Boseのサプライチェーン強化【中編】
音響大手Boseに聞く、サプライチェーンの混乱をいち早く察知する4つの要素とは
音響メーカーBoseはサプライチェーン強化に向けてシステム構築を進める際、サプライチェーンの混乱を察知し迅速に対処するために、幾つかの要素を重視したという。何を重視しているのだろうか。
前編「音響大手Boseが『サプライチェーン強化』を決意した理由 東日本大震災が契機」の通り、大手オーディオ機器メーカーBoseは2011年に世界各地で発生した災害をきっかけに自社のサプライチェーンを見直し、サプライヤーのリスクを最小限に抑えるための取り組みに着手した。同社は2013年にResilincのサプライチェーン管理(SCM)システムを導入し、サプライチェーンの回復力を高める施策を実施した。
サプライチェーンの混乱を察知して対処するための施策を構築する際、Boseは次の5つの要素に注目した。1~4番目の要素はサプライチェーンにおける混乱を察知することを重視する。一方で5番目の「危機管理」は対処を重視する。本稿は1~4番目の要素を解説する。
- サイトマッピング
- 財務分析
- 社会的責任
- 事業継続計画
- 危機管理
サプライチェーンのトラブルを察知するための4要素
併せて読みたいお薦め記事
パンデミックが招いたサプライチェーンの混乱
企業ITのBCP
サイトマッピング
ResilincのSCMシステムに基づいて、Boseはサプライヤーの拠点(サイト)をマップ化(サイトマッピング)している。このマップが、サプライチェーンの回復力を高める施策の基盤となる。
Boseはサイトマッピング機能を通じて、同社のサプライヤーが部品を製造する場所、その部品を使用する製品、その製品の収益を示すマップを作成する。Resilincのシステムには、サプライヤーの拠点を全て表示するダッシュボードがあり、特定のサプライヤーと部品をドリルダウン表示することが可能だ。これを使うことで、各地域のサプライヤーの拠点、各地域のパートナー企業の数、関係する部品の数、サプライチェーン混乱の影響を受ける可能性がある製品の数と収益についてのデータをチームに提供できる。混乱が発生した際は、潜在的なリスクの詳細を含むアラートがシステムから届く。
このマップによって、サプライチェーンの混乱時にも即座に状況が可視化できるようになったと、Boseのグローバルサプライマネジメント部門でディレクターを務めるエリック・ドウィネルズ氏は話す。「これはサプライチェーンの混乱を把握するための基本的なデータだ。2011年には存在しなかった」(ドウィネルズ氏)
財務分析
財務リスクについての警告など、サプライヤーに関する財務データをチームに提供するために財務分析が役立つ。Boseが財務分析のために活用しているのは、Rapid Ratings Internationalが提供するSaaS(Software as a Service)形式のサプライヤーリスク分析ツール「RapidRatings」だ。これはサプライヤーの財務状況に関するリスクを0~100点のスコアで評価し、リスクレベルを高、中、低で表示する。
Boseは、サプライヤーの財務状況とキャッシュフローに関する洞察をリスクスコアの形で参照している。RapidRatingsのダッシュボードは財務データの概要と詳細を目に見える形で提供し、豊富な財務データをビジネスの観点から捉えることができるようにする。「これにより、財務アナリストではない商品マネジャーが実際のサプライヤーと簡単に対話できるようになる」とドウィネルズ氏は語る。上司との相談が必要であれば、詳細をすぐに入手できるため、同社の財務部門はサプライヤー側の会計監査担当者と連携しやすくなったという。
社会的責任
サプライヤーの社会的リスク(例えば労働者の権利の侵害など)を追跡することも重要だ。Boseはサプライチェーンにおける企業の社会的責任を促進するための組織「Responsible Business Alliance」(RBA)に参加している。RBAはグローバルサプライチェーンの中で労働者の権利と健康を守ることを目指す非営利組織で、エレクトロニクス、小売、自動車、おもちゃメーカーなどが参画している。
「ここ12~18カ月、当社の顧客から、当社の社会的責任に関する取り組みについての質問が非常に増えた」とドウィネルズ氏は語る。同氏によると、顧客はサプライチェーンの社会的責任に関するBoseの知識も知りたがっていた。同社のサプライチェーンマネジャーは、サステナビリティマネジャーの協力を仰いでこれらの質問に答えており、回答するために顧客と面談もしているという。
事業継続計画
Boseの事業継続計画(BCP)は、サプライチェーンに混乱が起きた際のサプライヤーの計画に重点を置く。同社はサプライヤーと連携して、バックアップ計画を策定すると共に、サプライチェーンの混乱の影響を最小限に抑えるために成すべきことを考えている。
「新型コロナウイルス感染症によって、BCPを一層重視する必要があると分かった」とドウィネルズ氏は語る。2021年はサプライヤーの事業継続計画をより堅牢(けんろう)にすることで、この分野をさらに改善する計画だ。そのためにサプライヤーに対して、各社の弱点を把握し、改善のための戦略をまとめるのを支援するという。
後編は、サプライチェーンの混乱を察知して対処するためにBoseが構築した「危機管理プロセス」を解説する。
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