ネットワークにつながる医療機器は多様化
セキュリティ投資を病院の経営陣に納得させる“無視してはいけない3要素”
医療機関の情報セキュリティインシデントは、患者の生死に直結する問題だ。米国の医療機関CIOは、経営陣と情報セキュリティ予算の交渉をするには3つの要素が不可欠だと強調する。それは何なのか。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の危機に対処するために、医療機関のCIO(最高情報責任者)が重視している幾つかの技術領域がある。医療機関のCIOは、リモートワークを可能にすることだけでなく、遠隔医療の推進と患者の遠隔モニタリングに関する仕組みを立ち上げることを目標にしている。その実現のため、情報セキュリティ戦略がこれまで以上に重要になっている。
医療機関の情報セキュリティは、CIOやCISO(最高情報セキュリティ責任者)にとって困難な仕事となる場合がある。CIOは組織内のセキュリティ意識を高め、財務管理部門に対してテクノロジーへの投資を促し、説得しなければならない。
本稿は医療機関Mt. San Rafael HospitalのCIOであるマイケル・アークレタ氏が、経営陣に情報セキュリティの重要性を説き同意を得る方法について紹介する。アークレタ氏は「医療業界は、自らを改革する必要がある」と強調する。
―― 医療機関にとって、情報セキュリティとはどのような意味を持つのでしょうか。
アークレタ氏 データ保護だけでなく、患者の生死に関わる課題だと考えている。問題なのは、多くの医療機関では経営陣が情報セキュリティについて理解していないため、IT部門が情報セキュリティの投資に同意を得ることに苦労している点だ。
―― 情報セキュリティへの投資について、経営陣の同意を得る方法は何でしょうか。
経営陣の理解を得る3つの視点
アークレタ氏 同意を得るために、財務、運用、評判の3つを重視してきた。これらは経営陣が理解できる重要な要素だ。情報セキュリティの違反が発生した場合に照らして考えると、
- 財政的観点からこの組織がどういう影響を受けるか
- 運用上の観点からこの組織はどうなるのか
- 社会的評判の観点から何が起こるか
を伝えることになる。これらは議論を始めるための重要な要素でもある。IT部門が実装し導入している特定ツールのメリットを示すために、投資収益率を強調することも重要だ。
―― どのような情報セキュリティ対策ツールを使用していますか。
アークレタ氏 情報セキュリティ意識を向上させるためにトレーニングプログラムを開発することに重点を置いている。情報セキュリティに関する理解度の向上と、組織文化の変革を支援するチームの構築のためだ。医療機関を標的としたランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃の大多数はフィッシングメールをきっかけにしており、基本的に従業員が標的にされていることが背景にある。
人工知能(AI)技術と予測分析も利用している。攻撃が発生する前に予測するために、LAN内の特定の異常状況に注目している。LANにつながる医療機器やモノのインターネット(IoT)デバイスを管理するためには、Cyleraの可視化ツールを利用している。施設内の情報セキュリティリスクを確実に減らすための計画を立てるのに役立っている。医療機器の可視性はセキュリティ面で大きな問題になっているためだ。ID管理、シングルサインオン、2要素認証などの技術も取り入れている。
―― 医療業界における情報セキュリティの未来はどうなるでしょうか。
アークレタ氏 医療業界は自らを改革する必要がある。Google、Apple、Amazon.comは、世界規模で医療分野に積極的なアプローチをしている。医療業界には大きな試行錯誤が必要だ。例えば「iPhone」について見てみると、セキュリティに不可欠な要素が備わった結果、顔認識機能が実現し、セキュリティ機能は改善され続けている。
医療の観点から、特に入院してくる患者の管理に対して、こうした技術をなぜ利用できないのだろうか。こうした技術の導入によって情報セキュリティ違反は大幅に減らせるだろう。繰り返しになるが、医療業界はITに関して大きく遅れている。革新を続け、既成概念にとらわれずに考える必要がある。
情報セキュリティチームは常に活動を維持する必要がある。財務、運用、評判の観点から経営陣の理解を得ること、情報セキュリティを中心に構築した社内文化と、その結果得られるものについて十分に理解しなければならない。
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