自社の「HPC」構築に必要な視点【後編】
「ハイパフォーマンスコンピューティング」(HPC)で困ったときに見直すべき4つの視点
「ハイパフォーマンスコンピューティング」(HPC)の利用時は、日常業務で利用するインフラとは異なる課題に直面する可能性がある。どのように対処すべきか。間違った判断を下さないためのポイントを知っておこう。
中編「『ハイパフォーマンスコンピューティング』(HPC)の利用可否を考える3つの要件」は「ハイパフォーマンスコンピューティング」(HPC)の利用に当たって検討すべき3つの要件を紹介した。本稿はHPCの利用時に直面する可能性のある3つの課題と、それに対処するための視点を紹介する。
コンピューティングの課題
HPC用のハードウェアは使い慣れた汎用(はんよう)のサーバにすることもできるし、モジュール型の高密度サーバにすることもできる。モジュール型の高密度サーバを利用すると、サーバの拡張や交換が容易だ。高速イーサネットの機能を搭載するサーバを利用すれば、データ転送速度を高速化できる。こうしたハードウェアの技術進化に合わせてHPCに追加投資をすることで、HPCが直面するコンピューティングの課題を段階的に解消することが可能だ。
ソフトウェアの課題
問題になりがちなHPC関連ソフトウェアの課題は、ソフトウェアのバージョンと相互運用性の管理だ。あるソフトウェアに更新プログラムを適用することで、他のソフトウェアの動作に悪影響を与えることがある。それを避けるためには、HPCの運用プロセスの中でテストと検証の作業に重点を置くことが欠かせない。
施設の課題
データセンターのスペース、電力、冷却機能の制約がHPCの利用において課題になるときは、サーバをアップグレードすることで問題が解消する可能性がある。より大型で高速処理可能なサーバを導入して仮想マシン(VM)を追加することで、物理的にサーバ台数を増やすことなくHPCのノード(サーバ)を追加できる。
LANの帯域幅(回線容量)不足の問題が生じる場合は、同じ物理サーバ内のVMをグループ化するとよい。これによりVMがLAN経由で通信する必要がなくなり、問題の解消につながる。
サーバラックの設置スペースを追加する場合は、コロケーションなど社外の施設を利用することも可能だ。コロケーションではデータセンター事業者のスペースを借りて、その事業者が用意する電力と冷却設備を使用する。コロケーションを選択する場合の注意点は、自社設備よりも割高の利用料金と長期的な契約によって、高コストになる懸念があることだ。
電力コストはHPCの長期的なコストに影響する。電力効率を高めるため、サーバの電力使用状況を管理できる「スマートPDU」(PDUは電源タップ)、スイッチ機能付きのPDUなどの導入を検討すべきだ。無停電電源装置(UPS)はデータセンターの電力が停止する場合、サーバのシャットダウンのプロセスを制御することでデータ損失を最小限に抑える。
高密度サーバのサーバラックを追加すると、データセンターの空調システムの冷却負荷が大幅に高まる恐れがある。冷却設備を追加できない場合は、液体によって冷却する「液浸冷却」などより高度な冷却設備で代替することを検討すべきだ。コロケーションやクラウドサービスを利用することも選択肢になる。
HPCのクラウド利用
「Amazon Web Services」「Google Cloud Platform」「Microsoft Azure」などのクラウドサービスでHPCサービスを利用することができる。クラウドサービスは拡張性に優れていることが特徴だ。他にも下記のメリットが見込める。
- 世界各国で利用可能なデータセンターにおけるほぼ無制限の拡張
- 機械学習、視覚化、レンダリングなどの処理を最適化する各種プロセッサなどのハードウェア
- 自社のIT担当者によるスキルの習得時間や作業負担を減らすHPCのマネージドサービス
- リソース使用量に対してのみ料金を支払う従量制課金制
HPCを頻繁に利用する企業は、より自社の要件に適したデータ処理を可能にすることやセキュリティ確保のために、社内でHPCを構築するとよい。不定期で生じるHPCのプロジェクトに自社のリソースでは対処し切れない場合は、クラウドサービスを利用する選択も可能だ。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー