IDCの2018年実態調査
日本で盛り上がらない「AR」「VR」のビジネス利用、その原因は
IDC Japanの調査結果によれば、2018年の日本におけるAR/VR技術のビジネス利用や採用意欲は、2017年と比べてあまり伸びていない。AR/VR技術への理解度の差が広まると専門家は懸念する。
AR(拡張現実)やVR(仮想現実)技術の市場では、コンシューマー分野が地位を築きつつある。IDCは2018年12月に、世界のAR/VR技術に関する2022年までの市場予測を公表した。同社は2019年のAR/VR関連支出において、コンシューマー分野は単一の産業分野として最大規模の72億3000万ドルに上ると予測している。ビジネス分野についても、コンシューマー向けサービスへの支出が最も多くなる(16億2000万ドル)という予測だ。
ビジネス用途でのAR/VR技術の利用意欲は、日本ではそれほど高まっていない。IDCの日本法人IDC Japanが実施したアンケート調査結果の2018年版によると、AR技術を「利用中」と回答した人(現利用者)および「今後採用したい」と回答した人(採用意向者)の割合は、共に2017年の数字を下回った。VR技術については、現利用者の割合は増加したものの、採用意向者の割合は減少した。
併せて読みたいお薦め記事
AR/VR技術とビジネス
さまざまなAR/VR技術活用例
伸び悩むビジネス向けAR/VR市場
IDC Japanの調査結果では、AR技術を利用中と回答した人の割合は、2018年で全体の2.1%となり、2017年の2.3%から0.2ポイント減少。採用意向があると回答した人の割合は2018年で6.3%と、2017年の6.5%から0.2ポイント減少し、利用実績・採用意向共に数値を落とした。
VR技術について同様の指標を見ると、現利用者は2018年に3.3%となっており、2017年の2.7%から0.6ポイント増加した。一方で採用意向者については、2018年は6.8%と、2017年の7.2%から0.4ポイント減少した。
実際に活用が進んでいる業種としては、AR/VR技術の両方で情報通信や製造といった分野が並んだ。このうちVR技術について、具体的に以下のような活用が見込めるという。
- 医療、介護、ヘルスケア
- リハビリテーション
- 障害や病気の症状などの疑似体験
- 不動産
- 物件の内覧
- 人材育成
- 製品の組み立てや高所作業などの研修
- エンターテインメント
- 東京五輪のパブリックビューイング
世界の他の地域と比較しても、日本のAR/VR技術の導入状況は芳しくない。前出のIDCによる世界のAR/VR技術市場予測では、AR/VR技術に関する支出について、2017年~2022年の各国・地域における年間平均成長率は上から順にカナダ83.7%、米77.1%、中国76.2%。一方の日本は28.4%で、これは他の国や地域と比べても低い(図1)。
なぜ浸透しないのか
IDC Japanが調査回答者に「AR/VR技術を利用するに当たっての懸念/阻害要因」を聞いたところ、専用デバイスについて「製品価格が高い」「外注コストが高い」などの費用面に関する課題が挙がった。「体験を共有しにくい」という要因を選択する人も一定数おり、これは専用デバイスの装着者以外にはその体験内容が分かりづらいという、AR/VR技術の性質的な問題に起因する。
ビジネス用途、コンシューマー用途を問わず、AR/VR技術を実際に体験できる機会自体はそれほど多くなく、展示会やショールームなど一部の場面に限られる。これは体験を共有しづらいことと相まって、AR/VR技術に触れた経験がある人や、技術に対する理解がある人の減少を招く。「日本人は新しいものを受け入れたがらない傾向があると考えられるため、この状況が続けばAR/VR技術に関するリテラシーの差が拡大する恐れがある」と、IDC Japanで調査の分析を担当した菅原 啓氏は懸念する。
現時点でAR/VR技術をビジネス利用している企業は、今後も利用を推進する傾向がある。アンケートで「AR/VR技術を導入している」と答えた人のうち、今後の投資意向について「増やしていくと思う」と回答したのは、現AR技術利用者で5割以上、現VR技術利用者で約4割だった。「この事実は、AR/VR技術を利用している企業とそうでない企業の間で、さらなるリテラシーの差が生まれる可能性を示す」と菅原氏は述べる。
IDC Japanの調査は、同社が2018年10月19~31日、男女1000人のフルタイム労働者(20~69歳)を対象に実施した。調査形式はWebアンケート。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
5
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
-
6
脱VMwareの最適解 NTTデータと日立製作所が示す国産仮想化基盤
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
9
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
10
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー