医療業界でも積極的なクラウド活用が進んでいますが、「クラウドは安い」という印象が先行している側面もあり、導入プロジェクトでITベンダーとの議論がかみ合わないケースが生じています。すれ違いの主な原因は。
クラウドサービスの利用は一般的になり、医療業界でも利用が進んでいます。ただし「クラウド」という言葉は曖昧に理解されがちです。医療機関とITベンダーの間でクラウドサービスの特性を明確に理解しないままシステム導入を進めてしまうと、後で大きな問題に発展することがあります。本稿はクラウドサービスという用語がもたらす、医療機関とITベンダーの行き違いを解説します。
メール、カレンダー、地図ツール、交通案内、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)など、私たちは日常的にさまざまなSaaS(Software as a Service)を活用しています。こうした一般消費者向けのSaaSには、無料または低価格で利用できるものが幾つもあります。医療機関でも一般消費者向けSaaSのイメージから「クラウド=安い」という印象を持っている人が少なくありません。このことから、IT投資の予算を抑えたい医療機関が「クラウドサービスを選んでシステム構築をしてほしい」と指定するケースがあります。
筆者は「クラウドで構築すれば安く済む」という印象が独り歩きしているように感じています。筆者がコンサルティングに携わった事例で、仕様をそろえた上でクラウドサービスを使ってシステムを構築する場合と、オンプレミスのインフラにシステムを構築する場合の5年間のトータルコストを比較したら、差がほとんどなく医療機関の方に驚かれた経験もあります。
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