金融×AIの最前線【後編】
Mastercardのプライスレスな顧客体験を生むAI技術
Mastercardが不正利用防止のために活用しているAI技術は、企業に対する顧客の愛着や信頼の向上に寄与する可能性がある。同社幹部へのインタビュー後編。
Mastercardは2017年にAI(人工知能)技術ベンダーのBrighterionを買収して以来、この領域に積極的に投資している。金融機関におけるAI技術は不正利用防止が主な用途だが、自社に対する顧客の愛着や信頼、リテンション(顧客維持)率の向上にも応用できる。
前回「Mastercardが『AI』で不正検出 同社幹部が語るその中身とは?」に引き続き、Brighterionの最高幹部でありMastercardのシニアバイスプレジデントも務めるスディール・ジャー氏に話を聞いた。
―― 金融機関がAI技術を使用して、自社に対する顧客の愛着や信頼を向上させる仕組みを教えてください。
ジャー氏 現在分かっているのは、顧客体験の向上を実現する重要性が一層増していることだ。それは、正当な取引の承認度合いを上げる場合でも、与信限度額を上げる場合でも変わらない。どのような場面でも顧客はシームレスな体験を望んでいる。オンラインや店舗での支払いの際に正当な取引が拒否されないこと、与信限度額の変更をスムーズに要請できることなどを希望している。
リスクを抑えながら誤判定を減らす。そのようにして顧客体験を継続的に改善していくことが金融機関にとって欠かせない。それを可能にするのがAI技術だ。顧客体験を改善すれば、口座を有する既存の金融機関に対する顧客満足度が高まるため、自社に対する顧客の愛着や信頼は向上する。
―― Mastercard自体は詐欺防止にどのようなAI技術を使用していますか。
ジャー氏 当社は独自のAI技術を使用して取引詐欺を減らしている。Brighterionの買収によって開発したもので、毎年発生する何十億件というイベントに対して正確かつタイムリーな方法で大規模にAI技術を活用できる。これにより、Mastercardで毎年起きていた数十億ドル相当の詐欺被害を軽減すると同時に顧客体験を向上させた。
―― 顧客ライフサイクルの中で、AI技術の恩恵を最も大きく受けられるのはどの段階ですか。その理由も教えてください。
ジャー氏 金融機関は、与信取引申請書や口座開設のプロセスから既存顧客の体験改善、債権回収の最適化まで、顧客ライフサイクル全体にAI技術を活用している。AI技術によって貸し倒れを減らしながら、より多くの申請の承認が可能になる。AI技術は与信限度額を増やし、オンラインと店舗全体での取引承認率を上げる。同時に、既存顧客の貸し倒れを最小限に抑えることにも役立つ。回収においては、顧客体験の改善とプロセスの合理化に重点を置く。
このように全ての段階でメリットが得られる。金融機関のAI技術の活用方法はそれぞれの段階での戦略、ビジネス状態、顧客の傾向に応じて異なる。当社はこうしたさまざまな段階で、世界中でAI技術を活用している。
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