今のAI技術はあくまでも「診断支援」
画像診断に「AI」が役立つ理由と、それでも“第2の目”にとどまる理由
画像診断の領域では、人工知能(AI)技術が従来の複雑なタスクを軽減したり、診断精度を高めたりとさまざまな価値を生み出している。一方でAI技術にはいまだ解決困難な課題が残っている。それは何か。
1895年にエックス線が発見されてから、今日の画像診断ツールに至るまで、技術の進化は医療分野に大きな役割を果たしてきた。一般消費者(患者)の信頼が高まるにつれて、医療従事者は医療の質を高めるための技術に目を向けるようになった。人工知能(AI)技術を利用したアシスタント技術は「第2の目」として機能し、医療従事者のさまざまな作業と複雑なタスクを支援する。これらの技術のおかげで改善が進む重要な領域の一つは「画像診断」だ。
AI技術は画像診断にどう役立つか
あらゆる種類の画像診断を支援するために、AI技術がさまざまな方法で利用されている。現在のAI技術の代表的な用途は、医用画像解析の支援だ。エックス線撮影装置、超音波診断装置、MRI(磁気共鳴画像法)装置、PET(ポジトロン放出断層撮影)装置、CT(コンピュータ断層撮影)装置など、あらゆる撮影装置の画像が対象になる。
最近までは医療従事者自身が全ての医用画像を分類して解析する必要があったが、これには時間がかかり、ミスが発生しやすいという問題があった。このタスクを支援するために、医用画像解析向けのAI技術は、画像をはじめとするデータを選別し、骨折や腫瘍などの潜在的な問題について初期診断を下せるように訓練されている。人と同等の診断精度を獲得するために、AIエンジンに医用画像を読み取らせて訓練するプロセスは、膨大な量の教師データで特例領域向けに事前訓練されたAIエンジンを転用する「転移学習」のおかげで、より迅速かつ簡単に利用でき、データも利用しやすくなっている。
医療機関がAI技術を利用し始めるには、最初にある程度の量のデータを用意する必要がある。次に「教師あり学習」のアプローチでは、解剖学的なラベル情報を付けた正常な人体の医用画像をAIエンジンに提示する。さらにAIエンジンには、がん細胞、心臓病、骨折、裂傷など、医師が画像診断で見つけた病変画像を複数読み込ませる。異常所見を含む画像を複数提示することにより、コンピュータはさまざまな視野角度からそれぞれの病変画像がどのように見えるかを理解する。この学習が完了すると、この医用画像解析AIシステムは、単一の狭い識別範囲の認識タスクを実行できるようになる。
圧倒的な量の医用画像データを医療従事者が効率的に活用できるようにするには、技術的な支援が必要だ。AI技術はこのギャップを埋めるのに役立っており、現在さまざまな医用画像のニーズに合わせて開発され利用されている。例えばAI技術は、脳の神経学的な画像診断を支援している。診療放射線技師が最適なポジショニング(撮影中の体位や位置取りの設定)を決め、放射線量を減らしつつ画像の精度を高めるのにも役立つ。撮影後にキャプチャーした画像の画質を改善したり、キャプチャープロセスや環境によって発生するアーチファクト(偽像。画像の乱れやゆがみのこと)を除去・低減したりして、画像を読みやすくし、画像の解析と診断を支援する。
医用画像解析AIシステムは、早期乳がん診断にも貢献している。英国の医科大学Imperial College Londonは、Googleの医学研究機関「Google Health」と協力して、乳房専用のエックス線検査「マンモグラフィ」を受けた女性の画像を約2万9千人分利用して、乳がん検診AIシステムを訓練した。一定期間の訓練の後、乳がんAI検診システムは、ほぼ全ての症例について人の専門家よりも高い診断精度を示した。
現在、英国の国営医療サービスNational Health Service(NHS)は、2人の放射線科医がそれぞれマンモグラフィの画像を診断する「ダブルリーディングシステム」を採用することをルールとして定めており、2人が同じ診断を下すかどうかで診断精度を裏付けている。医用画像解析AIシステムによる診断結果は、医師2人のダブルリーディングシステムの精度と同等であり、単一の医師による診断よりも優れていることを立証した。
このように医用画像解析AIシステムは有望でありながら、現在は補助的なインテリジェンスツール、あるいは「第2の目」としての利用にとどまっている。少なくとも米国では、FDA(米国食品医薬品局)が医用画像解析AIシステムを使って医学的な診断行為をすることを承認していないためだ。
画像診断におけるAI技術のリスクと課題
AI技術が画像診断分野で重要な役割を果たせるさまざまな可能性はあるものの、潜在的なリスク、課題、懸念もある。多くの人が指摘する明らかな懸念の一つは、AIエンジンによる誤診の可能性だ。誤診されるのが少数の人だけだとしてもデメリットは深刻で、潜在的に致命的な結果をもたらす可能性もある。当面の間は、医用画像の読み取りプロセスの一部に人を介在させる必要がある。医用画像の判定や診断に必要な医師の数を減らせるようになるのは当分先のことだ。
もう一つの課題は信頼性だ。AI技術はまだ新しい技術であり、特定のアルゴリズムには説明能力がない。AIエンジンが画像を誤診した場合、なぜその結論に至ったのか説明が求められるが、現在はこの説明がいつも可能とは限らない。アルゴリズムの開発プロセスに医師をはじめとする医療従事者、管理者、患者の協力を取り入れ、AI技術でできることと、できないことは何かをメンバーに教育することで、うまくいけば信頼関係を構築できる可能性がある。医用画像処理においてAIエンジンが高い成功率を導けるようになれば、信頼感の醸成に役立つだろう。
現時点でAI技術のリスク、課題、懸念を低減する最善の方法は、人を介在させることだ。画像診断におけるAI技術は今のところ、医師と連携し、医師が発見したものと発見しなかったものの検証を支援する補助的なインテリジェンスツールとしての活用にとどまっている。画像診断に関して、既にAI技術は大きな可能性を立証した。不可欠なツールとして一般的に利用されるようになるまでにはさらなる改良が必要だが、いずれそうなるだろう。
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