セキュリティ研究機関が実証
3Dプリンタで作る“偽の指紋”が認証を突破 指紋認証は本当に安全か
セキュリティ研究機関が、データを基に3Dプリンタで再現した指紋によって、指紋認証を突破できる可能性を示した。この事実が意味することとは。
指紋認証は重要人物にとって、あるいは重要データを保存したデバイスにとって有効とは言い切れないことが、Cisco Systemsのセキュリティ研究機関Cisco Talosの研究で判明した。これはCisco Talosが2020年4月8日に公開したブログ記事「Fingerprint cloning: Myth or reality?」(指紋クローン作製:神話か現実か?)で発表したものだ。
「偽の指紋で認証突破」のインパクト
研究者のポール・ラスカグネレス氏とビター・ベントゥラ氏は、ブログ記事内で「スマートフォンとコンピュータの指紋スキャナは3D(3次元)プリンタで破ることができる」と結論付けた。両氏は悪名高いギャングであるアル・カポネ氏をはじめ実在の人物の指紋を収集し、3Dプリンタでその指紋を型取った模型を作成した。複数のデバイスにおける各20回の試行のうち、この“偽造指紋”を使って指紋認証センサーを少なくとも1回突破できた確率は、平均約80%だったという。
「最近の生体情報の流出、3Dプリント技術の進歩、指紋認証の大量普及を踏まえ、指紋認証が本当に安全かどうか、偽造指紋の作成がどれほど難しいかを調べたかった」とベントゥラ氏は話す。両氏は3Dアーティストとしてのラスカグネレス氏の手腕を利用して、さまざまなベンダーやモデルのデバイスで実験し、実世界を想定した攻撃プロセスを作成した。
この実験の目標は主に2つある。1つ目はできる限り実世界の体験に近づけること、2つ目は検証プロセスを公開し、低予算で実現するのがいかに難しいかを示すことだ。両氏は「国家が支援する攻撃者集団がかけられる予算」を想定し、予算に制限を設けた。「この予算で実験をするのには時間がかかった」とラスカグネレス氏は振り返る。資金豊富な攻撃者集団であれば、医療機器として利用されるような、より高度かつ高価な3Dプリンタを利用できる。「予算が増えればプロセスを改善でき、精度も高まるだろう」(同氏)
この研究で利用した方法では、「Windows 10」の生体認証機能「Windows Hello」の指紋認証を突破できなかったという。指紋認証は指紋の複数の特徴点について類似度を比較する。「Windows Helloが必要とする特徴点は、他の指紋認証よりも多いと考えられる」とラスカグネレス氏は説明する。ブログ記事はAppleにも言及している。「ほとんどのセンサーはサードパーティーが開発している一方、Appleは自社開発であるため、この点は有利だと言える」と見解を示す。
指紋偽装のハードルは下がっている
生体認証の有効性に研究者が疑問を投げ掛けたのは今回が初めてではない。例えば2018年にはニューヨーク大学タンドン校工学部(New York University Tandon School of Engineering)とミシガン州立大学(Michigan State University)が「DeepMasterPrints」を開発した。これはAI(人工知能)技術で生成した偽の指紋画像群だ。
攻撃者はDeepMasterPrintsのような高レベルのAI技術を利用した攻撃ではなく、低レベルで安価な3Dプリント技術を利用した攻撃が可能になったと言える。「3Dプリント技術によって、指紋偽装のハードルが下がった。だがそれだけでなく、適切な資金とリソースがあれば、大規模な指紋偽装が可能になったことも事実だ」。両氏はブログ記事にそう記している。
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