クラウド普及と共通する点も
今まさにビジネスを変えている「VR/AR」、すぐに手を付けるべきは?(1/2 ページ)
IoT(モノのインターネット)以降の世界をVR/ARがさらに変える準備は整った。ただし、VR/ARを企業や組織に普及させるためには、幾つかの準備が必要だ。
調査会社IDCによれば、VR(Virtual Reality、仮想現実)およびAR(Augmented Reality、拡張現実)市場の収益は、2016年時点で52億ドルだったが、2020年には1620億ドルを超える規模へ成長を見込まれている。IoTと同様、強い変革力を持つVR/AR技術は、ビジネスを劇的に変える可能性をはらむ。
同技術には課題も残る。うち1つは、「何をもってVR/ARを定義するか」という議論に欠かせない、VR/ARの作り出す経験「現実(Reality)」の定義が曖昧である点だ。VR/ARは、コンピュータを使って生成した画像や音声データで、ユーザーが体験する世界を一から構築することもあれば、別の“現実”を補足することもできる。こうした点は、テレビのように、あらかじめ完成した映像を視聴する受動的な体験とVR/ARとの間に一線を引く。VR/ARが映し出す世界は、ユーザーのインプットによりいくらでも変化するためだ。企業は、業務の合理化や販売機会の拡大、サービスの改善などの目的に、VR/AR技術とIoTデバイスを組み合わせて活用できる可能性もある。
犯罪捜査から商品販売まで活躍するVR/ARアプリ
発展性のあるVR/ARのアプリケーションは、数多く存在する。例えば、Black Marbleは、警察機関向けに、証拠や犯罪現場のデータ収集を容易にするホログラム機能付き仮想モバイルアプリ「tuServ」を提供する。同アプリは、Microsoftのヘッドマウントディスプレイ「HoloLens」で動作し、エンドユーザーは、特定の犯罪現場に関連した物品や画像などの情報を、タブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスから閲覧できる。捜査員にとって、同アプリは、携帯にインストールして持ち運び可能な“指揮統制アプリ”になるのだ。
企業や組織で行われる訓練や研修プロセスの刷新も、AR/VRの効果的な用途といえるだろう。今日、企業では、複雑な作業について従業員を指導する際、ドキュメント形式のマニュアルや「Microsoft PowerPoint」などで作成したプレゼンテーションに頼っている。いら立った顧客への対処法について説明する代わりに、実習生にヘッドセットを着用させてシミュレーション体験させた方が、実践的な訓練が可能だろう。
VR/ARは、モノの販売にも役立つ。例えば、製造業向けソフトウェアを手掛けるPTCが発表したARツールを使えば、重機メーカーの営業担当者はパンフレットを手にした相手に車輛の3D画像をその場で見せることができる。
サービス業界も、AR/VRの恩恵を受ける分野だ。Rockwell Automationによる製造業向けアプリケーション、「FactoryTalk Analytics for Devices」の特徴は、Microsoftのパーソナルアシスタント機能「Cortana」をベースにしたbot「Shelby」だ。ユーザーは、音声ガイダンスを使ったデバイス診断を利用できる。このようなツールは、製造ラインに影響を及ぼす前に、担当者が素早く問題のある機器を修理できるよう、診断のタイミング最適化も可能だ。
ビジネス向けAR製品を提供するUpskillの主任戦略担当者ジェイ・キム氏は、同社の「Skylight」が、診断機能だけでなく、業務効率化を助けていると話す。例えば、EMS企業のJabil Circuitは、Skylightを活用し、IoTに対応した製造装置のモニタリングを実施している。「技術者は、装置の状態や状態変化、各ラインの歩留まりなどのデータをリアルタイムで閲覧できる」とキム氏は語る。「例えば、製造ラインにエラーや停電が発生した場合、Skylightは、エラーの内容や装置への影響などの詳細情報を、技術者にリアルタイムで通知する。技術者の力では解決できない問題が発生した場合も、数百マイル離れた地点にいる専門家にSkylight経由で問題の内容をストリーミングし、アドバイスを仰ぐことができる」(同氏)
VR/AR普及に向けた道のりが長い理由とは
アプリケーションの可能性が広がる一方、VR/ARの市場はまだ初期段階にある。「多くのVR/AR関連企業が、あと1年間でさまざまな製品を試験的に運用するだろう。ただし、そうした製品の生産システムが動き出すのは、恐らく3年後から5年後だ」と、Gartnerのリサーチバイスプレジデントのマーク・フン氏は話す。
なぜ製品化から生産開始に時間がかかるのか? ベンダーが新たなハードウェアやネットワーク、ソフトウェアなどのインフラを導入する必要があるためだ。VR/AR製品が現実世界と区別が付かないほど完成度の高い“体験”を提供するには、周辺のエコシステムを整える必要がある。現在、そうしたエコシステムは「開発初期段階」だとキム氏は語る。
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