医療機器のセキュリティ対策の要点を解説
医療IoT「IoMT」のセキュリティリスク 患者の命をサイバー攻撃から守るには?
医療機器とソフトウェアをインターネットで接続する、医療におけるモノのインターネット「IoMT」。そのリスクと、セキュリティ対策で検討すべき事項とは。
医療におけるモノのインターネット「IoMT」(Internet of Medical Things)の市場が急速に広がっている。IoMTは、患者のバイタルサイン(生命兆候)を監視する患者モニターやMRI(磁気共鳴画像法)機器、輸液ポンプ、人工呼吸器など医療に利用する機器を、インターネットでアプリケーションにつなぐことを指す概念だ。
医療の品質と効率を高めるために、医療機器をインターネットに接続する動きが広がりつつある。調査会社Allied Market Researchの調査によると、IoMTの市場規模は2021年までに世界全体で1368億ドルに達する見込みだという。
IoMTの普及は、治療の質の改善に役立つ可能性がある。一方で院内LANを介して医療機器と通信できるようになることから、サイバー攻撃に対する新たな脆弱(ぜいじゃく)性を生み出す原因になり得る。今や病院は、攻撃者の格好のターゲットになっている。患者の機密データと引き換えに多額の金銭を要求できることや、ランサムウェア(身代金要求型マルウェア)攻撃の効果が実証されつつあるのがその理由だ。
IoMTで高まるセキュリティリスク
医療機器には何重もの保護が欠かせない。攻撃が原因でこれらの機器が正常に機能しなくなれば、患者の命が危険にさらされる恐れがある。
例えば無線LANを通じて電子カルテなどの院内システムと連携し、自動的に薬剤を選択して投与できる「スマート輸液ポンプ」がある。攻撃者がこのスマート輸液ポンプに手を加えたなら、投薬量を不正に変更されて悲惨な結果を招きかねない。患者のベッドに埋め込まれたセンサーの測定値の転送を、攻撃者が妨害するケースも考えられる。
医療機器をインターネットに接続するときは、攻撃が起きても患者の治療を続けられるシステムを構築し、マルウェアや悪意のある活動によって通常の動作が妨げられないようにすることが不可欠だ。
医療機器をインターネットに接続するときに検討すべきこと
医療機器のセキュリティを確保するには、あらゆる臨床ワークフローでの各機器の役割を把握することが欠かせない。サイバー攻撃が患者の安全に及ぼす影響を正確に見積もる必要もある。
セキュリティの専門家は、メールサーバや各種データベース、ノートPCなどのモバイルデバイスを保護することには慣れている。ただし医療機器のセキュリティや機器の仕組みについて、理解のある専門家は多くない。医療機器の設置場所や医療ワークフロー、臨床プロセスにおける各機器の役割を把握することは、非常に重要だ。病院でセキュリティ専門家を雇用するときは、こうした項目について理解しているかどうか確認した方がよい。
各機器の情報漏えいの可能性や、どこに危険性が潜んでいるかを分析する必要がある。例えばPACS(医用画像管理システム)ではプライバシーが優先される一方で、輸液ポンプでは患者の安全が優先される。それぞれの機器に潜む危険性を特定し、早急な対処を必要とする機器から対策する。
個別の病院ごとに、どの機器が重要かを考慮することも必要になる。例えば地域の病院にMRI機器が1台しかなく、それだけで地域全体にサービスを提供しているとする。一方で超音波検査機器は複数台あり、1台が攻撃されても他の機器を使用できる場合、超音波検査機器よりもMRI機器の方が厳重な管理を求められるだろう。
機器同士の接続関係を全て理解することも求められる。これにはゲートウェイやナースコールシステム、プリンタが含まれる。サーバが攻撃されたときに影響を受ける他のITインフラや医療機器の数を把握し、患者の安全を確保できるように対策することが大切だ。
治療の効率を高めるために、インターネットに接続するスマート医療機器は普及していくだろう。IoMTのセキュリティを確保するには、汎用(はんよう)IoTのセキュリティ対策を用いるだけでは不十分だ。患者の安全を確保して機密データを保護するために、セキュリティ担当者は医療ワークフローにおける機器の役割や、医療機器の通信環境を考慮して、必要なセキュリティ対策を検討する必要がある。
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