「人格を備えたチャットbot」への期待と不安【後編】
放送局は「人格を備えたチャットbot」の倫理問題をどう解消したのか
人格を加えたチャットbotには倫理的な問題があるとの声がある。一方で先行事例の中には、少しずつ成功事例も現れ始めた。スポーツ専門チャンネル「Sky Sports」の事例を紹介しよう。
前編「“不気味の谷”よりも深刻な『人格を備えたチャットbot』が引き起こす問題」で述べたように、企業はチャットbotの返答について、機械学習と自然言語生成(NLG)の成熟度に懸念を抱いている。Microsoftのチャットbot「Tay」の二の舞を演じたいとは考えていない。そこでスポーツ専門チャンネル「Sky Sports」を運営するSky UKは、あらかじめ準備した返答を使うことに決めた。
「人格を備えたチャットbot」の成功事例
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「企業が市場と関わる方法は、今後AI技術が鍵を握ることになる」と、チャット監視ツールを手掛けるGameOn(GameOn Technologyの名称で事業展開)の共同創設者兼最高製品責任者、ケイリン・スタノジェブ氏は語る。ただしAI技術は非常に新しく、まだ発展途上だ。「ビジネスプロセスのどこにAI技術を適用でき、他の手法の方が優れているのはどの領域かを理解することが重要になる」とスタノジェブ氏は指摘する。
スタノジェブ氏によると、自然言語処理(NLP)がもっと広く受け入れられるには、まずは機械学習の進歩が必要だ。ただしNLPは、ソーシャルメディアへの対応という点では強力な立ち位置を築き始めている。実際に企業のラベルが付いたチャットアカウントよりも、人格を備えたチャットbotとの対話の方が、人は礼儀正しくなることを示す事例がある。それがSkyの事例だ。
Skyは人格を備えるチャットbotを開発するため、同局で最も有名なコメンテーターの1人を開発に加えた。英国プレミアリーグを担当する評論家のジェフ・ステリング氏だ。ステリング氏はGameOnと協力して、ビジネス口調ではなく自身の独特な口調を用いた返答を作り上げた。
倫理上の問題を避けるためには、話し相手がチャットbotであることを相手に伝える必要がある。そこでSkyはそのチャットbotを「Jeff Bot」と命名してブランド化した。Jeff Botはステリング氏の声で質問に答えてコメントを出す。同時に、その返答が同氏本人のものではないことも明確にする。
「Jeff Botによる魅力的な会話が、Sky Sportsのブランドを高めるのに役立った」と、GameOn共同創設者兼CEOのアレックス・ベックマン氏は説明する。一方でベックマン氏は「チャットbotは非常に便利だが、あらゆるものと同様、悪用される恐れがある」と注意を促す。
学んだ教訓
企業はインターネットで接続される現在の環境で、市場との関係性を適切に築く方法を理解しようと、いまだに悪戦苦闘している。ソーシャルメディアでのチャットやWebサイトでのやりとりにも苦労が絶えない。チャットbotは瞬時のコミュニケーションを実現するのに不可欠だ。だが人格を備えるチャットbotの導入にはリスクが伴う。
Googleのような大企業やGameOnのような小さな企業からもたらされる教訓によって、はっきりしたことがある。それは、チャットbotを透明性の高い環境で運用しなければならないということだ。顧客は直接的な関わり合いを望む。だが関わっている相手が誰なのかを知りたいとも考えている。チャットbotの人格は役に立つが、その人格が人工的なものであることは明らかにしなければならない。
他の種類のマーケティングコミュニケーションのように、Webサイトやソーシャルメディアにチャットbotを配置するだけでは十分とは言えない。
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