事例で学ぶスキル向上と再教育の意義【前編】
DXの成功には「従業員のスキル向上と再教育」が不可欠な理由
デジタルトランスフォーメーションを推進する企業が自動化技術や人工知能技術といった最新技術を導入すると、いずれ「従業員のスキル格差」の問題に直面する。こうした問題を解決するために必要なアプローチは何か。
企業の間でデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する動きが広がり、従業員の技能の向上と再教育の重要性がますます高まっている。コンサルティング企業Kotter Internationalのプリンシパル、バネッサ・アクタル氏は「DXを成功させるには、従業員が新しい仕事の進め方に移行できるように企業が手助けする必要がある」と話す。
AI技術の導入で生じる「スキル格差」をどう解消するか
アクタル氏はDXにおける「スキル向上」(Upskilling)と「再教育」(Reskilling)という概念を次のように定義している。
- スキル向上
- 従業員のこれまでのスキルと能力を、DX推進に必要な新しい技術に適応できるように支援すること。
- 再教育
- 従業員に新しいスキルを与えること。
従業員のスキル向上と再教育を実施するに当たっては、技術的な知識を与えるだけでは十分ではない。コラボレーションスキルをはじめ、DXがもたらす継続的な変化に適応するためのスキルも育てる必要がある。アクタル氏は「これからの世界はこれまでと違ったものになる。今後は変化に対処するためのトレーニングとスキル開発が役に立つ。いつの時代も従業員にはそうしたスキルが求められている」と説明する。
自動化技術や人工知能(AI)技術の導入によって生じる従業員のスキル格差の問題は、数年前から明らかになってきている。コンサルティング企業McKinsey & Companyの調査機関McKinsey Global Instituteが発表した2017年の報告書は「自動化とAI技術の導入によって2030年までに世界の労働者の最大約14%(3億7500万人相当)が、転職するか新しいスキルを習得する必要に迫られる」と予測している。直近の調査「McKinsey Global Survey」では、回答した経営幹部の約87%が、従業員のスキル格差の問題が既に発生しているか、これから数年で発生しそうだと答えたという。だがこの問題について「明確な対策を考えている」と答えた回答者は半数未満だった。
DX推進に伴うスキル格差の問題を解決するために、スキル向上と再教育のプログラムを既に実施している先駆的な企業もある。中編は工具メーカーのStanley Black & Deckerの事例を、後編は重電メーカーSchneider Electricの事例を紹介する。
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