読者の事情や背景にかかわらず、誰もがコンテンツの内容を理解できるように配慮する――。専門家が口をそろえて強調する「アクセシビリティー」(利用しやすさや分かりやすさの意味)改善のこつは。
文書(ドキュメント)やWebページなどのコンテンツの「アクセシビリティー」(利用しやすさや分かりやすさの意味)に対する配慮は、重要でありながら後回しにされがちだ。アクセシビリティー確保の近道は、その重要性を従業員に教育し、文化として社内に定着させることだ。その実現に向けて、企業はアクセシビリティー改善を業務フローに組み込む必要がある。
「アクセシビリティーの確保は、業種業態を問わず考えるべき事柄だ。企業にその文化を根付かせ、教育体制を維持することが欠かせない」。ニューヨーク州立大学パーチェス校(Purchase College, State University of New York)のアクセスカウンセラーであるスコット・メシュニック氏は、そう指摘する。
アクセシビリティー戦略は、「そもそもアクセシビリティーとは何か」という教育から始めるのが望ましい。アクセシビリティー向上に取り組むことの重要性と、アクセシビリティー確保によって万人が得られるメリットは何なのかを従業員に知ってもらうことが基本だ。本稿は、実践のヒント6つのうち、1つ目から3つ目を紹介する。
平易な言葉を使うことは、アクセシビリティーを向上させる簡単な方法の一つだ。エマーソン大学(Emerson College)のデジタルサービスマネジャー、アイリス・アメリア・オコナー氏によると、米国では成人の5人に1人が小学5年生以下の読解力を持つ。「言語はコミュニケーションの手段だ。もし言葉が意味を伝達する上での障壁になるならば、何も伝えないのと同じだ」とメシュニック氏は言う。
だからこそコンテンツ制作者は、全ての人がコンテンツを理解できるようにすることを念頭に置く必要がある。アクセシビリティー向上手段は技術的な解決策だけではない、ということだ。できるだけ多くの読者に情報を伝えたい場合は、読者の背景や状況にかかわらず、誰もが理解できる表現を選ばなければならない。
調査会社Gartnerでリサーチ&アドバイザリー部門シニアディレクターを務めるティム・ネルムズ氏によると、コンテンツ制作者は異なるフォーマットにコンテンツを変換する際、しばしば課題に直面する。DOCX、PDF、HTMLのような主要なフォーマットに変換するなら、アクセシビリティーを確保することは容易だ。だが処理に当たって適切な配慮をしないと、フォーマット変更時に障害が発生する。
文書のアクセシビリティーを維持するには、文書作成における一貫したワークフローを決める必要がある。オコナー氏は「アクセシビリティー設定を後から調整するよりも、『Microsoft Word』のように利用しやすいアプリケーションで扱えるファイルをベースにして、始めにアクセシビリティー設定を決める方が簡単だ」と強調する。「検索性という点で、文書をWebページに変換することには間違いなくメリットがある」というのが同氏の見解だ。「Webページなら検索エンジンが情報を検出しやすくなる。魅力的なキーワードを盛り込んだコンテンツなら、読者を引き付けられる」(同氏)
異なるフォーマットに文書をエクスポートする際には、アクセシビリティー設定が引き継がれるようにしなければならない。「さまざまなエクスポート方法とオプション設定を理解しておく必要がある」とメシュニック氏は説明する。
アクセシビリティーの改善に取り組む担当者にとって、画像は頭を悩ませる存在だ。特に複雑なグラフや表を含む画像は“大きな課題”だと、ネルムズ氏は説明する。
オコナー氏も「代替テキストはWebコンテンツに欠かせない要素の一つだ」と同意を示し、「画像の内容を適切に説明し、必要に応じて文脈を提供する必要がある」と説く。
例えばMicrosoft Wordには画像に代替テキストを設定する機能がある。画像が装飾的なものである場合は、画面読み上げソフトウェア「スクリーンリーダー」がその画像の代替テキストを無視するよう指定できる。
後編も引き続き、アクセシビリティー向上に役立つヒントを紹介する。
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