新人IT担当者でも分かる「統合エンドポイント管理」(UEM)【第3回】
間違った「UEM」製品を選ばないための見極めのヒント
「UEM」製品は多様なエンドポイントを一元管理できるが、全て同レベルで管理できる機能を持った製品はない。導入後に「機能が多過ぎる」「機能が足りない」と後悔しないために、見極めるべきポイントは。
PCやタブレットなどのエンドポイントを一元管理する「統合エンドポイント管理」(UEM)製品の選定を進める前に、まずすべきことがある。UEM製品の管理対象となるエンドポイントの用途と、エンドポイントを管理する目的の整理だ。
エンドポイントの業務用途は、以下のようなものが挙げられる。
- メールの送受信
- イントラネットへの接続
- グループウェアの利用
- 受発注など社内システムの利用
- 「Microsoft Office」による文書作成
- 社内外の相手へのプレゼンテーション
業務のために利用するエンドポイントは、会社からの貸与の場合もあれば、私物の場合もある。どちらにしてもエンドポイントを管理する目的は次の通りだ。
- エンドポイントで利用可能なアプリケーションを会社指定のものに限定したい(それ以外のアプリケーションを使わせたくない)
- エンドポイントをセキュアに社内ネットワークに接続させたい
- エンドポイントの用途を業務利用に限定したい(それ以外の目的に使わせたくない)
- エンドポイントが紛失や盗難に遭ったときに、情報漏えいを防ぎたい
これらの目的を踏まえ、UEM製品をどのように選定すればよいだろうか。
「UEM製品を入れない」が正解の場合も まずは管理方針を策定すべし
「エンドポイントをどのように管理してよいか分からない」と悩むIT管理者は少なくない。管理方針を決めないままUEM製品の機能を調査し、導入したUEM製品の機能に合わせてエンドポイントを管理している企業もある。中には自社の状況を踏まえることなく、他社の事例を聞いただけで、自社に同じUEM製品を導入する企業も少なからずある。
このようなアプローチもUEM製品選定の一つの方法ではあるが、最適な方法とは言えない。使い切れない機能を満載したUEM製品を選んだり、逆に必要な機能が不足しているUEM製品を選んでしまったりする可能性があるからだ。まずは自社の用途に合わせて、エンドポイントの管理方針を明確にした上で、UEM製品を選ぶことが基本的なアプローチとなる。管理方針によっては、UEM製品を導入しないという選択肢もあり得る。
管理方針の策定方法1:BYODを導入する場合
管理方針を定めるに当たり、まず「BYOD」(私物デバイスの業務利用)を取り入れるかどうか決める必要がある。BYODはエンドユーザーにとっては複数のエンドポイントを持つ必要がなく、企業にとってはコストが削減できるメリットがある。ただし企業がエンドポイントを限定できないため、あらゆる機種を想定した管理が必要になり、管理負荷が膨大になる課題もある。従ってBYODの導入に当たっては、エンドポイント調達コストの削減効果と管理コストを比較し、慎重に決定する必要がある。
BYODではなくても、各部門に自由にエンドポイントを購入する権限を与えるのであれば、同様の考慮が必要だ。その場合は各部門が購入して利用するエンドポイントをどこまで管理するかを考える必要がある。具体的には、
- 位置情報を把握してよいかどうか
- 紛失や盗難に遭った場合、どこまでデータを削除してよいか
などがある。詳細なレベルまで記載した規約を策定し、エンドユーザーに同意してもらう必要もある。
管理方針の策定方法2:会社がエンドポイントを貸与する場合
BYODを認めないならば、エンドポイントを会社が貸与することになる。そうすれば機種を限定でき、管理負荷も軽減できる。ただしその場合でも、どこまで厳格に管理するかを決める必要がある。政治学で言う「大きな政府」と「小さな政府」のどちらを目指すのかという議論と同様だ。
当然ながら管理の対象範囲とコストは比例するため、UEM製品にかけられるコストを検討しながら管理する対象を決めることになる。管理にかけるコストは必要最小限にとどめることが理想的だ。
UEM製品のような管理製品を導入しなくてもよい場合もある。そのため本当にUEM製品の機能が必要なのかどうかを検討することが重要だ。例えばエンドポイントに重要なデータを残すのかどうか、従業員の稼働状況を人事評価に反映するのかどうか、といった点はUEM製品の必要性を判断する上で検討ポイントの一つになる。そのような線引きをせず、できるだけ細かいレベルの管理を目指すと、膨大なコストがかかってしまう。
UEM製品選定は「管理レベル」で考える
BYODを導入する場合、または部門に機種選択の自由を与える場合、なるべく多種類のエンドポイントを管理できるUEM製品を選ぶ必要がある。第2回「統合エンドポイント管理(UEM)10製品の『得意・不得意』な機能」で紹介したように、現在販売されている全てのエンドポイントを同一レベルで管理できるUEM製品は存在しないからだ。
現実的には前述の「管理方針の策定」に示した方針に基づく管理レベル(管理対象や厳格さ)を決め、それに応じて各エンドポイントで最大公約数となる機能を持つUEM製品を選ぶことになる。その最大公約数が自社の管理レベルに合うUEM製品がないのであれば、管理レベルを見直す必要があるだろう。
BYODを導入しない場合、またはIT部門が機種選定して配布する場合ならば、管理対象の機種をある程度限定できる。その場合は自社で使用する機種を管理でき、かつ自社の管理レベルに合致するUEM製品を選べばよい。
いずれの場合でも、候補となるUEM製品が複数ある場合は、以下の観点で選定する。
- 価格
- ベンダーや代理店のサポート体制
- 新しいOSのバージョンの提供開始から、そのUEM製品が管理対象にするまでの期間
サポート体制やOS新バージョン対応のスピードは、カタログには記載されていなかったり、明確に説明されていなかったりするため、選定時にはベンダーから十分に情報を得る必要がある。UEMベンダーはさまざまなOSのアップデートに対処しなければならない上、開発スタッフや開発資金などのリソースが豊富ではないベンダーも珍しくない。そのためサポートが不十分だったり、新バージョン対応のアップデートが遅かったりする場合がある。価格や機能だけで選ぶと、運用フェーズに入った後で苦労することになるため、十分吟味すべきだ。
本稿を含めて3回にわたりUEMの概要を説明した。UEM製品は、不要ならばそれに越したことはない。もし社内で単一の機種だけを使うのならば、その機種に特化した管理製品を選べばよいからだ。そうすれば管理コストも少なくて済むだろう。
「iOS」や「Android」を搭載したモバイルデバイスの業務利用は2010年ごろから広がってきた。企業によっては「Windows」搭載PCでも可能な業務を、あえて「iPad」などのモバイルデバイスでこなしているケースもある。エンドポイントを入れ替える際は、あらためて自社の業務に必要なエンドポイントを検討し、必要に応じて機種を絞ることも重要だろう。
この連載について
「統合エンドポイント管理」(UEM)という名称が一般的になりつつあるが、UEMについて正確に説明できる人はそう多くない。このシリーズは新人のIT担当者に向けて、UEMの定義から成り立ち、主要ベンダーとその特徴、選定方法などを複数回に分けて解説する。
田北幸治(たきた・こうじ)
アイ・ビー・シー 代表取締役社長
大学院修了後、外資系コンピュータベンダーで金融機関向けシステムエンジニア(SE)、営業を経験。その後IT企業を立ち上げ、ソフトウェア事業を展開。外資系ソフトウェア企業の日本代表を経て、2015年にエンドポイントセキュリティやエンタープライズモビリティー管理(EMM)に特化した製品を扱うアイ・ビー・シーを立ち上げる。
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新人IT担当者でも分かる「統合エンドポイント管理」(UEM)
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