VR/ARがコロナ禍のマーケティングに役立つ「社会的距離の確保」以外の理由新型コロナで拡大する「VR」「AR」【後編】

コロナ禍で「VR」「AR」技術導入の機運が高まっている。遠隔地にいる相手と共に業務を遂行する「リモートコラボレーション」やマーケティングにおいて、VR/AR技術はどのような効果を発揮するのか。

2020年10月29日 05時00分 公開
[David PeterssonTechTarget]

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、「VR」(仮想現実)、「AR」(拡張現実)、「MR」(複合現実)といった「XR」(Extended Reality)技術の活躍の場を生み出していることは、前編「『VR』『AR』を教育やトレーニングで使いたくなる納得の理由」で紹介した通りだ。後編となる本稿は、前編で紹介した教育やトレーニング以外のVR/AR技術の用途と、専門家の見解を紹介する。

用途2.リモートコラボレーション

 XR技術は、フィールド業務の支援にも利用できる。没入型技術を取り扱うVeative LabsはMR技術を利用して、工場などの現場担当者に、作業対象の部品に関する情報や、リアルタイムな機器のパフォーマンスデータを提供している。こうしたシステムにIoT(モノのインターネット)センサーからのデータを取り込むことにより、現場担当者の安全性向上を後押しする。例えば特定の部品がメンテナンスできないほど過熱しており、後で調査する必要がある場合、現場担当者に警告するといった具合だ。

 エンドユーザーと遠隔地にいる専門家を接続し、エンドユーザーが見ているものを専門家が見て遠隔アシスタンスを実現することもできる。リモートアクセス技術を扱うTeamViewerは、AR技術を活用した「TeamViewer Pilot」を提供開始した。これは技術者や医療従事者を他の場所にいる専門家とつなげるサービスだ。専門家は現地から送られてくる映像を見て、技術者や医療従事者が参照できるように、ペンで画面に描画したり、メモを追加したり、画面の実世界の対象物にタグを付けたりできる。

用途3.マーケティング

 移動や旅行に関連するVR/AR業界のトレンドに、顧客が商品を閲覧できる仮想的な売り場を提供する「仮想ウォークスルー」がある。COVID-19拡大防止のための移動制限に伴い、大学や企業はVR/AR製品を、潜在顧客に仮想ウォークスルーを提供する優れた選択肢だと考えるようになった。

「社会的距離の確保」だけではないVR/ARのメリット

 仮想見本市は、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)以外のメリットをもたらす。それは訪問者が展示アイテムにその場で変更を加えられる点だ。例えば車を見に来た顧客は、購入前に目当ての車をさまざまなボディーカラーで見ることができる。

 機能的な目的での活用例もある。デジタルクリエイティブ企業のEngine Creative Agencyの創業者であり、マネージングディレクターを務めるマシュー・キー氏によると、仮想見本市は重要な情報を動的に素早く提供できる。例として訪問者は本田技研工業の乗用車「シビック」をインタラクティブ(対話的)にチェックし、エンジンやスペックなどを掘り下げて調べることができたという。

 VR/AR技術のおかげで、顧客は購入前に商品をインタラクティブかつ詳細に確認できる。一方で販売側も、それがオンラインで注文された商品の返品の減少につながるとみている。COVID-19のパンデミック(世界的大流行)を受け「VR/AR技術で実店舗のような体験ができる場を構築、提供し、買い物客が自宅から店の中を見て回れるようにしたい」という問い合わせが「急増している」とキー氏は語る。

企業におけるVR/ARの今後

 2019年に調査会社IDCは、VR/AR技術に関する支出が2023年に1億6000万ドルに達するとの見通しを示した。一方コンサルティング企業PricewaterhouseCoopers(PwC)は、VR/AR市場は2030年までに1.5兆ドル規模に拡大すると2019年に予想している。どちらの市場予測もCOVID-19のパンデミック前のものだが、今回のパンデミックを機に、業界は非常に活気づいている。

 WebベースのARコンテンツを提供するSeek XRの創業者兼CEOであるジョン・チェイニー氏によると、物理的な店舗の閉鎖が広がった2020年3月初めから、同社の顧客企業のWebサイトにおけるAR技術の利用数は600%も拡大した。同時に、顧客企業のWebサイトのコンバージョン率が10〜200%上昇したことも明らかになった。

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