「Zoom」は聴覚障害者向けに、ユーザーが手話通訳者を表示したままプレゼンテーションを見られる機能を追加した。当事者はこのアクセシビリティ機能をどう評価するのか。アクセシビリティ推進団体に聞いた。
Zoom Video CommunicationsのWeb会議ツール「Zoom」は、聴覚に障害のあるユーザー向けに新しいアクセシビリティ機能を追加した。開発にはデジタルアクセシビリティ推進団体Accessibility Project(以下A11Y Project)が協力している。
ユーザーはZoomのアクセシビリティ機能により、1人の参加者画面だけではなく複数の参加者画面を目立たせたり(スポットライト)、表示を固定したり(ピン止め)できる。聴覚に障害のある参加者は、プレゼンター画面と手話通訳者画面を簡単に同時表示できるようになり、プレゼンテーションを見ながら内容を理解しやすくなった。
グリッドに表示されるウィンドウを並べ替えて、手話通訳者のウィンドウを好きな位置に設定することも可能だ。ウィンドウの固定と並べ替えの他、プレゼンターは自分の映像をプレゼンテーションの上に重ねて表示することもできる。
ただし機能的な制限もある。例えばウィンドウを同時に2つ固定できるのは最大9人の参加者のみだ。プレゼンター自身が固定できるウィンドウの数は最大9つとなる。
2人の話者の映像を同時に表示する機能は「非常に重要だ」と、A11Y Projectのエリック・ベイリー氏は話す。「政府会見のように通訳者が必須の場面には不可欠だ」(ベイリー氏)
アクセシビリティ機能を備えたWeb会議ツールはZoomが初めてではない。Microsoftの「Microsoft Teams」とCisco Systemsの「Cisco Webex」は以前から同様の機能を提供している。Microsoft Teamsにはウィンドウ並べ替えの機能はないが、Cisco WebexはZoomの新機能と同じ機能を備える。
University of North Carolina at Greensboro(UNC Greensboro:ノースカロライナ大学グリーンズボロ校)の助教授で聴覚障害のあるジョン・ヘナー氏は「Zoomの新機能で仕事がしやすくなる」と話す。ヘナー氏は会議や討論会に定期的に出席し、ワークショップや講義、ミーティングもしており、その全てにWeb会議が必要になる。同氏は最近、Microsoft Teamsで子どもの学校のミーティングに参加した際「手話通訳者の映像を固定する方法が分からず、ノートPCを2台使う羽目に陥った」と明かす。
Zoomには、マイクやカメラのオン・オフを切り替えるショートカットメニューがある。組み込みの字幕表示ソフトウェアで満足できなれければ、字幕入力者を選択したり、Otter.aiの「Otter」などの自動文字起こしサービスを選択したりすることもできる。
ヘナー氏はZoomの字幕機能には「不安がある」と言い、聴覚障害者が発言したいときに字幕を示す別の方法を求める。聴覚障害のない人たちが話し合っているときに挙手オプションで合図するのは「あまり良い方法ではない」と同氏は指摘。「発言したい人のウィンドウを強調する機能があるとよい」と提案する。
米国国勢調査局の推計によると、米国の障害者は総人口の約12.6%で約4060万人、聴覚障害者は総人口の約3.6%で約1150万人だ。これほど大勢の障害者が存在するのにもかかわらず、UC(ユニファイドコミュニケーション)ベンダーのアクセシビリティ機能の支援はまだ追い付いていない。
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