Appleが“量子時代”の暗号プロトコル「PQ3」を早くも採用したのはなぜ?Appleの“ポスト量子暗号化”技術とは【前編】

量子コンピューティングの実用化を見据えて、各種技術の進化が起きている。Appleが打ち出した暗号プロトコル「PQ3」の仕組みと、同社がなぜこの技術を採用したのかを解説する。

2024年03月28日 08時30分 公開
[Alexander CulafiTechTarget]

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 Appleは2024年2月、同社インスタントメッセンジャー「iMessage」に新しい暗号化技術として、ポスト量子暗号プロトコルの「PQ3」を採用すると発表した。PQ3は、量子力学を用いて複雑なデータ処理を実施する「量子コンピューティング」を使った攻撃からデータを保護する。量子コンピュータの実用化にはまだ至らない中で、Appleはなぜ“量子コンピュータの脅威”を想定した技術を採用したのか。

Appleはなぜポスト量子暗号プロトコル「PQ3」採用したのか

 ここ数年、量子コンピュータの進化が一段と注目を集めるようになった。今後は量子コンピュータが実用化するのに伴い、攻撃者が量子コンピュータを悪用する可能性がある。Appleによると、攻撃者は量子コンピュータを使ってさまざまな暗号プロトコルを解読し、標的のデータにアクセスできるようになる可能性がある。PQ3は暗号化したデータの安全性を守るものだと同社は説明する。後で解読することを目的に大量のデータを盗むといった手口の攻撃にも対処できるという。

 Appleによると、PQ3はさまざまな暗号化技術の中で、最も強力なレベルのセキュリティを実現する。「現状の暗号化技術は、暗号鍵自体が侵害されることが盲点だ」と同社は指摘する。暗号鍵が侵害されれば、その鍵で保護されたデータは解読されてしまう。

 PQ3では、量子コンピュータでも解読できない暗号鍵を各種Appleデバイスが生成する。これによってiMessageでやりとりされるデータの流出を防げるという。Appleによると、PQ3はセキュリティベンダーKyber Networkが開発する暗号化技術を採用している。「送信者のデバイスは受信者がオフラインになっていても暗号鍵を生成し、データを保護できる」(Apple)


 後編は、セキュリティ専門家がPQ3をどう評価しているのかを取り上げる。

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