医療機関が「電子健康記録」(EHR)を導入する利点は? 米国では奨励金も電子健康記録(EHR)を使うべき理由【後編】

米国は「Meaningful Use」(意義ある利用)という制度によって、電子健康記録(EHR)システムを導入する医療機関に奨励金を交付している。ただしEHR導入後の紙の扱いについては、州ごとに法律が異なる。

2019年09月09日 05時00分 公開
[Tayla HolmanTechTarget]

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 米国連邦政府は、医療機関が他の医療機関や医療情報交換組織(HIE)、地域医療情報の管理を担う団体、患者本人などと、医療データを共有しやすくなるよう取り組んでいる。「電子健康記録」(EHR:Electronic Health Record)はこうした取り組みの中核を成す。

 その目的の実現に向けてメディケア・メディケイドサービスセンター(CMS:Centers for Medicare & Medicaid Services、注1)が実施したのが奨励金プログラムだ。この奨励金プログラムは、治療体制を向上させるために、制度によって認定を受けたEHRシステムの導入を医療機関に促している。このプログラムは、EHRの導入に当たって認定を受ける開業医や病院が、資金援助を受けるために達成しなければならない3段階の目標を定めている。

※注1 公的医療保障制度であるメディケアおよびメディケイドの運営主体。米国保健福祉省に所属する組織の一つ。

 EHRの導入は、奨励金を受け取ることにとどまらず、臨床のワークフロー、データ分析、全体的な患者ケア体制を改善する方法にもなると考えられている。

EHRが重要な理由

 2009年に米国で「経済的および臨床的健全性のための医療情報技術(HITECH:Health Information Technology for Economic and Clinical Health)に関する法律」(以下、HITECH法)が制定された。このHITECH法は、認定EHRシステムの「意義あるユーザー」(Meaningful Users)になることを医療機関に強く促すための奨励金と罰則を規定している。CMSのプログラムを通じて管理される奨励金の受給資格を得るには、医療機関は米国保健福祉省(HHS)の標準に準拠したEHRシステムを使用しなければならない。

 米国の医療IT政策の中心組織である医療IT全米調整官室(ONC)は規制を目的に、HITECH法を施行する上での暫定的最終規則において「適格EHR」(Qualified EHR)と「認定EHR」(Certified EHR)の定義を定めた。ONCはこの暫定的最終規則を連邦官報で公開し、2010年に発効させている。

 適格EHRについては、HHSは公衆衛生サービス法で既に定められていた次の定義を利用している。

 個人の健康に関する情報の電子記録であり、これは患者の基本属性情報と、病歴や問題リストなどの臨床健康情報を含み、かつ以下を実行できるものとする。

  1. 臨床判断サポートの提供
  2. 医師による指示入力のサポート
  3. 医療品質に関わる情報の取得とクエリ
  4. 他のソースとの電子医療情報の交換および他のソースからの当該情報の連携

 認定EHRとは、ONCが定めた認定要件を満たした適格EHRだ。

EHRのメリットとデメリット

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