「真の自律型企業」の姿とは【前編】
医薬品企業が次世代RPA「IPA」を導入 その理由と効果とは?
ドイツの化学・医薬品企業Merckの医薬営業部門は、ビジネスプロセスの自動化を実現するために「インテリジェントプロセスオートメーション」(IPA)を導入した。IPAがもたらす価値は何か。
企業の間でビジネスプロセスの自動化を進める動きが広がっている。自動化製品は「インテリジェントプロセスオートメーション」(IPA)によって従来よりもさらなる進化を遂げている。
Merckの医薬営業部門が「IPA」を導入した理由
「ロボティックプロセスオートメーション」(RPA)は機械的な作業を自動化し、効率を高め、作業のミスを減らす。ただしRPAの適用範囲はかなり限られている。「コグニティブオートメーション」(CA)とも呼ばれるIPAは、ビジネスプロセスを自動化するだけでなく、ビジネスプロセスに対して人の思考のような「インテリジェンス」を加える。つまり機械学習をはじめとする人工知能(AI)技術を利用して、ビジネスプロセスをシステムが学習し、理解できるようにする。ビジネスプロセスの理解を終えると、IPAシステムはリアルタイムで洞察を提供し、取るべき行動を提案する。
「判断を下さなければならない規模、複雑さ、頻度に応じて、自社のビジネスモデルとそれを支えるシステムを根本的に考え直す必要に迫られている」。そう語るのは、AIベンダーAera Technologyの社長兼CEOであるフレドリック・ラルヨ氏だ。ラルヨ氏は「コンピュータや、データを扱うシステムの支援を受けて人が作業をする時代」から「人が誘導しながら機械が作業をする時代」へと移行していると話す。
Aera Technologyは「Self-Driving Enterprise」と呼ぶIPAシステムを開発している。Self-Driving Enterpriseとは、ラルヨ氏が自動運転車(Self-Driving Car)になぞらえて呼ぶ概念を指す。
自動運転車のOS(Operating System)が車両の動作全体を把握するのと同様に、Aera TechnologyのIPAシステムは企業の運用システム(Operating System)を理解して、特定のプロセスに関する判断を下したり、提案したりしてくれる。「ビジネスの仕組みを理解して、リアルタイムで提案し、ビジネスの成果を予測して自律的に行動できるデジタルな頭脳だ」とラルヨ氏は言う。
ドイツの化学・医薬品大手Merckの医薬営業部門(以下、Merck Healthcare)は、2016年にAera TechnologyのIPAシステムを導入した。「既存のレガシーシステムのデジタル化とモダナイゼーション(近代化)を図るためだ」とIPAシステム導入の理由を語るのは、Merck Healthcareで最高情報責任者(CIO)を務めるアレッサンドロ・デルカ氏だ。
多くの大規模組織と同様、Merck Healthcareは複雑なシステムを抱えている。例えばERP(統合業務)システムだけでも、SAPの「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)や「SAP S/4HANA」、Oracle製ERPシステムなど複数のシステムを導入している。Blue Yonder(旧称、JDA Software)など複数ベンダーのSCM(サプライチェーン管理)システムも保有している。
「当社はサプライチェーンを網羅するダッシュボードを探していた」とデルカ氏は語る。Aera TechnologyのIPAシステムは各種ソースからデータを収集して、1つのユーザーインタフェース(UI)にデータを表示する。
「予測」から「指示」へ
Merck Healthcareにおけるモダナイゼーションの取り組みは、「スクリプトを使用したビジネスプロセス自動化から、機械学習による予測と供給の精度向上へと変化した」とデルカ氏は話す。現在の目標は「予測」から「指示」への移行だ。具体的には、Aera TechnologyのIPAシステムが、各種システムから収集して分析したデータに基づいて施策を提案できる状況を目指している。
モダナイゼーションに取り組むに当たって、Merck Healthcareは幾つかのシステムを検討した。その結果、同社固有の要件を満たす形で調整できるAera TechnologyのIPAシステムを採用することにしたという。候補として検討したのは、Blue YonderやAnaplanのSCMシステムやSAPのサプライチェーン計画システム「SAP Integrated Business Planning」などだという。
「規模が小さく多様で複雑なレガシーインフラを抱える当社には、オーダーメイドのシステムが必要だった」とデルカ氏は述べる。「単純にシステムとビジネスプロセスが合うかどうかの問題で、正解も不正解もない」(同氏)
後編は、IPAの市場動向を解説する。
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