医療の専門家は、患者に対するケアと医師のトレーニングの改善に仮想現実(VR)を取り入れている。実際の利用例に加え、VR技術を医療分野で使うための課題を紹介する。
仮想現実(VR)はもはやゲームだけのものではない。最近では、医療の専門家がVR技術を患者ケアに取り入れている。その範囲は、先天性心臓欠陥を医師が3Dで調査できるようにすることから、やけどや慢性疾患に苦しむ患者の痛みを和らげることまでさまざまだ。
医療機関Cedars-Sinai Medical Centerで医療サービス研究部門のディレクターを務める医学博士ブレナン・シュピーゲル氏によると、VR技術は医療に有効なツールであることが証明されているという。これは数百件に及ぶ臨床試験に基づく結果で、同氏自身もこの事実を確信している。同機関は研究活動も盛んで、世界最大の臨床VRプログラムを擁し、3000人を超える患者に提供している。
「VRが斬新かどうかという論議は過去のものだ。VRが現実的かつ効果的な治療であることは疑いようがない。臨床転帰と同様に神経科学は、さまざまな興味深い方法でそうした効果を裏付けている。VR技術は、生活の質や機能の状態を改善するのに効果的な方法で人間の感覚を変える。VR技術は重大な意味を持つツールだというのがわれわれの見解だ」(シュピーゲル氏)
VR技術が医療に効果があることは証明されている。とはいえ、VR技術を臨床の第一線に導入するにはまだ課題が残っているとシュピーゲル氏は言う。
シュピーゲル氏によると、医療でのVR技術活用の目的は「患者のために新たな種類の治療環境を作リ出すこと」にあるという。VRは、臨床環境の外に患者を連れていくのに利用できる没入感の高い双方向型の体験だ。VRヘッドセットを装着することで、患者はリアルな3次元の世界を体験できる。そうした世界での体験には、通院のストレスや不安を和らげるだけでなく、患者に新しいスキルを教える狙いもある。
「VRの目標は、患者を空想世界の住人にすることではない。治癒効果のある環境で短時間過ごし、そこで現実世界に持ち込める新しい技術や能力を身に付けてもらうことだ」と同氏は述べる。
シュピーゲル氏によると、本稿執筆時点の2019年1月において医療で使われているVR技術は、主に次の4つのカテゴリーに分類されるという。
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