サプライチェーン管理を変えるデータ活用【前編】
医薬用品メーカーは「注文の6割が電話、メール、FAX」の惨状をどう脱却したか
医療用品メーカーPaul Hartmannは注文と納品にかかる手間とコストの削減に課題を感じていた。ビジネスプロセスの効率化と需給の予測精度を向上させるために、同社が必要としたものは何か。
企業はかつてないほど多くのデータを利用するようになった。データソースの数やデータの量は増え続ける一方だ。企業はこうした全てのデータをどのように扱っているのだろうか。そのデータを実際の業務に利用できているのだろうか。
医療用品メーカーのPaul Hartmannは、ビッグデータ活用に向けたSAPのデータ統合ソフトウェア「SAP Data Hub」を用いて、さまざまなソースのデータを連携させ、そのデータをサプライチェーン業務の改善に利用している。SAP Data Hubは、Paul Hartmannのデータ活用に関する取り組みの一部を担っている。同社は既存のプロセスをデジタル化し、分析に基づく新たなモデルを開発しようとしている。
「初期の成果は前途有望だった」と語るのは、Paul Hartmannで最高情報責任者(CIO)兼最高データ責任者(CDO)を務めるシナヌディン・オマーホジック氏だ。
「注文の約6割がメール、電話、FAX」から脱却するために何をしたか
ドイツを拠点として創業200年を迎えるPaul Hartmannは、病院、養護施設、薬局、小売店などの顧客に医療用品や衛生用品を販売している。同社の主要な製品分野には、創傷管理、失禁管理、感染管理などがある。
Paul Hartmannは35カ国に事業展開している。オマーホジック氏によると、同社は40年間SAPのERP(統合業務)製品を運用しており、サプライチェーン業務のデジタル化における先駆的存在だという。ただし医療業界の変化によって、技術をどのように利用して新しい変化に対処するかという問題が生まれている。例えば高齢化によって、人の寿命が長くなり、以前よりも多くの製品が消費されるために、特定の医療用品や医療サービスの需要が増加する。
医療機関は医療用品の注文と納品にかかるコストの削減を求めている。これは、Paul Hartmannがサプライチェーンをデジタル化する目的の一つだ。同社への注文の約60%は依然としてメールや電話、FAX(ファクシミリ)が使われている。そのため1注文当たりの作業コストが高い。同社は注文から納品までのプロセスの自動化を図り、コストを減らすことを望んでいた。
方法の一つは、製品をストックするセンサー付き補充ボックスを病院の倉庫に導入することだった。このセンサー付き補充ボックスは、製品在庫量が一定のレベルに到達すると、自動的に再発注を実行する。このプロセスによって、顧客側が人力で介入する必要がなくなり、コスト削減につながる。
Paul Hartmannはスペインの約100件の病院に9000個のセンサー付き補充ボックスを導入し、必要に応じて手際良く在庫の交換ができることを実証した。さらに同社は新たなステップの検討を始めた。それは製品を補充するまでの待ち時間を短縮するために、どの製品がいつどこで必要になるかを正確に予測することだ。
予測に必要となる新たなデータソース
「新しい形のサプライチェーン予測分析は、さまざまな新しいデータソースを使う、膨大な量のデータ分析が必要になる」とオマーホジック氏は話す。例えば気象データが、特定の地域に嵐が到来することを示していると仮定する。その場合、多くの事故が起きる恐れがあり、病院は事態に備えて多くの包帯をストックすることになるだろう。インフルエンザの流行など、健康上の事象に関するソーシャルメディアのデータソースからは、特定地域での感染人数や、感染の対処に必要な製品数を算出できる可能性がある。
「人口データ、気象データ、伝染病のデータなど、外部のあらゆるデータソースを当社の販売実績データと組み合わせることで、医療機関をはじめとする全ての顧客が将来どの程度の製品を必要とするかを予測できるだろう」(オマーホジック氏)
後編は、Paul Hartmannがデータ主導型ビジネスに移行する際に直面した課題を解説する。
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