主要サーバベンダーは、スーパーコンピュータや量子コンピュータといった「高性能コンピュータ」(HPC)の開発に注力している。その背景と最前線を紹介する。
より大きく、より速く、より強く――。この言葉が象徴するのは、2019年上半期の主要ハードウェアベンダーの動きだ。ベンダー各社は機械学習をはじめとしたAI(人工知能)技術ベースのシステムを処理できる、高性能コンピュータ(HPC)分野に注力した。
IBM、Hewlett Packard Enterprise(HPE)、NVIDIAといったベンダーが買収や業務提携、あるいは独自の開発を通じ、AI技術向けのハードウェア製品を発表したり、将来的な製品提供を公言したりした。各社が発表した製品は、
など多岐にわたる。
2019年5月、HPEは何の前触れもなく、スーパーコンピュータで長年の歴史を持つCrayを約13億ドルで買収すると発表した。この買収によるHPEの狙いは、Crayが持つスーパーコンピュータの技術を商用分野に行き渡らせることで、HPC市場を活性化することだ。企業のIT部門がスーパーコンピュータの技術を活用できるようになれば、民間企業の間でAI技術の応用が進む。HPEの最高経営責任者(CEO)であるアントニオ・ネリ氏はこの買収について「Crayの技術を基にして、次世代のサーバやコミュニケーションツールとなる製品の提供を目指す」と表明している。
HPEによるCrayの買収は、HPEの2020年会計年度の第1四半期に完了する見通しだ。Crayの買収によって、HPEのHPCベンダーとしての信頼感は高まる可能性がある。HPC市場においてHPEは、次世代技術を詰め込んだHPC「The Machine」のプロトタイプを2016年に発表済みだが、いまだに市場に投入する見通しは立っていない。
Crayの買収は、HPEにとっては「実入りのいい政府機関の入札案件に加わる道を開く」という意味も持つ。Crayは、エクサスケール(1秒間に100京回規模の計算速度)の処理能力が求められる米エネルギー省(DOE)オークリッジ国立研究所のスーパーコンピュータ「Frontier」の開発に関わっている。スーパーコンピュータの分野では、Crayの方がHPEよりはるかに大きな成功を収めてきたのだ。
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