Kubernetesストレージの基礎【前編】
Kubernetesによるコンテナストレージの管理
コンテナのストレージもKubernetesで管理することが一般化してきた。まずはKubernetesにおけるコンテナストレージの仕組みを基礎から解説する。
コンテナアプリケーションは、「Kubernetes」などのコンテナオーケストレーションツールと併用するのが大きなトレンドになっている。
コンテナアプリケーションはアプリケーション仮想化の一形態だ。コンテナは「従来の」仮想マシン(VM)と考え方は同じだが、コンテナの内部で独自の簡易版OSを稼働させる代わりにサーバOSを利用する。最も一般的なコンテナは「Docker」だが、他のコンテナも存在する。
コンテナにはアプリケーションの実行に必要なものが全て含まれる。そのため作成、稼働、複製、拡張を非常に迅速に行うことが可能で、その廃棄も簡単だ。こうしたことから、コンテナはニーズが突然増加するワークロードに適している。特にWebのワークロードがこれに当てはまる。こうしたワークロードに迅速に対応することを主な目的にするのが、Kubernetesの自動化機能だ。
コンテナは、本質的にステートレスだ。本稿ではコンテナのストレージの仕組みを解説する。ただし、本稿の大半で取り上げるのはKubernetesの永続ストレージについてだ。それは、Kubernetesがコンテナオーケストレーションのデフォルトプラットフォームになっているためだ。
Kubernetesが扱うのは作成、管理、自動化、負荷分散、コンテナのハードウェア(ストレージなど)との関係といった機能だ。こうしたコンテナはKubernetesで言うところのポッド(Pod)に整理される。本稿では、1つ以上のコンテナの集合体をポッドと呼ぶ。
本質的に一時的、必要に応じて永続的
Kubernetesのストレージは、原則として一時的(非永続的)なものだ。ストレージはコンテナに書き込まれ、ホストマシンの一時スクラッチ領域から作成される。ストレージはKubernetesポッドの有効期間内のみ存在する。ストレージはKubernetesの「emptyDir」コマンドで作成される。移植可能だが、永続的なものではない。
Kubernetesは、永続ストレージもサポートする。オンプレミスやクラウドの広範な形式の永続ストレージに対応可能だ。ブロック、ファイル、オブジェクトストレージや、クラウドプロバイダーが提供するさまざまなクラスのストレージにも対応する。ストレージをデータベースなどのデータサービスにすることも可能だ。いずれにせよ、最終的にはどこかに存在する物理ストレージを利用することになる。
ポッドの内部からストレージを直接参照することもできる。ただし、コンテナやポッドの移植性に違反するためこの参照方式は推奨されていない。代わりに、ストレージとアプリケーションの要件を定義するためにPV(PersistentVolume)とPVC(PersistentVolumeClaim)を使用する。
PVとPVCは、ストレージの機能を実装から切り離し、ブロック、ファイル、オブジェクトストレージをポッドから移植可能な方法で使えるようにする。また、ユーザー/アプリケーションニーズとストレージ構成を切り離すのにも役立つ。
PVは、管理者がストレージとそのパフォーマンスや容量といったパラメーターを定義する場所になる。つまり、管理者はPVを使って永続ストレージボリュームを定義する。パフォーマンス/コストのクラス、容量、使用するボリュームプラグイン、パス、IPアドレス、ユーザー名とパスワード、ボリューム使用後の処理など、PVにはそのストレージに関する詳細が含まれる。PVはKubernetesのクラスタ間では移植できない。
一方、PVCはユーザーや開発者が自身のアプリケーションで必要なストレージを記述するために使われる。PVCは移植可能で、アプリケーションと共に移動する。Kubernetesは定義済みのPVから利用可能なストレージを見つけ出し、そのPVをPVCにバインドする。
PVCはポッドのYAMLで定義されるため、その指定はポッドと共に移動する。PVCは、例えば容量とストレージの層を指定するだけのごくシンプルなものでも構わない。
Kubernetesには、1つのPVCを共有するポッドの複数のクローンを作成してプロビジョニングするデプロイメントという方法がある。だが、これはクラッシュなどの問題を引き起こす恐れがある。その代替手段となるのが、ポッド間でPVCを複製するステートフルセットだ。
PVをグループ化するストレージクラス
PVのコレクションは1つのストレージクラスにグループ化できる。ストレージクラスはKubernetesのAPIで、ストレージのパラメーターを設定する。これは動的なプロビジョニング手法で、新しいボリュームのオンデマンド作成を可能にする。
ストレージクラスは、使用するボリュームプラグイン、(クラウドなどの)外部プロバイダー、CSI(Container Storage Interface)ドライバの名前を指定する。CSIは、コンテナからクラウドやストレージサプライヤーの製品の操作を可能にするドライバだ。
よく使われるのが、1つのストレージクラスを「デフォルト」としてマークする方法だ。これにより、PVCを使ってPVを呼び出す必要がなくなる。つまり、ユーザーがPVCでストレージクラスを指定しなくてもそのPVが呼び出される。
ストレージクラスは、コンテナアプリケーションがアクセスする必要が生じるかもしれない古いデータについても作成できる。
Kubernetesでストレージを扱うその他の方法
Kubernetesでストレージを作成する方法は他にもある。だが、そうした方法は移植性の欠如などの問題を伴う。
例えば、ホストパスがある。ホストパスはホストマシンのディレクトリを公開する。この方法は明らかに移植性がない。ポッドやコンテナが移動するとそのパスにはアクセスできなくなる。大半のポッドデプロイメントでは望まれないだろう。
ブロック、ファイル、オブジェクトのいずれかのストレージを使ってローカル永続ストレージを作成することもできる。例えばこの手法を使ってKubernetesの上位に分散ストレージシステムを構築することは可能だ。実際、Rookはこの手法を用いて仮想コンテナストレージプールを作成する。
後編(Computer Weekly日本語版 5月7日号掲載予定)では、Rookに着目してそのメリット/デメリットなどを解説する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly日本語版
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー