量子インターネット入門【中編】
「量子インターネット」は何がすごい? あれもこれもインターネットとは段違い
量子力学を利用した「量子インターネット」は、従来型のインターネットとは何が違うのか。さまざまな視点で比較する。
量子力学の特性を利用したインターネットである「量子インターネット」に関する研究が進んでいる。量子インターネットは、従来型のインターネットとは何が異なるのか。仕組みや通信速度、セキュリティなど各種の視点で比較する。
「量子インターネット」と「従来型インターネット」のさまざまな違い
併せて読みたいお薦め記事
連載:量子インターネット入門
量子時代のネットワーク
インターネットは、世界各国の小さなノード(コンピュータなどの機器)を結ぶネットワークを相互に接続することで成り立つ。インターネットを通じて、何十億ものユーザーが日々情報を交換し、コミュニケーションを取っている。
それに対して量子インターネットはまだ研究段階だ。2つ以上の量子が相互に密接に関連付けられた「量子もつれ状態」が可能な距離を長くするための研究が進んでいる。ファイバーを用いたP2P(ピアツーピア)による量子ネットワークで約100キロを実現しており、量子中継装置によってその距離を伸ばす研究がなされている。
セキュリティ
インターネットでは、「IPsec」や「SSL」(Secure Sockets Layer)、「TLS」(Transport Layer Security)なさまざまなネットワークセキュリティプロトコルによってセキュリティが確保されている。
量子インターネットは量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)というセキュリティ技術を採用する。QKDは量子インターネットに接続された装置間で複製不可能な秘密鍵を共有する技術だ。量子には何かに触れると必ず状態が変化するという性質がある。誰かが通信を盗み聞きするために量子ビットに触れると、その量子ビットの状態が変わってしまい、不正アクセスがあったことが分かるため、情報の窃取を困難にする。
プロトコルに関しては、量子物理的な性質を利用する「量子暗号プロトコル」の研究が進んでいる。
信頼性
従来型インターネットは、パケット(伝送するデータを小分けにした単位)を確実に転送できるとは限らない。回線の混雑やハードウェアの故障など、様々な要因によりパケットロスが生じ、データ転送の障害や遅延の原因となることがある。
量子インターネットにおいても、「量子ビットロス」という、パケットロスと同様の問題が発生する可能性がある。量子ビットロスは、量子環境内の構成要素が相互作用する際にしばしば起こり、光の損失を引き起こす。量子ビットロスの防止や修正の方法はまだ完全には理解されていないが、研究は続けられている。
速度
初期理論では量子通信が光速を超える速度で可能とされていたが、進行中の研究はそれを否定している。量子ネットワークは、量子ビット間でどれだけ離れていても発生する量子もつれに基づいている。しかし、この量子もつれでは、光速を超えて情報を伝達することはできないと考えられている。
以下の表は、量子インターネットと従来型インターネットの主な違いをまとめたものだ。
■表1 量子インターネットと従来型インターネットの比較
| 特徴 | 従来型インターネット | 量子インターネット |
|---|---|---|
| データの単位 | ビット | 量子ビット |
| 仕様 | TCP/IP | 量子力学の原理 |
| セキュリティプロトコル | IPsecやTLSなど | 量子鍵配送(QKD)や量子暗号プロトコル |
| 信頼性 | 高いがパケットロスあり | 低く、誤り訂正符号が頻繁に必要 |
| 速度 | MbpsからGbps | 理論上非常に高速 |
| 実装状況 | 世界各国に普及 | 研究中 |
次回は量子インターネットと従来型インターネットがどのように連携するのかを解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握 -
製品資料
[株式会社マクニカ] 「脆弱性総まとめ」解説 被害事例から考える必須の対策ポイント -
製品資料
[Splunk Services Japan合同会社] サイバー脅威「トップ50」完全解説ガイド、新たな攻撃手法に対抗するには -
製品資料
[株式会社うるる] 「入札市場」完全ガイドブック:メリットから資格取得のポイントまで -
市場調査・トレンド
[株式会社うるる] はじめての「自治体/官公庁入札」 必要な知識がすぐに学べる入門ガイド
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
7
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
8
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
9
「IoT通信環境の構築・運用」に関するアンケート
-
10
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー