医療機関とITベンダーが協力して電子カルテ導入に取り組む際、しばしば両者の認識のギャップが生じます。その原因は何なのでしょうか。ギャップを埋める手段となり得る「通訳者」の必要性とともに解説します。
医療機関とITベンダーは「システムを導入、活用して業務を効率化する」という目的で協力して活動しています。「システムを導入して非効率化しよう」と考えている人はいないはずです。共通する目的の実現のために、医療機関とITベンダーは互いに知恵を出し合い、切磋琢磨(せっさたくま)して、ゴールに向かっています。
電子カルテの導入を例に取って考えてみましょう。電子カルテの導入は、紙カルテ時代の業務フローを見直し、デジタル化した新しい業務フローを構築して、効率化を実現することを目的にしています。その目的実現のために、アナログな業務フローとデジタル化した業務フローを比較して「ムダ、ムリ、ムラ」を省きながらシステム構築を進めることになります。しかし両者の目的がいつの間にかずれていき、時には医療機関とITベンダーが対立してしまうことがあるのです。なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
初めて電子カルテを導入する医療機関は、デジタル化した新しい業務フローの「知識」も「経験」も持ち合わせていません。医療行為については熟練していても、電子カルテ導入については素人であり、慣れ親しんだアナログの業務フローしか知らない状態です。そのためデジタル機器を活用した新しい業務フローについては、ITベンダーが自社の知識と経験に基づいてゴールのイメージを説明する必要があります。ITベンダーの役割は、システム導入後の新しい業務フローを医療機関が理解できるように導くことです。
ITベンダーは、医療現場で情報がどのように流れ、その情報をどのような手続きで処理しているか、その際にどのような役割の人物が関わっているかを把握する必要があります。しかしITベンダーは、医療機関の業務フローについて必ずしも詳しくありません。電子カルテの導入実績を持つITベンダーならば業務フローの大筋は理解しているものの、詳細を確認してみれば医療機関ごとに違いがあるものです。このような「医療機関ごとの業務フローの違い」を明確にする目的で、ITベンダーはヒアリングを実施しています。
現状の業務フローを洗い出す作業において、医療機関がどれだけ詳細に説明できるか、そしてITベンダーがどれだけ聞き出せるかが重要です。
電子カルテの導入プロジェクトは、おおむね次のような流れで進みます。
近年の電子カルテ導入プロジェクトでは、一からシステムを開発するよりも、既製品のシステムをカスタマイズする方が一般的です。既製品の活用で開発プロセスを短縮し、費用をそれほどかけずに電子カルテを導入することが可能になっています。
要求仕様書は、電子カルテ導入プロジェクトにおける「設計図」のようなものです。これを作るには、電子カルテをはじめとするデジタルツールを使った業務フローに、医療現場の業務フローを落とし込む知識と経験が必要です。そのためITコンサルタントがこの役割を担っています。
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