英国政府は医療機器プログラム(SaMD)認証制度の改正に向けて議論を進めている。SaMDの臨床利用に向けたリスク評価や、安全性の評価に関する議論の動向を探る。
前編「『医療機器プログラム』(SaMD)認証制度を英国政府が改正 重視するポイントは」に続き、後編となる本稿も、英国医薬品医療製品規制庁(MHRA:Medicines and Healthcare products Regulatory Agency)がソフトウェアやAI技術を「医療機器」として認定するための新しい制度と議論の動向を取り上げる。
英国の現行制度には「医療機器プログラム」(SaMD:Software as a Medical Device)に関する規定がほとんどないという。患者を守り、健全なイノベーションを支援するために、MHRAは現行制度の改正を提案し、2023年施行に向けて準備を進めている。英国の規制におけるSaMDの定義には、人工知能(AI)技術を搭載した医療機器(AIaMD:AI as a Medical Device)といった「ハードウェアに搭載されたソフトウェア」も含む。
MHRAはSaMDを一時的に「ハイリスク機器」として分類し、監視・制限するルールの導入を検討している。このルールは、リスクが不明確な場合を想定した規制だ。リスク評価を実施している間、患者や医療従事者の安全を確保しつつ、機器をいち早く展開するための措置となる。
英国政府は、SaMDの市販前審査を実施して、安全性、品質、性能など一定の基準を確実に満たせるようにしたいという意向を示している。医療従事者が医療機器の有害事象を報告できるように、SaMDの中にMHRA公式Webサイトへのハイパーリンクを設けることも提案の一つに挙げている。
英国における医療機器の規制に関する協議「Consultation on the future regulation of medical devices in the United Kingdom」は、SaMDの情報セキュリティに関連する提案も取り上げている。これは、医療機器の物理的な安全性、改ざんなどの潜在的なリスク、医療機器に保持される個人データの安全性を包括する提案だ。これらのリスクに対処するため、英国政府はSaMDの製造元に対し、特に不正アクセスからの保護に関して、最低限のセキュリティ要件を満たすことを要求する計画を示している。
「今回の制度の改正はAIaMDにもメリットがある」とMHRAは指摘する。医療機器のAI技術活用に特化した追加規定の一例には、診断用AI技術の性能評価方法に関する要件などがある。MHRAによれば、このようなAI技術に特有の手法は、体外診断用医薬品(IVD)の性能評価手法と同様のアプローチで評価することになる。分析性能や臨床性能、科学的妥当性の実証を必要とする点では共通しているからだ。
英国政府は、革新的なデバイスやAI技術などを使って「エビデンスに基づくセルフケアの新時代」を築くことを目標として、SaMDの規制に関する新制度の整備を進めている。この活動の開始は、英国の国民保健サービス(NHS:National Health Service)のデジタル推進部門「NHSX」が設立された2019年にさかのぼる。
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