進める上で重要になるポイントを考察する。
脱クラウドの動きが目立つのは、国内よりもクラウド化の動きが早かった米国だ。日本ヒューレット・パッカードで企業のITシステム構築・運用に関するコンサルティングを担当する挾間 崇氏によると、国内企業がクラウドファーストを意識し始めたころには、米国の企業は既にクラウド移行の実行フェーズに入っていた。「米国におけるクラウド移行計画の進展は、国内よりも数年先に進んでいる」と挾間氏は話す。
国内ではクラウド移行計画の進展は企業ごとに異なり、既にクラウドに移行した企業もあれば、いま計画段階の企業もある。ただし全体的に見て、国内でクラウド移行が本格化するのはこれからだ。日本オラクルでクラウド事業を統括する佐藤裕之氏は「国内企業の基幹系システムの大半は、まだオンプレミスで稼働している」と話す。
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