財務面だけでなく、セキュリティやガバナンスにもメリットをもたらすのがIT資産管理だ。クラウドサービスでの悩み解消につながる、クラウド資産管理の方法とは。
オンプレミスでは一般的に、ハードウェアやソフトウェアの数や利用状況を把握して管理する「IT資産管理」の手法が用いられている。複数のベンダーから調達したIT資産を追跡したり、棚卸ししたりするのは簡単ではない。同じことをクラウドサービスのIT資産(以下、クラウド資産)で実践するのは、なおさらややこしい作業になる。
実はこのクラウド資産の管理には、コストやセキュリティなど企業が“クラウドとオンプレミスの違い”として悩みがちなさまざまな問題が絡んでくる。クラウド資産管理のステップを実践すると、クラウドサービスの利用で何が問題として浮上するのか、どう対処すればいいのかが分かるようになる。クラウド資産管理の具体的な方法を見ていこう。
一般的なIT資産管理ツールには次のような役割がある。
クラウド資産を効率的に管理するには、従来のIT資産管理の考え方を変える必要がある。オンプレミスシステムにIT資産を保有する企業なら、一定の規模まではスプレッドシートやデータベースといったシンプルなツールを使って、IT資産管理に必要なデータをまとめることができるだろう。
だが、このアプローチをそのままクラウドサービスに適用することは難しい。クラウドサービスは状況に応じてリソースの使用量を変化させる臨機応変さが強みである一方で、一過性の支出が頻繁に発生するからだ。企業はクラウド資産を有効活用するために次の5つのステップを取る必要がある。
オンプレミスシステムでは容易である、資産へのタグ付けやインベントリ(目録)作成を目的とする検査、シリアル番号の読み取りなどはクラウドサービスでできるとは限らない。だが、クラウド資産には必ず請求書がある。クラウド資産を管理するには、まずクラウド資産の請求書を全てまとめる必要がある。
その際は管理機能といった、ホスティングに関係ない料金ホスティング要素以外の料金は除外し、ホストするアプリケーションのコンポーネントやデータベース、これらの要素に直接関連するクラウド機能の料金を残す。ここで残した料金がクラウド資産管理の基準となるため、明確なリソース名とコード、リソースの性質、リソースの発注責任部門と担当者を把握することが重要だ。
次のステップは、クラウド資産のガバナンスとセキュリティ視点でのスクリーニング(選別)だ。全クラウドサービスの機能を自社のセキュリティとガバナンスのポリシーに照らして評価し、方針に反する機能が使用されていないことを確認する。
このステップの目的はクラウドサービスをガバナンスとセキュリティのポリシーに照らして評価することだ。この段階でクラウドのコストも評価できるが、請求金額とアプリケーションとの関連付けが可能になった時点で実施することが望ましい。
次に、クラウド資産とアプリケーションを関連付ける。パフォーマンスを最適化する上では、このステップが特に重要だ。
請求書に記録されるのはクラウド資産の使用状況で、ユーザーの動向はログに記録される。アプリケーションのコンポーネントを特定のクラウド資産やコストと関連付けるには、コンテナオーケストレーションツール「Kubernetes」のようなクラウドデプロイメントツールのログとスクリプトが必要になるだろう。
このステップではリソースを特定のアプリケーションとユーザーに関連付ける。この関連付けによって、リソースの使用状況を評価でき、クラウドサービスの使用状況の監視をアプリケーションのパフォーマンス監視(APM)に関連付けできる。
これ以降のクラウド資産管理プロセスでは、アプリケーションとクラウドの関連付けによって追跡とパフォーマンスの基準値が設定される。
後編は4つ目のステップ「ライセンスと価格設定の見直し」と5つ目のステップ「複数ツールの使用」について解説する。
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