企業がクラウドからオンプレミスに回帰する“単なる予算オーバー”以上の理由ストレージコスト見直しの動き【第1回】

クラウドサービスの価格上昇が続く中で、企業はデータの保存先を見直し始めた。クラウドストレージを使用してきた企業の判断は、価格上昇を受けてどのように変化しているのか。

2024年04月01日 07時00分 公開
[Adam ArmstrongTechTarget]

 クラウドサービスには迅速に容量拡張ができることや、インターネットを介してどこからでもアクセスしやすいといった利点があり、企業がデータの保管先としてクラウドストレージを選択する動きは広がってきた。その一方、クラウドサービスの価格が上昇することをきっかけにして企業は改めてオンプレミスに目を向け始めており、クラウドストレージからオンプレミスのストレージにデータを移行する企業もある。クラウドサービスの価格上昇は、企業の判断にどのように影響しているのか。

企業がクラウドではなく「オンプレミス回帰」に目を向ける理由

 クラウドベンダーは、ハードウェアやソフトウェアをサービスとして提供している。こうした「as a Service」型の利用形態を採用することで、ユーザー企業は以下のようなメリットを期待できる。

  • 調達が迅速になる
  • 管理の負担が減る
  • 初期コストを抑制できる

 一方で、クラウドサービス特有の課題に注意が必要だ。例えば以下のような注意点がある。

  • ユーザー企業が決定権を持っていない要素がある
    • データの置き場所(データセンターの所在地)
    • インフラに実装するセキュリティ対策
  • ワークロード(処理するタスクや作業)の処理に影響するCPUやメモリの選択肢が限られている

 クラウドサービスのコストは上昇を続けている。米国政府が2023年11月に発表した生産者物価指数(PPI)では、データ処理やホスティング(サーバ貸し出し)関連のサービス価格は、前年比3.2%増となった。

 世界的に景気が低迷する中で、ユーザー企業はITコストに厳しい目を向けている。IT業界はそのあおりを受け、GoogleやAmazon.comといった大手ITベンダーによるレイオフ(一時解雇)が相次いでいる。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミック(世界的大流行)はサプライチェーンを乱し、その後はインフレや金利上昇が起きた。そうした中でクラウドサービスの価格が上昇し、クラウドサービスよりもコストが変動しにくいオンプレミスストレージの需要を押し上げることにつながっている。

 「クラウドサービス市場の成長が大きく減速したわけではない」と語るのは、ストレージベンダー45Drivesの共同創業者で社長のダグ・ミルバーン氏だ。クラウドサービスからオンプレミスストレージへのデータ移行には膨大なコストや労力がかかる恐れがあるため、その方法を選ぶ企業は多数派ではない。その代わりに、オンプレミスストレージとクラウドサービスを併用する利用形態「ハイブリッドクラウドストレージ」を検討する動きが広がっている。

 ミルバーン氏は、「コストと利便性のバランスに対する企業の判断力は高まりつつある」と話す。例えばクラウドサービスで保管する大量のデータへのアクセスが容易にできるとしても、データ量が多くなるほどコストは膨らむため、それではコストと利便性のバランスが取れなくなる。それほどデータ量が多くない場合、クラウドサービスの利便性はコストに見合う可能性がある。企業はこの観点を重視し始めているという。


 次回は、実際にデータをクラウドサービスからオンプレミスストレージに移行した企業の事例を紹介する。

TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス

米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬩幢ス「隴取得�ス�ク陷エ�・�ス�。鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�、鬩幢ス「隴主�讓滂ソス�ス�ス�ス鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス�ス�ス�ス

技術文書・技術解説 ドキュサイン・ジャパン株式会社

導入が進む一方で不安も、電子署名は「契約の証拠」になる?

契約業務の効率化やコストの削減といった効果が期待できることから、多くの企業で「電子署名」の導入が進んでいる。一方で、訴訟問題へと発展した際に証拠として使えるのかといった疑問を抱き、導入を踏みとどまるケースもあるようだ。

プレミアムコンテンツ アイティメディア株式会社

VMware「永久ライセンス」を継続する“非公認”の方法

半導体ベンダーBroadcomは仮想化ベンダーVMwareを買収してから、VMware製品の永久ライセンスを廃止した。その永久ライセンスを継続する非公認の方法とは。

製品資料 日本ヒューレット・パッカード合同会社

無計画なハイブリッドクラウドが招く弊害、次世代のITインフラでどう解消する?

クラウドファーストの流れが加速する中、無計画に構築されたハイブリッドクラウドの弊害が多くの企業を悩ませている。ITオペレーションの最適化を図るためには、次世代のハイブリッドクラウドへのモダン化を進めることが有効だ。

市場調査・トレンド 日本ヒューレット・パッカード合同会社

ハイブリッドクラウド環境におけるワークロードの配置を最適化する方法とは?

ワークロードを最適な環境に配置できる手法として注目され、多くの企業が採用しているハイブリッドクラウド。しかし、パフォーマンス、法令順守、コストなどが課題となり、ハイブリッドクラウド環境の最適化を難しくしている。

市場調査・トレンド 株式会社QTnet

業種別の利用状況から考察、日本企業に適したクラウドサービスの要件とは?

システム基盤をオンプレミスで運用するか、データセンターやクラウドで運用するかは、業種によって大きく異なる。調査結果を基に、活用の実態を探るとともに、最適なクラウドサービスを考察する。

鬩幢ス「隴主�蜃ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隰ィ魑エツ€鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�シ鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�ウ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�ス�ス雜」�ス�ヲ鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ソ�ス�スPR

From Informa TechTarget

お知らせ
米国TechTarget Inc.とInforma Techデジタル事業が業務提携したことが発表されました。TechTargetジャパンは従来どおり、アイティメディア(株)が運営を継続します。これからも日本企業のIT選定に役立つ情報を提供してまいります。

企業がクラウドからオンプレミスに回帰する“単なる予算オーバー”以上の理由:ストレージコスト見直しの動き【第1回】 - TechTargetジャパン クラウド 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

TechTarget鬩幢ス「�ス�ァ�ス�ス�ス�ク鬩幢ス「隴趣ス「�ス�ス�ス�」鬩幢ス「隴乗��ス�サ�ス�」�ス雜」�ス�ヲ 鬮ォ�エ�ス�ス�ス�ス�ス�ー鬯ィ�セ�ス�ケ�ス縺、ツ€鬯ョ�ォ�ス�ェ髯区サゑスソ�ス�ス�ス�ス�コ�ス�ス�ス�ス

ITmedia マーケティング新着記事

news026.png

「パーソナライゼーション」&「A/Bテスト」ツール売れ筋TOP5(2025年4月)
今週は、パーソナライゼーション製品と「A/Bテスト」ツールの国内売れ筋各TOP5を紹介し...

news130.jpg

Cookieを超える「マルチリターゲティング」 広告効果に及ぼす影響は?
Cookieレスの課題解決の鍵となる「マルチリターゲティング」を題材に、AI技術によるROI向...

news040.png

「マーケティングオートメーション」 国内売れ筋TOP10(2025年4月)
今週は、マーケティングオートメーション(MA)ツールの売れ筋TOP10を紹介します。