医療機関のデジタル化【後編】
医療データの断片に眠っている情報の活用
データを活用することで、医療機関の治療や経営を改善できる。請求データなど、医療機関が保有するデータの一部だけでも多くの洞察を得ることが可能だという。
前編(医療機関がポイントソリューションを導入してしまう理由)では、医療機関が特定の機能に限定されたポイントソリューションを導入してデータの統合に苦労している理由を解説した。
後編では、医療データのデジタル化やデータの一部からでも始められる改善について解説する。
臨床研究
――患者の治療成果改善以外にも研究者に協力していますか。
ナックフータ氏:シンガポール保健省の医療変革局に協力している。当社のセカンダリーデータストアのデータを使って、新型コロナウイルス感染症による死亡率が高い人を特定する予測分析ツールを作成した。当社が協力している病院の多くは、匿名化したデータの使用権を当社に付与している。その結果として、新型コロナウイルス感染症に関する最大のレジストリの一つを持つことになった。
当社の予測モデルを使えば、エッセンシャルワーカー、医療従事者、高齢者の次に誰を新型コロナウイルスワクチンの優先接種者にするかを判断できる。当社の洞察では、死亡率は女性よりも男性の方が高いことも特定されている。
別の医療グループとの比較研究も計画している。米国とシンガポールで新型コロナウイルス感染症の治療に使われたさまざまな薬品とその効果の違いなどを検証する予定だ。
――Health Catalystのアプローチで多くの医療機関が苦労している点は何でしょうか。専用医療システムにデータが封じ込められており、そのデータを取り出して他のデータセットと組み合わせて分析することに多くの労力を費やしている医療機関があることが分かっています。Health Catalystのアプローチでも同様の状況はありますか。医療機関がそうした課題を克服するのを支援する機能はありますか。
ナックフータ氏:データが複数のシステムに存在するため、データの集約は最大の課題の一つだ。当社が米国内で連携している医療システムの中には、買収による拡張を繰り返した結果、50のシステムで構成されているものもある。
データを取り出して標準化し、使えるようにするため、当社はさまざまなEMR(Electronic Medical Records:電子カルテ)システムに対応するコネクターを300以上用意している。当社は、たとえカスタムシステムであっても迅速にデータをマップする方法を持っている。
ある公立病院に協力して、治療成果の改善を目的とするデータ主導型のプロジェクトに取り組んだことがある。一つは肺炎で、もう一つは大腸の手術後の回復という分野だった。その病院のEMRシステムとデータウェアハウスからデータを取り出す必要があったが、当社は1週間足らずでそれを実行し、そのデータを標準化できた。
もう一つの課題がデータ保護だ。成果を改善するためには常にデータを利用する必要がある。だが、デジタルデータはサイバー攻撃の恐怖を伴う。同社のビジネスは全て顧客のデータに関係している。データしかないと言っても過言ではない。データは重要だ。当社は非常に厳格なセキュリティプロトコルを導入している。高い信頼性を確保するため、適正な認証は全て取得している。CISO(最高情報セキュリティ責任者)と常に密接に連携し、CISOが快適に行動できるようにしている。
こうした取り組みは、強力なリーダーシップの育成や適切なデータガバナンス構造の構築にも役立つ。サポートとコンサルティング機能を用意して、適切なデータガバナンス構造を設定し、適切な担当者だけが適切なデータにアクセスできる監査制御を行っている。医療データの中には、機密度の高いものもあればそうでもないものもある。場合によっては、機密度の低いデータに注目することで多くの洞察を得ることもある。
医療記録のデジタル化
――Health Catalystのプラットフォームを活用するに当たって、医療機関はまず医療記録をデジタル化する必要があると思います。医療記録のデジタル化が進んでいない国の医療機関とはどのように連携していますか。
ナックフータ氏:よい質問だ。当社は医療部門最高のエクゼクティブが設立したスタートアップ企業Smarter Healthとパートナーシップ契約を結び、特に発展途上国において医療提供者や保険会社を支援している。
Smarter Healthは病院と決済企業(保険会社)間のデータをデジタル化するプラットフォームを提供する。患者が提出する手書きの申請書を保険会社が受け取り、治療が適切かどうか、払い戻しが必要かどうかを判断しているためだ。当社は分析を行い、他の患者のデータを基に治療の妥当性を判断する。保険会社はその情報を基に治療の事前承認要請を認めるか拒否するか、あるいはもっと医師からの情報が必要かどうかを判断する。
興味深いのは、請求データがデジタル化されるだけで当社はこうした判断ができることだ。ほとんどの病院は支払いを受けるためにそのデータを保有している。医療システムには完璧なデータが必要だと考えられているが、請求データだけでも多くの興味深い情報を得ることができる。そこには、医療システムやコスト削減についてかなりのことが分かる十分な情報が含まれている。
――データの正確性はどのように確認していますか。
ナックフータ氏:データ品質に関する多くの作業を行っており、「男性が妊娠している」「盲腸を2回切った」といった誤った情報を探している。もう一つ、クロスチェックしてデータの「欠損」を探している。糖尿病と診断された患者が検査報告では糖尿病を指摘されていない場合、どちらに間違いがあるかを確認する。
データが誤っていると成果も違ってしまうため、診療記録もチェックしてデータが正しいことを確認している。素晴らしいことに、データの母集団を見れば異常が際立つ。恐らく医師がデータを正しく入力していないと考えられるが、何かが間違っているかどうかを判断できる。
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Computer Weekly日本語版
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